昊誓・理央 10歳

いつもは昊誓が私の家に来て一緒に夏祭りに行くことになっていた。この年も同じだと思っていた。

「昊誓君来ないね。今年は理央が誘ってみたら?」「うん。そうするー」私が昊誓の家に行った時昊誓の親はいなかった。からインターホンを押した時に出てきたのは昊誓だった。この時昊誓が何を思っていたかは分からないけどいつも以上に不機嫌だったから邪魔だなー、とか思われてたんだと思う。

それでも一緒に縁祭りに行ったのは幼馴染としての縁とか情みたいな何かがあってくれたおかげだと思ってる。

「やっぱり縁祭りは昊誓と一緒だと楽しいねー」この時は気にしてなかったけどバラバラに来たことないから何を基準にしてるんだって話とか考えてしまってる私のこの考え方は大人になってと考えていいのかな。

「お嬢ちゃん、チョコバナナとかどうだい?」「そっちの彼氏さんはキュウリとかは?」始めて昊誓の事を彼氏だとか言われてそれまで気ににしてなかったこと、昊誓が気にしていて何やってるんだろとか疑問に思ってたことを始めて実感した一言だった。チョコバナナの屋台をやってるおじちゃん、キュウリの浅漬けの屋台をやってるおばちゃんからしてみれば微笑ましい、仲良し二人組の事をからかいついでの営業だったんだろうけどこの時の私たちからすれば恥ずかしくて堪らないの事だった。

だからかは分からないけどただでさえ周りの目を気にして赤かった昊誓はもっと顔を赤くして人込みから逃げるようにどこかに行ってしまった。友達と毎日のように走り回って転げ回ってた私なら追いつけたけど私も追いかけなかった。赤い顔を隠すように俯くだけだった。

その後、昊誓は花火の時もいつも私たちが見ていた場所、神社のお賽銭箱の横に来なかった。

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