第156話:情報収集
1.
ダンジョンの外へ出ると、そこは森の中だった。
森の中と言っても、俺の知る森とはちょっと違う。
まず一本一本の木が尋常じゃなくでかい。
全てが屋久杉を更に倍でかくしたくらいはあるのではないだろうか。
屋久杉、実物見たことないけどさ。
しかも形も変というか、奇怪だ。
明らかに自重を支えきれるとは思えないような曲がり方をしている木が幾つも見られる。
他の木と絡まりあってなんとかなっているのか、それとも異世界だからこちらの常識とは異なるのか……不思議だ。
そしてすぐ近くに湖がある。
ダンジョンが九十九里浜と同じような鍾乳洞っぽい感じだったのはこの湖の影響を受けていたのだろうか。
ていうかこの湖、水が尋常じゃなく綺麗だ。
しかも底に沈んでいる石は……魔石ではないようだが、赤色に光っていたり青色に光っていたりとなんだかよくわからない石である。
泳いでいる魚も熱帯魚みたいにカラフルで、リザードマンみたいなやつまで泳いでいる。
多種多様だ。
「……って、リザードマン!?」
リザードマンが当たり前みたいに居るのかこの世界!?
「ああ、ここで見るリザードマンはほぼ確実に<はぐれモノ>だニャ。倒しておかないと後で怒られるニャ」
「<はぐれモノ>って……」
何だそりゃ。
「倒さないといけないならサクッと倒すわよ」
ピッ、とスノウがそいつに指を向けると、水中で凍りついたリザードマンは粉々に砕け、後には小さな魔石が残り、水底にぽつんと落ちた。
ダンジョンで見た奴と同じじゃないか。
「たまにダンジョンのモンスターが外に出てる事があるニャ。放っておくと他の魔物なんかに手を出したりするから冒険者商会と探索者商会の揉める原因になったりして面倒なのニャ」
「何言ってるかさっぱりわからんが……」
なんたら商会とやらはとりあえず良いとして。
ダンジョンからモンスターが出てくる?
そんなこと聞いたことも見たこともないぞ。
ダンジョンの外にはモンスターが出てくることはない。
それが暗黙の了解であり、不文律だったはずだ。
「とりあえず聞きたいことがある。魔物ってのはなんだ」
「ニャんだ、魔物も知らニャいのか。魔物は魔物ニャ。魔素を取り込んだ獣とか、その子孫のことを言うニャ」
魔素。
ダンジョン内に存在する、魔力が覚醒する因子……みたいなものだったよな。
それがこの世界ではダンジョン外にもあるということか。
そしてそれを取り込んだ獣やその子供が<魔物>となる。
「……モンスターってのはダンジョンの中に出てくる化け物のことだよな?」
「そうニャ。倒したら魔石を残すのがモンスター、倒したら死体が残るのが魔物ニャ」
モンスターがダンジョンの外に出る上に、元々魔物とかいう化け物が存在する。
とんだ危険地帯じゃないか、異世界。
なるほど、そんな世界で暮らしていればルルのような強者が生まれる訳だ。
まあ、ルルはルルでこの世界でも伝え聞くレベルだったダンジョンの<向こう側>を単独で見ることに成功している訳で、相当な上澄みっぽいのはわかるのだが……
「魔素がダンジョン外にもある世界ならそりゃ魔物くらい居るでしょ。常識よ、常識」
とスノウは軽い反応だった。
他の三人も特に驚いた様子はない。
なるほど、むしろ俺達の居る世界の方が特殊な例のようだ。
「ていうか魔物の方は倒すと死体が残るのか……ちょっと嫌だなそれ」
「慣れれば平気ニャ。けどあんまり探索者が魔物を倒すと冒険者商会と揉める原因にもなったりするのニャ」
「……探索者はともかく、冒険者ってのはなんだ?」
「はん、冒険者も知らないのかニャ?」
馬鹿にしたように鼻で笑うルル。
尻尾でも引っ張ってやろうか。
「冒険者ってのは依頼を受けて魔物を倒す連中のことニャ」
「へえ……でもそれって別に冒険はしてなくないか?」
どっちかと言えばハンターだ。
