第162話:魔力契約

1.


 

 俺、ガルゴさん。

 そして精霊四人を集めた部屋で、全員が重苦しい表情を浮かべていた。


「魔力が回復しない病……ねえ。少なくともあたしは聞いたことないわ」


 スノウが首を横に振る。

 フレア、ウェンディ、シトリーの三人も心当たりはないようだった。

 

「……オレもシエル以外でこのような病を見たことはない」


 ガルゴさんは言う。

 それだけ珍しいものだということだろう。

 

「綾乃のスキルなら治るか……?」


 綾乃の<幻想ファンタジア>は魔法を作り出すこともできるスキルだ。

 現に母さんの石化を解いた魔法を作り、それを俺が習得しているという形になる。

 魔力が回復しない、という症状はシンプルなのでなんとかなりそうな気もする。

 しかしそれはシトリーが否定した。


「……難しいと思うわ。シエルさんは数千年も生きているエルフなのよね? お姉さんたちよりずっと魔法の知識もあるはずだから、魔法で治せるようなものなら自力で治してると思うの」

「……それもそうか」


 親父は母さんの石化をシエルさんに解いてもらうつもりだったと言っていた。

 つまり彼女はシトリーやウェンディでも知らないような魔法を使えるということになる。

 それならばやはり自分の病を自分で治そうとしたこともあったはずだ。


 一応、綾乃に話を通して試す価値はあるだろうが、難しいのには変わりないだろうな……


「……エリクシードならどうだろう」


 怪我や……場合によっては病気まで治してしまうあの果実なら。


 液体状にしてチューブか何かで口から直接体内に送り込んだりすることは不可能ではないだろう。多分。

 フレアが心配そうに俺に訊ねてくる。

 

「……お兄さま、あれは意識のない人にも効果が出るものなのでしょうか?」

「あ……」


 そうか。

 (恐らく程度に限界があるが)その人にとっての理想の状態にコンディションを整える、というような効果なのだ。

 そもそも意識がない人には効き目がない可能性もある。

 まあそれ自体が現状では憶測ではあるのだが、果たして……


 病院へ連れていけば栄養失調で死んでしまうということはないだろうが、その為にはエルフという存在について――つまりは異世界という存在について最低でもその医者には納得してもらう必要がある。

 

 そしてその情報を完璧に隠すくらいの勢いでないと、また別の面倒が生まれるだろう。

 もちろん、そんなものは金で解決すればいい。


 シエルさんは親父の恩人だ。

 金に糸目を付ける気はない。


 しかしそもそもこちらの世界の医療が彼女の体に合うかどうかも未知数なのだ。

 それにもしそれが滞りなくできたとしても延命にしかならず、やはり根本的な解決にはならない。


「確実かつ手っ取り早い方法ならありますが」


 考え込む俺達にウェンディがそう宣言した。


「確実で手っ取り早い方法?」

「はい。まず間違いなく成功します。単純な話、魔力があれば問題ないのでしょう。ならマスターがシエルさんに魔力を分け与えれば良いのです」


 あ――。

 そっか。

 そんな単純な方法で良かったのか。

 しかし――


「ユウマの女、それは悪手だ」


 とガルゴさんは言った。

 ていうかユウマの女て。

 カズマの息子呼ばわりだったりユウマの女呼ばわりだったり、知り合いとの関係性で他人を呼ぶのが彼の癖なのだろうか。

 わかりやすいと言えばわかりやすいのだが。


「シエルの意識を戻す為に必要な魔力は膨大かつ、永続的に行う必要がある。意識を戻すだけならば十分に足りるとは思うが、定期的に魔力の補給を行うのは……ユウマの人生を縛ることになる」

「いいえ、ガルゴさん。魔力の補給を行うのは一度か、多くても二度までです。そこから先は――」


 ウェンディは人差し指で空中に何かの模様を描いた。

 ガルゴさんはそれがなんなのかわからなかったようだが、俺は一発でわかった。

 

