第5話 模擬戦1

 水原先生の案内で、学園の訓練場に着いた俺たちはすぐに武器が置いてある倉庫に案内された。

 案内された倉庫には、様々な武器がある。剣や刀、槍や斧、魔法の媒体ばいたいとなる腕輪などの武器が立てかけられている。


「みんなこの中から武器を一つ選んで下さい」


 すると、一人の生徒が手を挙げた、


「武器は何でもいいんですか?」


「ええ、なんでもいいわ。持ってきた武器でもいいし、倉庫にある武器でもいいわ武器でもいいわ」


 生徒たちは、倉庫に入り武器を漁っていた。

 俺はみんなが武器を持ち去っていった後に、武器を取りに倉庫内に入ったが残っている武器は俺が使える武器では刀と短剣しか、残っていなかった。

 その中から、刀を手に持ちさやから抜き軽く素振すぶりすると、驚く程に手に馴染んだ。おそらく、【剣聖】スキルのおかげだろう。


 刀を鞘にしまい、訓練場に戻ると各々おのおのが武器の確認をしていた。

 他の人たちを見ていると水原先生がこちらに気付き、声をかけてきた。


「時崎、最後に倉庫に行ったが武器は何を……そうか、時崎は刀か。叩き斬ることを主な剣とは違い、刀は斬ることが前提ぜんていに造られているから、扱いが難しいが大丈夫なのか?」


「まあ、はい、大丈夫です。刀が一番手に馴染むので⋯⋯」


「そうか、なら頑張れよ。またね」


「はい」


 水原先生がそう言い去っていくと、俺は【剣聖】の効果を確かめる事にした。

 【剣聖】のスキルは、全てを斬ること以外にも剣系統の武器を持つと、どのように振れば良いのかが感覚的に分かる。

 確認していると、水原先生の声が聞こえた。


「みんな集まって、これから模擬戦を始めます。ルールは殺傷性の高い魔法はなしで、降参するか、有効打を与えられたら負けね。呼ばれた人から前へ来てステージに登って私の合図で試合を開始して。では、最初はそうね、……佐々木ささき君と風間かざまさんの二人、前に出て来て」


「「はい」」


 呼ばれたのは、前刈りのガタイのいい男子と、もう一人は風間蛍かざまほたると言い、未来では【風神】の二つ名を持っており、Aランクハンターで実力はSランクハンターにも勝る能力だった女子だ。

 ポニーテールで縛った黒髪に、黒の瞳の凛々しい美少女でザ・大和撫子やまとなでしこを表したような女子だ。


 二人がステージに上がり、武器を構える。佐々木という男子の方は剣のようだ。風間の武器は刀で俺と同じだ。

 佐々木の方は剣を正眼に構え、風間は刀を鞘にしまい、腰を落とし居合いあいの構えだ。居合いの構えは刀の技の中で最速と言われている。


「ははっ!居合の構えか!面白そうだ!」


 佐々木は楽しげに口を歪め風間に声をかけた。


「はい。私は居合いに自信がありますので」


 風間が真面目な顔でそう応じた次の瞬間水原先生の声が響いた。


「それでは、試合開始!」


 水原先生の合図で同時に火蓋ひぶたが切って落とされた。

 佐々木が正面に突進して行く、


「はああ!」


 ただし、風間が一瞬で佐々木へと距離を詰めた。


「ふっ!」


 刀で首を峰打みねうちし、一撃で佐々木が気を失った。

 風間はそのまま刀を鞘にしまい、ステージから降りた。

 その後、すぐに他の生徒たちの歓声に包まれた。


「凄いですね、風間さん。あなたの歳であれほどまでに技術があるなんて」


「恐れ入ります」


 水原先生の称賛に風間は控えめに応じ、礼をした。


「では、次の人」


 その後、次々と試合が行われ、最後は俺の番になった。


「では最後の試合は時崎君と佐伯君前へ」


 俺の対戦相手は、佐伯と言うようだ。

 ステージに上がると、佐伯という人がニヤニヤと笑いながらステージに上がってきた。


「君、降参したまえ」

「……はっ?」


 いきなり佐伯という人は降参しろとバカなことを言ってきた。


「ふふっ、君は僕と戦ったら只では済まないからね、怪我をする前に降参しろと言っているんだよ」

「…………。はぁ……」


 どうやら俺はこの男子にザコだと思われているらしい。


「いや、大丈夫だ。早く始めようか」

「チッ、せっかく僕が忠告してやったのに、怪我をしても知らないよ」


 佐伯は腹立ちげに舌打ちし、剣を上段に構えた。

 そして、俺は刀を正眼に構え神経を集中した。刀を構えた瞬間周りの知覚速度が上がり全てがゆっくりになった。


「それでは試合開始!」


 水原先生の合図をスタートに試合が開始した。


「くらえ!僕の剣を!【飛斬】!」


 試合開始の合図と共に佐伯がその場で、剣を何回も振った。すると、剣からいくつもの斬撃が飛んできた、佐々木のスキルは【飛斬】のスキルらしい。


 いくつもの飛んできた斬撃を、俺は目を瞑り一太刀で斬り伏せるとその斬撃は霧散した。

 そのまま佐々木との距離十メートルを一瞬で間合いを詰め、刀を無駄のない動作で縦に振るうと佐々木は剣を盾にし、俺の刀を受け止めようとした。


 ただし、俺が振るった刀の斬撃は普通の斬撃ではない剣聖の斬撃だ。生半可な人じゃ受け止めることも出来ない。俺の斬撃はそのまま佐々木の剣を断ち切りそのまま進んで行くと、すんでのところで止めた。

 佐々木は尻もちを付き泡吹いて気絶させてしまった。


「ふぅー」


 溜まっていた空気を軽く吹き出すと、集中を解いた。

 俺は焦っていた、普通に剣が斬れるとは思わなかった。しかも、剣を斬った感覚がなかった。どっちかと言うと剣というよりはバターを斬った感覚だったんだけど、強い、強すぎる、このスキルは強すぎる。

 だって身体強化使わないで、技術だけで買っちゃうんだもん。

 しかも、何となくこう動けばこうなるとか、感覚でどう動けば良いのかが分かるのだ。

 やばいね、剣聖の持っていた固有スキルはチートだ。



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