第三話 恋の先生(動画)


 食事を終え、あんずは自分の部屋、俺と冬美はリビングでそれぞれくつろいでいた。


 「ねぇ綾人くん」

 「ん?どうした?」


 あんずは今、一心不乱に動画を見ているのだろう。この前、恋の○生が見てる動画全部見る!と、宣言してたから、それを遂行しているんだろうな。来年は受験生だし、今のうちにやっとけといったのは俺なので、放っておいても大丈夫だろう。……大丈夫、かな?


 「ちょっと綾人くん? どしたの? 急に

  ぼーとして」

 「あぁごめん。 どうした?」

 「今日出かけようか?」

 「いいよ。 それで、どこに?」

 「それはそのときに」


 そう、いたずらっぽい笑顔を作る冬美。

 俺の中で恋の毒が回ったときも、そんな顔してたよなぁ~。って何考えてんだ俺。いや、別にいいのか。

 そういえば俺が小学校の卒業式に告白してから5年がたつ間に冬美、めっちゃきれいになったよな。


 『あ~あ、私が綾人くんと同じ年だったら

  よかったのに』

 『ほんとにな。 冬美が一つ年齢が上だっ

  たらな』


 そんな会話を、何度したことか。


 「そういえばあんずちゃん、部屋でなにし

  てるの?」

 「さぁ。 なんか恋の先○が見てる動画全

  部見るとか言ってたから」

 「え!? ○の先生!?」


 ものすごく驚いている冬美。

 え?なに?そんな驚くこと?


 「恋○先生って、なに?」

 「しらないの!? 2021年に配信スター

  トした、今話題沸騰中のすごい

  YouTu○erだよ?私も4年前からみてて

  新しい配信があったらすぐチェックして

  るもん!」

 「そ、そうなんだ」

 「恋の話はもちろん。リスナーと一体型だ

  から親近感もあるし、何より優しく相談

  に乗ってくれるし!」

 「へ、へぇ~」

 「あんずちゃんも仲間だったか~。 よ

  し!私、あんずちゃんの部屋に行ってく

  る!」


 そう言って冬美は、チーターのようにすばやく二階にあがってしまった。

 なんか、寂しい。

 ん?ちょっとまてよ?もしかして、恋○先生とやらに冬美が俺のこと相談したことがあるんじゃないか?よしっ!いますぐコメント欄調べてみよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る