第23話 宿星の儀式 (6)
「星の大聖堂へようこそ。あなたが宿星の儀式を受ける方――エメル様ですね?」
オーロラのような薄いカーテンの向こうから、秋風のように涼やかな声が聞こえた。神官がカーテンを捲ると、純白の法衣を着た少女が銀の椅子に腰かけていた。
白皙の肌に金色の髪、翡翠色の瞳をした少女は、まるで天使のように見える。年齢はエメルとそんなに変わらないだろう。予想していたよりもはるかに年若い司祭に、エメルは驚いてしまった。
「私はミーミル。星の大聖堂の司祭を務めております。幼い子供だとさぞ驚きでしょう? ですがご安心ください。先代の司祭から知識と技術を教えられていますから」
銀の椅子から静かに下りたミーミルが、エメルの正面に立って彼女をじっと見つめた。エメルを映すミーミルの双眸は、山奥にひっそりと佇む湖のように澄みきっていて、魂の奥深くまで覗かれているような気がする。
きっとミーミルは、エメルが儀式を受けるに相応しい人物かどうか見定めようとしているのだ。やがてミーミルが微笑み、彼女は満足した様子で頷いた。
「エメル様は儀式を受ける資格を持っていますね。それでは儀式の間に行きましょう。私についてきてください」
エメルたちが次に向かったのは、何重にも巻かれた銀の鎖と、数枚の護符で厳重に封印された扉の前だ。リディルによると、あの護符に書かれている文字は、神聖魔法の結界を発動させるもので、闇の力を持つ魔物に絶大な効果を発揮するらしい。
「ここから先は私とエメル様の2人で参ります。申し訳ありませんが、騎士団の皆様はここでお待ちくださいませ」
「えっ――? 私とミーミルさんだけで行くんですか?」
アルドたちと一緒に行くと思っていただけに、エメルの胸に芽生えた不安は大きかった。エメルの不安を感じ取ったのか、アルドが側にやって来た。
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