 あれは俺が以前、ウェンディの下腹部に描いたものだ。

 つまり、精霊との本契約の際に描いた魔法陣。


「……確かにその方法なら、短く見積もっても俺が生きてる間は平気かもしれない。けどシエルさんは精霊じゃないだろ?」

「エルフは森の妖精と呼ばれています。人間同士で契約を結ぶのは不可能ですが、妖精ならば精霊に近しい生物とも言えるでしょう」

「言えるでしょうて……」


 そんな曖昧な基準で……

 ……どうにかなるかもしれないのか。

 魔法はしょせんイメージの世界だ。


 人間との契約は不可能。

 だがシエルさんは厳密には人間ではなく、今ウェンディの言った通り森の妖精だ。


 そもそも俺達の会社の名前は精霊迷宮事務所ではなく、妖精迷宮事務所。

 そういう点でもほとんど同一の存在だというイメージの確立は既に済んでいるのだ。


 あれ……まさか本当にいけるのか?


「とりあえず一旦魔力を注入してみて、それで目を覚ましてもらってからご本人に決めて貰えば良いのではないでしょうか」

「とは言っても、魔力を注入って……」


 少なくとも、精霊たち――スノウたちと同列に扱うというのならば方法はアレだろう。


「少量ならば皮膚越しに受け渡すことは可能かと思いますが、彼女ほどの魔法使いになれば少しばかりでは回復しないでしょう。効率と確実性を両立するのならば、粘膜同士の接触が安定かと」


 ウェンディはサラッと言う。


「いやでも寝ている相手にソレはまずいんじゃないかな!? そういうのは本来合意の上でというか、俺としても罪悪感がヤバくてスタンドアップできるかどうか割と微妙なところというか……」

「あんた馬鹿じゃないの。粘膜同士って言ってるんだから、口と口でいいでしょ。何想像してんのよ、このド変態」


 顔を若干赤く染めたスノウに罵倒された。


「…………」


 無言でウェンディを見ると、当然でしょうと言わんばかりに頷いている。

 くっ……誘導されたのか本気でそのつもりだったのかがわからねえ……!

 ……とりあえずウェンディは後でお仕置きしてやる。

 覚えとけよ!



2.


 ベッドで死んだように眠るシエルさんを俺はしげしげと眺める。

 銀髪のエルフ。

 まるで精巧な人形のようにも見える。

 精霊たちもとんでもない美人なのだが、シエルさんもそうだ。

 精霊と妖精が近いなんて言っていたが、こんなとこまで似るのか。


 ……いやそもそも精霊、スノウたちは元人間なのだからそこは関係ないのか。

 精霊たちは素であの美貌である。

 そう考えるとすげえな。


 余計なところに逸れかけた思考を戻す。


 見た目の年齢で言えば若干小さめの高校生、くらいだろうか。

 

 知佳よりはちょっとだけお姉さんに見えるな。

 だがティナよりは幼く見える。


 実際はそのどちらよりも年上なのだが。

 

 化け物みたいな魔力量の例の少女も銀髪で耳が尖っていた。

 だが、あちらの方が比較的耳が丸いように見えた。

 ハーフエルフとかそういうやつなのだろうか。

 そもそもエルフは何も関係ないのだろうか。


 それにしても……

 マウストゥマウスならまあ、と思って軽々しく引き受けてしまったがこれはこれで犯罪臭がするよな。


 「キスで目を覚ますなんて白雪姫みたいで素敵です!」なんてフレアは言っていたが、その白雪姫だって王子様がイケメンだったので許されただけで俺がやったら訴えられたりするかもしれない。

 そうなったら俺、異世界の法で裁かれるのだろうか。

 それとも日本の法律で裁かれるのだろうか。


 ……どっちにしても嫌だなあ……


 いやしかしこれはあれだ。

 いわば救命行為だ。

 人工呼吸のようなものである。


 つまり俺は罪に問われない。

 そもそも数千年生きているエルフなのだ。

 今更キス程度ではなんとも思わないかもしれない。

 挨拶くらいの距離感でぶちゅっとやってしまってもいいのではないだろうか。


 ちなみに。

 気を遣ってなのかなんなのか、部屋にいるのは俺ひとりだ。

 あと寝ているシエルさん。


 うーん……

 お陰様でより犯罪臭がしているような……

 いや気のせいだ。

 そう信じよう。

 

