洋画。暗い地下室の中で

 私は映画館でサスペンス洋画を見ていた。


 舞台はヨーロッパのどこか。祖父と少年(主人公)は煉瓦造りのアパートで二人暮らしをしていた。ある日二人はアパートを出て地下通路へ向かう。地下通路はライトがないと何も見えないほど暗く入り組んでいた。しばらく歩くと広い空間に出て、そこには主人公の親族たちが集まっていた。

 戦争時代にシェルターとして作られた場所らしいが、そこら中にがらくたや粗大ゴミのようなものが落ちていてとても綺麗な場所とは言えない。けれど親族以外誰もここを知る者がいないので、秘密の話をするにはもってこいの場所だった。


登場人物

・少年(主人公):数年前に妹が死んで以来内向的な性格になっている。事故だと聞いているが、妹の死体にあった謎の額の傷がずっと気がかり。

・祖父:基本的に穏やかな性格だが、親族のことは好きではない。共に暮らしている少年がいればそれで良い。

・気さくなおじさん、柄の悪いおじさん、少し派手な見た目のお姉さん、その他何人か。子供連れの家族もいた。


 親族たちは遺産相続争いで集まったようで、部屋の中はピリピリとした空気が立ち込めている。シェルター内は汚かったが、テレビやシャワーなど生活に必要なものはある程度揃っていた。つまらない話に飽きた子供たちはシェルター内の部屋を探検しに行ったが、少年は一人でテレビを眺めていた。

 親族のうちの一人が、自分の子供の姿が見当たらないと気づく。親族の皆で探し回ると、無惨な姿で死んだ子供が見つかった。

 誰が殺したのかと犯人捜しが始まる。財産争いの苛立ちも相まって、女はヒステリーになり、男は怒声を上げる。その内、犯人は親族の中の一人だとわかった。昔から柄の悪いことで皆から避けられている男だった。

 その時たまたま祖父は席を外していたのだが、少年は自分の妹がその男に殺されたのだと知る。少年は驚くが、親族の皆はそれを知っていたようだった。祖父でさえもそのことを知っていた。知っていて揉み消した。知らなかったのは少年だけだった。

 祖父は少年にショックを与えない為にわざと事故だと知らせていたがそんなことなどつゆ知らず、少年は「世間体の為に妹の死を捏造されたのだ」とモヤモヤした思いを抱えるようになる。

 親族たちに罵られ、柄の悪い男は猟銃を取り出し親族の一人を撃つ。場は騒然となり、皆が男を取り押さえようとする。

 一人、また一人と死んでいく。薄汚れたコンクリートのシェルターがどんどん汚れていく。

 乱闘の末、どうにか男を取り押さえることができた。シェルターに残ったのは祖父と少年と、他数人の親族だけだった。

 緊張の糸が切れ、さてこの男をどうしようか、という話に移る。とりあえず粗大ゴミの一つに括り付けて動けなくしよう、と思いゴミ山を漁っていると、長い鉄のポールのようなものを見つける。邪魔なので一旦どけようとして、ガツンと地面にぶつけたとき、ポールの先端が赤く光った。

 馬鹿野郎、早くそれから離れろ。誰かが叫んだ。それは不発弾だ、と叫んだ瞬間、目もくらむような光と爆音がシェルター内を襲った。

 祖父は別の部屋にいた。少年は嫌な予感がして、すぐ壁の裏に隠れることが出来た。それ以外の親族は爆発の餌食となった。

 赤く光ったポール(不発弾)は一本だけだったはずのに、立て続けに爆音が聞こえる。ここは戦争時代からあるシェルターだ。だからそういったものが処分されることもなくずっと残っていたのだ。不発弾はいくつも転がっていて、一つが爆発すると次々に引火した。部屋の中はロケット花火をめちゃくちゃに飛ばしたみたいな有様だった。

 (この辺りは描写がエグそうだったので思わず目を逸らした。悲鳴やら人体が損壊する音やら聞こえた)最初の爆発を逃れた親族も、飛んできた不発弾にやられてしまったようだ。静かになって、少年が恐る恐る部屋の中を覗くと、数分前まで口汚く罵り合っていた親族たちは皆物言わぬ肉片と化していた。

「……帰ろうか」

 騒ぎが収まったのに気づいたのか、祖父が現れる。ここは親族たちしか知らない場所。少年と祖父が口外しない限り、ここの死体は誰にも気づかれることはない。

 冒頭とは逆の道を通って、少年と祖父はアパートへと帰る。結果としてこれで良かったのだろう、と祖父は思う。元通り少年との二人暮らし。煩わしい親族は皆死んだ。唯一気を許した少年さえいれば……。

 地下へと向かう階段を降りようとして、ふと祖父は先を歩いていた少年を止め、自分が先に階段を降りた。親族たちはまるで呪われでもしたかのようにバタバタと死んだ。もし少年が階段を踏み外して死んだりでもしたら、と急に不安になったのだ。

 しかしそんな祖父の心配もただの杞憂で、二人は無事アパートへと辿り着く。その時だった。

 口をつぐんでいた少年が懐から長いものを取り出し、祖父の頭に突きつけた。猟銃だった。

「僕の妹の額の傷、ずっと気がかりだったんだ。あれはやっぱり事故じゃなくて殺されたからだったんだね」

「……何を」

「僕の妹を殺したやつと僕は同じ血が流れてる。お前もそうだ。そしてお前はそれをずっと黙っていたんだ!」

 少年は引き金を引いた。祖父の頭の中身が玄関の扉に散った。

 狂ったように笑う少年と、騒ぎを聞きつけ集まってくるアパートの住人。その映像がどんどん遠くなり、移動して、地下通路の闇に映像が移ったところでスタッフロールが流れる。


 そんなラストだった。タイトル思い出したくないくらいにすっげー気分が悪くなったところで目が覚めた。タイトルは今でも思い出せない。終始薄暗い感じの映像だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る