第18話 宿星の儀式 (1)
城下町で魔物に襲われてから数週間が経ち、ついにアストライアの継承者を決める、宿星の儀式が行なわれる日になった。それまでの間エメルは、リディルに言われたとおり、一歩も城の外には出ず、1日の大半を結界で守られた部屋の中で過ごしていた。
だけれどエメルはちっとも退屈ではなかった。オライオンとセイリオス、ウルピナにリディルが訪ねてきて、本を貸してくれたり、騎士団の武勇伝や魔物退治など、いろいろな話をしてくれて、エメルを楽しませてくれたのだ。レオミノールが訪ねてきたときはとても驚いたけれど。
でも――エメルがいちばん会いたかったアルドは、一度も姿を見せなかった。ある日セイリオスに訊いてみると、アルドの右腕の傷は予想以上に深く、さらに毒にも侵されていたので、治療が長引いているらしい。そして宿星の儀式の日まで、安静にしなければいけないのだ。
――早くアルドに会いたい。会って元気な姿を確かめて、ごめんなさいと謝りたい。日ごとに増していく、アルドに会いたい気持ちを抑えて、エメルは辛抱強く儀式の日がくるのを待ち続ける。そして太陽と月が何回か昇って沈んだあと、待ち望んでいた儀式の日がやってきた。
「とてもお似合いですよ、エメル」
「そっ……そうですか?」
レオミノールに与えられた、騎士団の儀礼用の服に着替えたエメルを見て、ウルピナが感嘆の声を上げた。鏡で見てみたらどうかと言われたので、エメルは恐る恐る鏡の前に立ってみる。鏡面に映ったのは、いつもとは違う雰囲気の自分だった。
星のように青みがかった光沢を放つ銀色の儀礼服は、胸元と裾が繊細なレースで飾られていて、ムーンストーンのブローチが神秘的な輝きを放っている。まるで一国の姫君のようなこの服は、レオミノールがエメルのために、仕立屋に頼んでわざわざ作らせた一着なのだ。
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