 これはシエルさんを助ける為。

 俺は悪くない。


「……捕まりませんよーに」


 南無三。

 桜色の唇に自分のそれが触れ、その柔らかさを感じるより先に――


 とんでもない量の魔力が一気に持ってかれたことを感じる。


 具体的に言うと、スノウ――のときはまだ慣れていなくて感じられていなかったが、ウェンディやフレア、そしてシトリーを召喚した時に感じた魔力消費量とほぼ同等だ。


 そして。

 シエルさんが目を覚ました。

 髪と同じ銀……よりは少し暗めの色な瞳とばっちり目が合う。

 

 超至近距離で。

 だってキスしてんだもん。


「――!? くっ……~~!」


 シエルさんは飛び起きた。

 俺が離れるのが地味に間に合わなかったので鼻に頭突きされる。


 だが、どうやら彼女のデコよりも俺の鼻の方が頑丈だったようだ。

 魔力量の差だね。


 俺よりもシエルさんの方が痛そうだ。


「……おぬし、まさかカズマの縁者……息子か?」

「お、ご名答」


 恨めしそうに俺を見上げるシエルさんはぴたりと言い当てた。

 

「くっ……この状況、そうか……うぅむ……こうなったか……いや、そうだな。まずは命を救ってくれたことに礼を言う」


 シエルさんはどうやらすぐに何が起きているかを察したようだ。

 自分が魔力欠乏症に陥った時点で、目を覚ますような事があればという考えはあったのかもしれない。


「……だが……3415年守ってきた純潔をまさかカズマの息子に……」

「まさかシエルさん、あんた……経験がないのか?」

「なくて悪いか。エルフとは本来そういう生き物じゃ。数千年生きるが故に一生誰とも結ばれぬ者も多い」

「へえ……」


 人間の数十、数百倍生きるのだから案外そういう価値観が違っても当然なのかもしれない。


 シエルさんの声が聞こえたのか、扉が開いてガルゴさんと精霊たちが入ってきた。


「目を覚ましたか」


 ガルゴさんがホッとしたように言う。

 そういや、エルフとドワーフってなんとなく仲悪いイメージあるけどこの人たちは全然そんなことなさそうだな。

 

「お陰さんでの。わしの状況をこの者らに教えたのはおぬしじゃろ」

「ああ。カズマには何も言っていないが」

「正解じゃな」


 シエルさんは頷く。

 親父に関してはやっぱそういう認識なのか。


「……さて。体が動くうちにわしらは元の世界に戻るとするか。カズマの息子がいるということは、ここは異世界なのじゃろ?」

「その体で戻っても、数日で動けなくなるわ」


 シトリーが言う。

 ……あれだけの魔力量を持っていったのに数日なの?

 最初の頃、スノウは自分のことを燃費が悪いと評していたがシエルも同じなのだろうか。

 だとしても極端すぎる気もするが……


「確かに他人の魔力は体に馴染まん。そもそも先の魔力の譲渡も、わしとその少年の間で流れる時にかなりの量が消失ロストしておる。少年からはかなりの量の魔力が失われたじゃろうが、実際にわしに渡った分、そして馴染まない魔力だということを加味すればおぬしの言う通りもって数日じゃ。だが、わしはもう長く生きた。数日あれば故郷には戻れる。生まれた森に還るだけじゃ」


