昊誓・理央 11歳

この年から理央が今も続けているバスケットボールを始めた。最初の方は練習に付き合わされたけど中々出来てなかった。運動は毎日のようにしてるからか運動神経はいいのに何故かドリブルは出来ない、シュートもあらぬ方向に行ってしまう。この年の夏祭りは理央の練習に付き合わされてから行った夏祭りになった。「もう、い、いい…だろ」「はぁ、はぁ、まあ私も…息、上がってきたから、お祭りに行こうか。」あまり運動をしてると言い難がった俺が理央の息が上がるまで練習に付き合ったらどうなるか。当然理央以上に動けなくなる。この練習は1on1形式でやったから二人とも同じくらい疲れる。この年は二人とも、もう屋台とか見る元気がなくて神社の縁側で花火だけを見て帰った。屋台を全力で楽しまなかったのはこの年だけだったからよく覚えてる。

練習をしていたバスケットボール用のゴールがある公園から縁祭りの行われてる神社までは普通の状態で歩いて五分。「あー身長欲しいー」これがバスケを始めた理央の口癖だった。理央の身長はこの時からほとんど変わらない150.8。小柄な体格。「昊誓はスポーツとかやらないの?やらないならその身長頂戴ー」俺の身長はこの一年で一気に伸びて162.5になった。「やれないよ。何かに使うかもなんだから」この言葉にはこう返すみたいな決まった言葉を言う。

どうしてもこの頃は理央の事を意識してしまっていた。だから素っ気ない返しになってしまう。去年のしこりもまだ完全になくなったわけでもなくて傍からみたら大分ぎくしゃくした関係だったと思う。

だからか一応、隣り合って座ったもののその間隔は俺と理央が二人とも腕を伸ばしあったとしても指にすら触れないぐらいの距離感。それこそ神社の縁側の横幅目一杯使うぐらいの幅。「なんで昊誓はそんなに離れてるの?」「は?そんなこと言ったら理央が近づけばいいじゃん。」「は?なんで私が、お前に近づかないと行けないの。」

「そっちが言って『ドン』…」花火の一発目が打ち上げられた。一拍おいて打ち上げ始められる。人がいないここは花火がよく見えて、気まずくなりかけた幼馴染の事を忘れ夢中になってしまう。

花火がなってる中さっきまでの言い合いの事が気になって理央の方を見ると花火の薄明りの中、花火に見とれる理央がいた。

この年の理央は夏祭りを満喫してる格好でもなければ浴衣姿でもない。けれども理央は夏祭り独特の活気や空気になじんでいた。

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