モン◯ンみたいなイメージ。
「未開の地の開拓も連中がやるのニャ。最近はそういう依頼も減ったそうだけどニャ」
「未開の地の開拓ねえ……」
そういうのが形骸化して、名称だけが残った感じかな。
「探索者商会は100年くらい前にできた新参だから結構目を付けられるのニャ。面倒臭いニャ」
……てことはダンジョンも大体100年前にできたってことか。
こっちの世界とは年季が違うな。
冒険者商会とやらはもっと長いらしいが。
いやまあ、異世界の文化について興味はあるが本筋はそこではない。
「で、ルル。親父を探すあてはあるのか? 一緒にいるエルフの人は知り合いなんだろ?」
「無いけど、あるニャ」
「いい加減なこと言ってると綾乃をけしかけるぞ」
「ニャ!?」
よほど昨日の風呂場であったことがトラウマなのか大げさに怖がるルル。
ウェンディとシトリーの前で抵抗できない中好き勝手されたようだからな……
しかし綾乃も性癖というか守備範囲の広い奴だよなあ。
この間なんて一時的に対象者の年齢を下げる魔法を<
どうやら失敗したようだったが。
誰に使うつもりだったのかは怖いので聞いていない。
きっと美容的な魔法に応用するつもりだったのだろう。そう信じよう。
「で、無いけどあるってのはどういうことだ?」
「連絡する手段とかは無いのニャ。あのババ……あのエルフ、最近できた通信用の魔道具を持ち歩かないのニャ」
へー、通信用の魔道具とかもあるのか。
本当に科学の代わりに発達した魔法って感じだな。
「親父とか仲間のドワーフも持ってないのか?」
「多分持ってないニャ。会える時はまた会える、が連中のスタイルだニャ」
ドワーフさんとエルフさんはともかく、親父は持っとけよ。
おっさんだからそういうのに疎いのだろうか。
「でも探す手段はあるニャ」
「どうやって? 探し人を見つけてくれる魔道具とやらがあるのか?」
「いや、地道な聞き込みだニャ」
「……あのなあ、何年かかると思ってんだ」
この世界の広さがどんなもんなのかは知らないが、仮に俺達の世界と同じくらいだとすれば聞き込みじゃ一生かかっても多分見つからないぞ。
「その点は大丈夫だニャ。普通仲の悪いエルフとドワーフが一緒にいるだけでも目立つのに、どちらもほとんど人間と関わりを持たない種族なのニャ。なのに一人馬鹿でかい剣を持った人間まで居るから、それはもうめちゃくちゃ目立つのニャ。でかい国のでかい街へ行けば目撃情報があるはずニャ」
2.
「すっげぇ……」
「田舎モンみたいな反応しニャいで欲しいのニャ。恥ずかしいのニャ」
一言で言い表すのなら、煉瓦造りの町並み、と言ったところだろうか。
なんだっけ、フランスにあるなんとかって街みたいな。
ちょっと前にテレビで見たんだよな。
「フランスの<トゥールーズ>ですね。確かに近い印象を受けます」
「知っているのか雷電」
「ウェンディです」
ルルに案内された街の様子はまさにそのトゥールーズに近いものを感じる。
根本的に違うところとしては、行き交う人々が着ているのは洋服ではなくそれぞれ独創的な民族服のようなものだということ、車の代わりにでかいトカゲみたいなやつが引いてる馬車(?)がある事、そしてところどころルルのような猫耳や、犬耳っぽいのが生えている人が紛れていたり明らかにデカすぎる人間が混ざっていたりとファンタジーな多様性に富んでいるところだろうか。
「いやこれは……マジで凄えな。ほんとに凄え」
語彙力が乏しいのが恨めしい。
異世界。
これが異世界か。
こういう煉瓦作りの町並み自体はそれこそ俺達の世界にもあるものなのだが、恐らく今の俺はそこに行くのとはまた別の感動を味わっているのだろう。
「……で、ここで親父達の情報を集めるのか?」
「ここはそんなに大きな街でもないニャ。二年前にあいつらと別れた場所の近くに超でかい街があるニャ。そこで情報収集するのニャ」