 死を――恐れていないのだろうか。

 それとももう諦めているのだろうか。

 シエルさんは淡々と言う。


「待て、シエル。以前の状況であればオレはそれでも良かった。だが、今は違う。お前には生きていてもらわないと困る」


 ガルゴさんの言葉にシエルさんは怪訝そうにする。


「あの銀髪の娘の件か? わしがいたところで次会えば終わりじゃよ。災害みたいなものじゃ」

「それも違わないが、そういうことではない。ユウマ、オレから話していいか」

「ええ、お願いします」


 別に俺に許可を取る必要はないのだが。

 ガルゴさんは異世界に迫っている危機のことについてシエルさんへ話す。

 いつになるかまではわからないが、そう遠くない内に世界が滅びるということ。

 そしてその後はこの世界だということも。


「……ということだ。お前がいなければオレたちは滅びを待つ以外に選択肢がない」

「……ふむ。確かにそれはまずい。かと言って、わしにはどうすることもできん。数日の延命は可能でも、戦える体ではないからの」


 それはその通りだ。

 あれだけの魔力が俺から持っていかれたというのに譲渡時のロスと他人の魔力だということで馴染まないなんて話ならば、普通に生活するのはともかく戦闘は不可能だろう。


 精霊一人分の戦力が失われたままというのはあまりにも痛い。


 だが、それはわざわざ供給が必要な場合、という話だ。


「それを解決する方法があるかもしれないんだ、シエルさん。あんたならもしかしたら、俺達よりも正しい知識を持っているかもしれないが――」


 俺は精霊との契約のことを話す。

 そして、であるシエルさんにも同じことが適用されるかもしれない、という話を。


「……絶対に有り得ん、という話でもないな。いささかこじつけくさいが、わしの知識とおぬしの魔力量があれば決して不可能ではないじゃろう」


 シエルさんの出した結論はこうだった。

 どうやら召喚術を介さずとも契約できる可能性はあるようだ。


「じゃが、壁は幾つかある。まず、わしはそこの精霊たちと同じようにおぬしと共同生活を送らねばならんということになる。わしがおぬしの家に居候する形になると思うが……そこは問題ないのか?」

「それはむしろ俺から聞きたいくらいだ。シエルさんから見ての異世界に住むことになるけど、平気なのか?」

「3000年生きてきて、色んなところを旅してきた。おぬしが死ぬまでの数十年間こちらで暮らすことなど何の抵抗もないわい」


 スケールのでかい話だ……


「数十年もあれば病を治す方法も見つかるかもしれないしな」

「数十年程度では無理じゃと思うが……」


 うーむ。

 やはりスケールのでかい話だ。

 時間に対する価値観が違いすぎる。

 すごいな。

 

 ……3000年っていったらこの人、こちらの世界基準で言えば紀元前から生きてるってことだよな。

 そりゃここまで時間に対する認識が違うわけだ。


「となると、ガルゴさんはどうしますか? こっちの世界に住むのなら住居を提供しますけど」


 流石にこの家に……となると俺以外の女性陣がいるので厳しいものがあるだろう。

 親父や母さんが住み込むのとはちょっと訳が違ってくる。

 その親父達もいずれ別邸に移り住むことになるし。


「オレは元々カズマが家族に会えれば別れるつもりでいた。時折遊びに来させてもらえればそれでいい。あちらに妻もいる」

「えっ、結婚してたんですか。それで親父と9年も旅って……」

「ドワーフもエルフほどではないが長生きだ。数百年は生きる。9年程度ならば大した歳月でもない」


 ドワーフも長生きなのか……

 というか、ここまでくると人間が短命なだけの気もしてきたが。

 

 とりあえずガルゴさんには転移石を何セットか渡しておこう。

 そうすればこちらの世界にもある程度気軽に来れるだろうし。

 

「ガルゴやわしの今後についてはともかく、まだ契約する以前の壁は存在するぞ」


 シエルが話を戻す。


「これが最も大きな問題になるのじゃが、おぬしの魔力の消費はともかく、わしの魔力消費は間に合わん」

「……消費魔力?」

「わしは精霊に近い存在じゃが、精霊ではない。しかもおぬしに召喚されたわけでもない。その違いを解消する為に――理を捻じ曲げる為に大量の魔力が必要となる。おぬしだけでなく、わしからもな。消費効率の悪い他者の魔力ではなく、自前のものが残っていればまだ道はあったが……」

