第343話:再召喚

1.



 四天王の魔石の用途だが、とりあえず俺とルルに使用することになった。

 綾乃も最大の候補者ではあるのだが幻想ファンタジアの力が必要になった時で良いだろう、という結論に達したのだ。


 戦力の底上げという意味では俺かルルが2つ使ったりしても良いわけだしな。

 

 で。

 まずはルルの<気力還元エナジーコントロール>だが、スキルが進化したことによってより戦闘向きなものになった。


 というのも――


「とりあえず一発、軽く殴ってくれ」

「ニャ」


 パシン、とルルの拳が俺の掌に当たって小気味良い音を立てる。

 同時に気力も吸われるが、接触は一瞬なので微々たるものだ。


「次はもう少し強く」

「ニャ!」


 バシンッ、とかなり強い拳を掌で受け止める。

 軽自動車くらいなら軽く吹っ飛んでいた威力だ。


 で……


「……やっぱり接触時のインパクトが強ければ強いほど、吸える量が増えてるな」


 そしてこれは逆のパターンでも同じ。

 つまり、ルルが攻撃する時だけではなく攻撃された時も、相手の攻撃が強いほどに吸える量が増えるわけだ。


 軽く調べてみたところ当たりどころにも左右される。

 わかりやすく言えば、ダメージと吸収量が比例するようになった。


 更に……


「お、来た来た。本当に離れていても還元できるようになったんだな」


 吸われた気力が戻ってくる。

 これはルルのスキルによるものだ。


 吸う時は触れる必要があるのには変わりないが、誰かに分け与える時は触れる必要がなくなった。

 ルルが戦っているだけで周りにいる俺たちも継続的な回復がかかっているようなものだということになる。


 四天王の魔石ほどの大きなものでレベルアップしたといういこともあって、一気に2つのスキルツリーが解放されたようなイメージだな。


 そして俺の召喚術サモンについてだが……



「何か変わったことある?」

「ねえんだなこれが……」


 知佳の確認に俺は首を横に振る。

 

 相変わらず異世界間での転移召喚はできないし、念話も同じく繋がらない。

 謎である。


 思考共有やフルリンクについても後で調べるつもりだが、恐らくこれらも変わりないんだろうな。

 そんな気がする。


「となると、やはり新しい精霊を召喚した時に効果を発揮するのでしょうか?」


 フレアはそう言うが、それはつまるところ召喚できる対象がいる場合でしか役に立たないということになる。

 転移召喚の時にその何かしらの効果が発揮してくれるのなら楽なのだが、そう簡単にはいかないのが現実のようだ。


「あるいは転移召喚とは別に何か召喚方法が加わってたりなあ」


 何気なくスノウを見て、初めて召喚した時のことを思い出しながら「サモン」と呟いてみた。

 するとその姿が一瞬ぱっと消えて、姿再び現れた。


 スノウ本人も、俺も、周りもきょとんとしている。

 傍から見ると、スノウが一瞬姿を消した隙に早着替えして戻ってきたようなものだ。


「……え?」


 そして違和感に気付く。

 が切れているのだ。


 召喚直後の、仮契約状態に戻っている。

 

「えっ……えっ?」


 スノウにとっても当然それは想定外だったようで、自分の体を確認して頭にはてなを浮かべまくっている。

 一体何が起きているんだ。


「ど、どういうことよこれ。なんであんたとの契約が切れてるの?」

「いや、俺に聞かれてもなんとも……」


 何がなにやら。

 

「とりあえず急いで再契約して。すぐに」


 冷静な知佳にそう言われ、俺たちは戸惑いつつも別室へ移ったのだった。



2.



 1時間後。

 幾つかの事実を確認した俺たちはちょっと気まずい思いをしながらリビングへ戻ってきた。


「思ったより早かったね」

「うぐ……」

 

 知佳に冷たい目で言われ、ダメージを受ける。

 

 本契約の手順、みんなは覚えているだろうか。

 丹田の辺りに魔力で直接素肌に契約魔法陣を描くことが条件だったのだが、今回の再契約にはそれに加えて肉体的に繋がることも条件に加わっていた。


 何故それがわかったかって?

 本契約には元々ある程度の快感が伴う。

 俺は悪くない。

 スノウがあまりにもあんまりだったので我慢できなかっただけだ。

 やっぱり俺が悪いかもしれない。


 しかし、魔法陣を描いた段階では不十分だったというのも互いに理解していて――

 更に肉体的に繋がることで解決するのではないか、というのもやはり互いになんとなく理解していたのだ。

 不思議なことに。

 

 そのことを伝えると、話を聞いていたローラが首を傾げる。


「つまり、さっきのは本契約コントラクトをし直しただけの二度手間ってこと?」

「いや……」


 スノウが少し離れたところから俺の方を向く。

 そして――


 パッと目の前の光景が切り替わる。

 転移したのだ。

 とは言っても、ほんの数メートルの移動。

 

「転移石……ではないよな?」


 未菜さんが確認してくるのに、俺は頷く。

 

「今のは転移召喚です。逆転移召喚とでも言うのが正しいのかもしれませんが」

「つまりスノウがマスターを召喚した……ということですか?」

「しかもこの転移召喚、視界の中ならどこでも召喚できるから戦闘中にも使えるわよ」

「それは俺も同じだったんだけどな……」


 逆転移召喚が使えると気付いた時、すぐにスノウは戦闘に転用することを思いついていた。

 ここらはもうセンスの差なんだろうな。

 

「つまり再召喚Re.サモンをすることでユーマと皆の絆が強くなってできることが増えるってことだね?」

「そういうことになるな」

「つまり、悠真は今から全員とエッチしなきゃいけないってことニャ」

「……そういうことになるな」


 四姉妹、シエル、レイさん。

 全員を再召喚する必要があるし、恐らくは全員再契約する必要もあるだろう。


「……現行の契約者以外にも適用されるのか、試すべき」


 知佳が静かな声で呟いた。

 

「サンプルはたくさんいるし」

「こ、この時間のない時に……?」

「時間がないからこそベストは尽くすべき」


 さいですか。



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作者です。

本日コミカライズ版更新日です。

最新話は……ついに……正妻戦争最強と言われているダウナーロリなあの子が……!!

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