第二話 じゃれ合い

 「あ、おはようあんずちゃんーーうわ

  っ!」

 「冬美さーん!」


 と、冬美に思いっきり抱きつくあんず。これ絶対幼児退行してるだろ。でもまぁ、抱きつくあんずも、それをあやす冬美、どっちもかわいいな。……まぁ、冬美が一番だけど。


 「何見てるのお兄ちゃん。 まさか変なこ

  と、考えたりしてないよね?」

 「あぁもちろん。 おい睨むなって」

 「別に私は綾人くんに何かされても……」

 「冬美さん、なんていったんですか?」

 「う、ううんっ、なんでもないっ!」


 何でだろう?冬美の顔がかすかに赤い。熱があるのかな?

 右手を冬美の額にそっと当てる。ーー特に異常はなさそうだ。


 「ひゃ!」


 変な声だしてますます赤くなってるんだけど、俺、なんかおかしかったかな?

 あんずもじっと何かを探るように見てくるし。


 「ど、どどどどどうしたの!?」

 「どうしたのって……顔赤いから熱がある

  のかなって思って」

 「ふぇ?」

 「はぁ、お兄ちゃんは乙女心分かってない

  な~」

 「?」


 冬美はぽかんとしている。いや、どう考えたって熱計ろうとしている以外に考えられないだろ。今の動作。

 あんずも、乙女心って、そんな状況じゃないだろ。


 「と、とととりあえずご飯にしましょ

  う!」

 「おぉそうだな」

 「やったー!楽しみー!」


 さっきまでのおかしい空気は一気に無くなり、いつも通り食卓の準備に取りかかる。冬美の頬はわずかに色づいたままだが。


 俺の隣は冬美、向かいはあんずという位置で、ほかほかできたてのご飯を頬張る。


 「よくこんなきれいにおいしく作れるよな

  ぁ~」

 「ほんと。栄養バランスもしっかりしてい

  るし、どうやったらそんなにできるんだ

  ろ?」

 「ちょっとやめてよ2人とも!恥ずかしい

  から……」


 照れてる冬美、めっっっっちゃかわいい。写真に撮って額縁に飾りたいくらい。


 「うわぁ……お兄ちゃん、ひどい顔」


 俺、そんな変な顔してるかな?

 ペタペタと触ってみるけどよく分からない。でも、締まりの無い顔はしてたかも。


 「冬美、俺そんな変?」

 「いや全然。 いつも通りの私の好きな綾

  人くんだよ?」

 「っ!」


 うわぁ、ものすごく恥ずかしいんだけど!?ヤバイ顔熱い。心臓バクバクいってる。どうしよう?

 俺がうろたえたところで、あんずが、ぱんぱんと2回、手を鳴らした。


 「はいお二人さん。イチャイチャモードは

  控えめに」

 「別に俺は!」

 「俺は?何?そんなに表情緩めちゃって、

  どうせ頭ん中ピンクなんでしょ?いやら

  しい」

 「うっ!」


 あんず、今日はなぜか辛口だな。いやな夢でも見たのかな。でも、あんなに幸せそうだったしそれはないか。う~ん、正直モードのあんず、苦手なんだよな。静かに怒る冬美と同じくらい。

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