「……それを俺が全部肩代わりするっていうのは? 端的に言うと、ずっとキスし続けて魔力を渡し続けるとか」


 状況を想像するとなかなかシュールだが。

 キスしながらシエルのお腹に紋様を描く。

 

 ……なかなか特殊な状況である。


「それでも間に合わんじゃろうな。口では限度がある。より丹田に近い位置ならばあるいは……」

「丹田……」


 そんなワードを聞いたことがある。

 いつか。

 そんなものはすぐに思い出せる。

 俺がハジメテを失った時――つまりウェンディとの本契約の際にそのままハッスルして行為に至った時である。


 ……要するにそういうことか。


「お兄さま、その前にエリクシードを試してみるのは如何でしょう?」


 そこでフレアが提案したのは、あの万能果実だった。

 そうか、既に意識は戻っているのだから試す価値は大いにある。


「エリクシード? なんじゃそれは、エリクサーの劣化版か何かか?」

「劣化版かどうかは知らないけど、エリクサーみたいだから名付けたんだ」

「少なくとも、エリクサーでは治らんかったぞ。生物が死んだ直後ならば蘇生すら可能と言われるものじゃったが……」

「……マジか」


 いや、そうだよな。

 エリクシードの本家本元であるエリクサーがあるのならばそれで試せばいい。

 死んだ直後の死者すら蘇生が可能というならば恐らく性能もエリクサーの方が上だろう。

 大量生産できるエリクシードが上回っていたらむしろ驚く。


「わしとしても、それで治るかどうかはともかく、そもそもおぬしと契約を結ぶのは戦略的に有りじゃと思っておる。なにせおぬしの魔力はわしの全盛期よりも更に多い。つまり契約後のわしは全盛期以上の力を手に入れることになる。それで他の精霊たちが使う分の魔力まで使ってしまう、という心配もなさそうな程の量じゃしの」


 自分で言うのもなんだが、俺の魔力量はどうなっているんだ。

 逆に何をしたら使い切ることができるのだろう。

 

「けどシエルさん、それはつまり契約の為にそういう行為も許容するってことになるぞ。その……3000年くらい守り抜いてきたとか言ってたけど……戦力の為だけにって言うんなら、俺みたいな小僧に言われるのはアレかもしれないがやめといた方がいいと思う」

「む……」

 

 シエルさんはその白い肌を赤面させる。


「まあアレじゃ、別にその戦力という点を差し引いても……構わんと言えば構わん」

「己より強い男が現れれば、と言っていたがまさにユウマがそうなのではないのか」

「う、うるさいガルゴ! おぬしは黙っておれ!」

「違うのか……?」


 ガルゴさんは困惑するように首を傾げた。

 ああ、そういうタイプの人なのね、シエルさんって……

 いや、俺がシエルさんより強いかどうかは疑問の残るところだが、少なくとも魔力量では彼女の全盛期を大きく上回るようだし。

 

「……まあ、あれじゃ。死ぬまでに一度くらいはそういうのも良いかもな……とは思っておったし、遅かれ早かれそうなるのならおぬしは悪くない。うむ、悪くない」

「そ、そうか……」


 スノウが呆れたように言う。


「あんた何人の女の子を誑かすつもりなのよ」

「今回の件に関しては俺は絶対悪くないと思うんだが……」

「ルルもそのうち毒牙にかかるわね、この分じゃ」


 んなことはない。

 と信じたい。




 数分後。

 精霊たちもガルゴさんも空気を読んで捌けた部屋で、俺たちは向かい合っていた。

 

「一応言っておくが、多少痛がってもそのままして良いからな。体のサイズがこれ故、すんなりとは行かぬと思う」

「まあ……痛くならないようにできるだけ善処するよ」


 

 数時間後。

 きっちり契約は成功していたのだった。

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