先生

 小学生の私が新しいクラスに入ったら、担任の先生の何かが癪に障ってしまったのか、私に対してだけ暴言や恫喝、虐めまがいの行為をするようになっていた。ふと自分の机を見るとチョークで「16:00~0:00に教室に来るように」と乱暴な字で書かれていた。どうせ意味もなく教室に残されるだけだろうと察した私は、状況証拠として記録に残すためにスマホでその写真を撮った。ちょうどその時担任の先生がやってきて、物凄い形相で私を見ながら「何をやっているんだ、お前?」と怒気を帯びた声で言った。

 私は全力で教室を駆けだした。後ろから先生が怒鳴りながら追いかけてくる。助けて、と私は泣き叫んで廊下を走っていると、校長先生にぶつかった。私はすぐさまさっき撮った写真を見せて、先生に虐められていると説明しようとした。だけど何故かフォルダに入っているのはさっき撮ったのとは全然違う不気味な写真ばかりだった。

 真っ暗な背景の中に担任の先生とその彼女と思しき女性が裸で写っている。二人が絡み合っている写真があるかと思えば、女性が裸のまま死んでいる写真もあった。女性の死体に無数の黒い虫が群がっている写真もあって、顔が覆われて見えなくなってしまうほどだった。

 緑がかった灰色の肌。画面いっぱいに映る腐乱した死体の色。スクロールしてもスクロールしても私が今まで撮ってきた写真はなく、4×4の小さな画面一つ一つが全て不気味な写真に代わっていた。どうやら担任の先生は、彼女を殺してしまっていたらしい。暗がりの中でフラッシュを焚いたかのように背景の色に対して死体は妙に明るくて、虚のようにぽっかりと開いた口や皮膚の陰影がはっきりと写っている。

 こんな写真撮った覚えないのに。あまりに気持ちが悪くて目を背けたくなった。私が見せようとしていた写真とは全然違ったけど校長先生はただならぬ事態だと察してくれて、私を逃がしてくれた。昇降口まで走って、別のクラスの先生が白いワゴンに乗せてくれた。そうして私は逃げることができて、そこで目が覚めた。

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