第十三話 スパコン

「……すげぇ」

「……すごい」

「……うわわ」


 中に入ると早速、非日常的な光景が広がっていた。壁際の大きいモニターが一番目立っている。それはには、英語とか数字の羅列が並んでいて、ずっと見てたらめまいを起こしそうだ。


「ここは主に情報の整理とハッキングを行っている。 私たちの部隊室はこの奥だ」


 今いるところも薄暗いけど、そのはじにあるドアはさらに暗い。お化け屋敷の中ぐらいだ。

 冬美も少し恐怖心が芽生えてきたのか、俺の手を握ってきた。


「やっと秘密の部屋に行けるっ!」


 あんず、未だにハイテンション。これ絶対、頭のネジ何本か抜けてるよ。


「あの」

「なんだ」

「結構すんなり入れてますけどセキュリティとか大丈夫なんですか?」

「問題ない。 貴様らには見えてないだろうが、何百種類のスキャンを通り抜けている」

「そ、そうですか」


 すげぇ。さすが特殊機関の建物だ。泥棒とか入ったら一瞬で蜂の巣にされそうだな。

 このドアもスキャンされてるなんて感じさせないほど無造作に開けられる。


「!ス、ス、ス、ス、スパコンだぁ!」

「ここは電脳世界NO,2の第二サーバーだ」

「そうなんですか。 って、お兄ちゃん?」


 ヤベェヤベェ、ついフリーズしてしまった。興奮しすぎてる。

 スパコンでけぇ。ここまで大きいと、配置場所とか、配線の位置とかで、レスポンスにかなり違いが出ると思うんだけど、その辺大丈夫なのかな?


「ここから先は我々の本室だ。 明日から頻繁に使うと思うから記憶しろ」


 本室までは恐らく最後のドアが開けられた。中はほかの空間と同じようにシンプルだが、テレビ四個ぐらいの大きさのモニターによく分からないグラフが表示され、はじにプログラム言語がめまぐるしく下にスクロールしていく。


「これ、全部」

「電脳世界のデータだ。 プログラムとかの情報を主にここで管理している」

「スパコンのフロップスは?」

「十ゼダフロップスだ」

「十ゼダ!?」


 な、なんだって!?そんな数字と単位、聞いたことない。今の最新でも十五ペタだぞ?

 まさか、最新型?いや、世界で最も速い処理能力を持ってる?


「導入から何年くらい……」

「確か、今の第二から切り替わってから三年くらい……だろう」


 さ、三年!?三年前は十三ペタすらいってなかったぞ!?つまりこれは、秘密のスパコン?

 凄すぎる。あ、なんか気が遠くなってきた。


「さっき電脳世界NO,2と言ってましたけど、

NO,1もあるんですか?」

「あぁ。 一応言っておくが、車の中からの会話は全て、極秘だからな」


 言ったら即処刑とか言ってからな。気をつけないと。

 冬美も同じことを思ったのか、つないだままの手をより強くしてきた。


「冬美、大丈夫?」

「うん。 なんか、緊張して」

「無理するなよ」

「うん、分かった……ありがと」


 少し険しかった冬美の表情が少し和らいだ。

 あとで話聞いたほうが良さそうだな。こんなに長く緊張しているのは、少し変だし。冬美は俺よりも環境適応能力が高いからすぐ慣れるはずなのに。

 心配だな。


「電脳世界は主に人間世界と異世界に分かれている」

「片方は現実世界の続きをしたい人が、もう片方は全く別の体験をしたい人が行くんですね」

「そういうことだ」


 選択肢が二つもあるとは思わなかった。


「一つ、質問いいですか?」

「なんだ」


 冬美は胸に手を当てて深く深呼吸する。そして、桜子を真っ直ぐに見つめ、


「中の人に会うことはできますか?」

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