第七話 冬美の力
「……はい?」
今なんて言った?え?SATにスカウト?あのSAT?ていうか、電脳捜査班ってなに?
「混乱するのも無理はない。 私も最初は
何を馬鹿なことと思った。 しかし、調
査してみて分かった。 貴様ら三人には
素質がある」
「三人って、冬美とあんずもですか」
「そうだ。 とりあえず全員交えて話をし
たいから、中に入らせろ」
「え、あ、え~と」
すげえ圧。全然スカウトしてくる人には見えない。どちらかというと、鬼軍曹と言ったところか。
「どしたのお兄ちゃん」
とことこ歩み寄ってくるあんず。
ナイスタイミング!俺はすぐさまことの顛末を説明する。
「うんうん。SATっていうのはよく分かん
ないけど、でもまぁいいんじゃない?」
「でも、冬美の作ってくれた」
「あぁ。 冬美さん、四人目の分の皿に分
けてたよ。なんとなく事情を察したんじ
ゃない?」
「マジかよ」
来客人が家に上がってくるつうとこまで予想している冬美、すげぇ。マジリスペクト。
俺はあんずの話を聞いて少し考えた後、来客人を家に上げることにした。
「おはようございます。 朝早くからご苦
労さまです。 お食事はもう済みました
か?」
「いえ、まだ」
「そうですか。 もしよかったらご一緒に
食べませんか? ちょうどできたところ
ですし、食材もあまりそうなので」
「そうか。 ありがたく頂戴する」
本当に食事をご一緒することになるとは思いもしなかった。
そんなに話が長くなるのだろうか。それとも冬美の優しさを断ることが出来なかったのか。
「「「いただきます!」」」
「いただきます」
俺たちは、特に相談することなく、来客人が食べ始めるのを待つ。一口分はしでとり、口に入れる来客人。反応は……
「……っ!何なんだこの料理はっ!」
そう、叫んだ。その声があまりに大きく、かつ褒め言葉は一つも無かったので、冬美は涙目になりかけている。
しかし、その言葉とは裏腹に、来客人は猛スピードで口に運んだ。
何なんだ?この人は。
「ふぅ」
ものの一分で食べきったその人は、深くため息をついた。
「あの、どうでしたか?」
不安そうに聞く冬美。俺は生唾があふれるのを感じつつ、言葉を待っていると、
「お前、いや高岡冬美、私の専属シェフに
ならないか?」
「はぇ?」
「冗談だ。 まぁ、それほどおいしかっ
た」
いや~、一瞬びびったぁ。もう俺の家に来られなくなるのかとヒヤヒヤしたぜ。
「私ばっかり食べてすまなかった。 貴様
らも早く食べて、話をしよう」
心遣いありがとうございます!と、心の中でお礼を言う。
ところで、そろそろ『貴様』って呼ぶの、やめてもらっていいですかね。どうですかね。なんか頭にチクチク響くんですよね。かなり不快感。
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