これで別に大きな街って訳でもないのか……
文明レベルはどうなっているのだろう。
水洗便所とか、温かい風呂とかには入れるのだろうか。
やべえ、知佳を連れて大きな街の図書館とか行ってみたい。
なんならここで暮らしてみたい。
10年くらい。
油断するといつまでも町並みを見て回りたくなってしまいそうだったので意志の力でそれを断ち切って、町の中央にあるという巨大転移装置とやらの元へ向かう俺達。
で、その巨大転移装置が……
「セーブポイントみたいだな……」
「セーブポイント?」
「こっちの話だ」
流石にこの比喩はルルに通じなかったようで、首を傾げられた。
広場の真ん中にひし形……正八面体の水色に輝く、縦横5メートルくらいあるように見える水晶のようなものが上下の幾何学的な模様の描かれた円盤に挟まれて宙に浮いていた。
「あれは魔法陣ですね。解読すれば同じものが作れるかもしれません」
幾何学的な模様を見てウェンディが小声で言う。
「……そんなことできるのか?」
「時間があれば不可能ではないかと」
凄いな。
そういえば、以前の襲撃時にも結界の解析をしたとかなんとか言っていたし本当にできるのかもしれない。
今はそれどころではないのでとりあえず後回しだが。
少し離れた位置にある、天然公園とかにある説明板みたいなものに触れて何やら手を動かし始めたルル。
「……何やってるんだ?」
「行き先を設定してるのニャ。セフゾナズ帝国の帝都パームへ向かうニャ」
急に名詞を出されても正直覚えられないのだが。
「ほら、離れてるとたまに漏れる時があるのニャ。近くへ寄るニャ」
ルルの言葉に俺達は顔を見合わせ、彼女へ近づく。
すると――
「それじゃ行くのニャ」
フワッ、と不思議な浮遊感があったかと思った次の瞬間。
先程までとはまた違った町並みが俺達の前に現れるのだった。
セフゾナズ帝国、帝都パーム。
煉瓦造りの町並みというのは先程の街と変わらないのだが、あちらが赤煉瓦を使っていたのに対してこちらは赤いには赤いのだが……
「なんだこの煉瓦? なんか魔力を感じるんだけど」
「この街の特色ニャ。帝国はあちこちに敵がいるのニャ。敵対国家からは転移できないようになってるけど、それでも戦場になる可能性を見越して魔法や衝撃への耐性が街全体に備わってるのニャ」
「……凄いんだな」
魔力を込めているというよりは、魔法の結果魔力を帯びているというか……
言葉で説明しようとするとちょっと難しいのだが。
「……こんな大魔法を維持する魔力、どこから出ているのかしら」
シトリーが不思議そうに呟く。
「魔石が高く売れる理由の一つニャ。帝国は大きめの魔石を売ると他の国の倍くらいの値段で買い取ってくれるニャ」
なるほど、魔石か。
便利だなああの石。
もしかしたら魔石からの抽出効率なんかも俺達の世界より優れているのかもしれない。
「ま、お前ニャら一人で維持するだけの魔力を持っているかもしれニャいけどニャ」
「……できたとしてもやらないからな」
自由とか全然なさそうだし。
「それニャら精々帝国の上の方にいる連中に見つからないようにするニャ」
……<理論魔法>と言い帝国の大魔法の維持と言い、どうやらこの世界はあまり俺に優しくないらしい。
3.
「のじゃのじゃ言ってるエルフの小娘に寡黙なドワーフ、ちょっとノリのうざいでかい剣を背負った人間の三人組? それならつい最近までここに居たぜ。なんなら国賓扱いだったくらいだ」
すぐに親父達の情報は見つかった。
酒場らしきところに俺だけが入って情報を集めていたらすぐだった。
ビールのようなものをあおって気分良さげにしている筋骨隆々の頭がちょびっと寂しいおっさんが得意げに話してくれている。
なぜ酒場で情報を集めているのが俺だけかって?
