理央・昊誓 8歳

この日は私が季節外れの風邪にかかっちゃって泣きながらお祭りに行きたいと駄々をこねた年だった。

「理央ちゃん、お祭り行こ」大分流暢になってきた言葉で昊誓が私の事を呼んでいるのが自分は元気ですアピールに聞こえて悔しかったんだっけ。今思うと理不尽な話だけど。

「ごめんね。理央、なんか風邪ひいちゃったみたいだから今年は行けないのよ。」「はーい。じゃあ一人で行ってくるー。」

この時私は二階にある私の部屋に居たので二人の顔は知らない。多分申し訳なさそうなお母さんと残念そうな昊誓がいたんだろうな。

寂しくなって外を見たのは花火が始まるちょっと前だった気がする。もしかしたらかなり前でボーっとしてたのかも知れないけど。花火が始まってからの記憶しかなかった所を思い出すとかなりの熱が出てたんだなって今は思ってる。

花火が始まって何分たったぐらいだっけ。フィナーレの一番の盛り上がり前、フィナーレに続く盛り上がり始めた所で昊誓が色々抱えて急いで来るのが窓から見えて無意味に涙がこぼれそうになった事は私が墓まで持っていこうって考えてることの一つ。

その時の昊誓の顔は遠くで、しかも視界が何故かぼやけてたけどちゃんと覚えてる。全力を尽くした持久走の後よりもきつそうな顔をしてた。

その日の夜ご飯のデザートには昊誓が買って来てくれたチョコバナナが出た事も思い出に残ってる。その時のチョコバナナはいつも以上に美味しかった。

こんな思い出の積み重ねも今年で終わるって意識したら胸が痛くなってきた。まだ一緒に縁祭り行きたいなー。

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