第九話 マイクロチップ
え?どゆこと?
現実が破壊されるって、それとってもやばいんじゃ。
あまりのも大きく、かつ謎めいたことを言われたことで、俺たちは混乱し、微動だにできない。
「少し大きく言い過ぎたな。 つまり、特殊部隊隊員と言うことだ」
特殊部隊隊員?
「2055年に運用が始まってこの十年、一度も問題が起きたなんて話、聞いたことないだろう?」
「はい」
「しかし、問題は幾度も起きた。 そんな情報をマスコミになんかにしれたら……わかるだろ?」
あー、とんでもないことになりますね。絶対制度廃止デモとか起こるだろうし、そんなことになったら日本中大パニックになってしまうことが、安易に想像できるな。
「電脳世界の機密保持、事件解決をすべて、この電脳部隊が受け持っている」
「一つだけですか?」
「いや、厳密に言うと、三つある。 貴様らが入ったら私の元で電脳世界内に入り、事件の調査罪人の永久追放をしてもらう」
「永久追放って、なんですか?」
さっきから冬美、どしどし質問していくなぁ。もしかして、スカウトに乗り気なのかな?
「それを聞くには入ってもらうしかない。 ちなみに給料は、月五十万だ」
ご、ごごごごご五十万!?ま、まだ高校生なのにっ!?
「冬美、お前の両親には承諾を得ている。 あとはお前の判断だ」
「え?」
「学校生活にも支障を来さないことを約束しよう。 どうだ、やってみないか?」
うぅ、こんなにいい話これから先無いよな。でも……
「やっぱり、お断りします」
なんか、やらない方がいいような気がする。父さんも母さんも、生きてたらきっと、やめときなさいって言っただろう。
「そうか。 なら一つ、昔話をしよう。 部隊が作られる原因となった、九年前の話をな」
ーーー九年前、か。
ちょうど父さんと母さん、そして姉さんが死んだ……いや、殺された年。九年前となると、どうしてもそのことを思い出してしまう。
「その年、とある事件が起きた。 脳内マイクロチップから個人情報を割り出し、家を襲撃した。 お前の家族を、だ」
嘘だろ?脳内マイクロチップは何の関係もなかったと言っていたはず。
いや、隠蔽していた?でも犯人はもう捕まっているし、裁判の時はそんなこと言ってなかった。
俺をじっと見つめる桜子の瞳は、まるでそこに、深い闇があるようで、吸い込まれるような感覚が俺を襲う。
「真犯人は別だ。 そいつの足取りは我々しかつかんでいない」
「っ!」
犯人は別?足取りは我々しかつかんでいない?なら、今まで俺たちは……
桜子の瞳に吸い込まれるように、俺はどんどん冷静さを失い始めていた。
三人を殺した犯人が憎い。今までのうのうと逃げ続けていたことが許せない。
いっそ、殺したくなるほどに。
「私のスカウトを受け入れろ。 そして、一緒に」
あのときに見た暗い押し入れの中、ツンと漂っていた鉄の匂い、そして……脳裏に張り付いて離れないほど濃い、鮮やかな赤。
あの夜の記憶が、蘇る。
「復讐、しないか?」
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