中にむくつけきおっさん共しか居なかったからだ。
隠蔽魔法を使って目立ちにくくしているとは言え、精霊達はあの美貌。
ルルも目立つ格好と容姿だし、面倒ごとは避けたい。
その点俺なら地味なので安心だ。
別に悲しくない。
適材適所だもん。
ちなみに他の皆は普通に街で聞き込みをしている。
ていうか、国賓て。
なんじゃそりゃ。
何してんだ親父。
「いやな、理由は未だに分かっちゃいねえがでっけえドラゴンがぷらっと帝都に現れたんだよ。そいつらを追っ払ってくれたから皇帝がえれえ感謝してたんだ」
「主人公みたいなことしてんな親父……」
「ん? 何か言ったか?」
「いえ、なんでも」
しかしこの世界でそんな大者になってるんなら、それで目立つのはまずいかもしれない。
「今は居ないんですよね。どこへ向かったか知ってますか?」
「あー、なんでもエシキ樹林のキュムロスダンジョンへ向かうそうだ。本当にダンジョンの向こう側が異世界に繋がってるのか確かめるってよ」
「エシキ樹林、キュムロスダンジョン……」
スマホにメモっておこう。
「なんだそりゃ? 珍しいもん持ってるな」
「ちょっとした魔道具です。これ、情報のお礼代わりに」
ちょっと大きめの魔石を渡しておく。
俺達の世界で売ってもこの大きさは数十万から数百万にはなる。
酒場の与太話の礼としては多すぎるくらいだとは思うが、こちらの世界の通貨を持っていないのでこうする他ない。
俺にとっちゃあ何千万と払っても全く損のない情報だしな。
「はあ!? い、いいのかこんなの!」
「いいんです、取っておいてください。ただし目立ちたくはないので他言は無用です」
静かに、のジェスチャーをする。
するとおっさんは辺りを見渡しながら慌てて懐に魔石をしまった。
「……お前さん、何者なんだ?」
おっさんは訝しげに俺のことをジロジロ見てくる。
自分で言うのも悲しい話だが、魔力を抑えている今の俺は本当にただの目立たない平凡な青年にしか見えないだろう。
「別に何者でもないですよ」
少なくとも、この世界では、な。
あらかじめ決めてあった集合場所である、転移装置のある広場へ皆が戻ってくる。
するとどうやら本当に親父達は相当目立っていたようで、別に酒場でなくとも情報は得られたようだった。
「エシキ樹林のキュムロスダンジョンってのはどんなところなんだ?」
「キュムロスなんたらとか言う剣の達人が見つけたダンジョンのことニャ。エシキ樹林ってのは世界樹からちょっと離れた位置にある森のことだニャ。ここからもそれなりに近いニャ」
「……世界樹?」
「あたしも世界樹についてはよく知らないのニャ。超でっかい樹のことニャ。神話では世界そのものを支えているとかニャんとか言ってるニャ」
世界樹なんてものまであるのか。
で、その世界樹の近くにあるのがエシキ樹林で、その中にあるダンジョンがキュムロスという剣の達人が見つけたダンジョン、と。
「それにしても、お兄さまのお父さまはとても評判が良いのですね! 困っている人を見たら助けずにはいられないようなお方なのだとか」
「アメリカで追われてる女の子を助けに入っちゃうどっかの誰かさんにそっくりね」
「巨大なお世話だ」
別に俺は親父ほどお人好しな訳ではない。
ただ困ってる人を放っておくと後悔しそうだからなんとなく手助けしたくなるだけだ。
「しかしそのお陰もあってスムーズに情報を集められました。国賓としてこの国に滞在している間も、そこかしこで色んな方に手を貸していたようで。行きつけの店まで判明しましたよ」
「目立ってんなあ……」
まあこの場合は目立っていてもらわないと困るのだが。
親父があちこちで活躍していると聞くと息子としては気恥ずかしいものがある。
昔からずっとそんな調子だったが。
近所を歩いていると「皆城さん家の子よねー! いつもお世話になってるわー!」なんて感じでオバちゃんやオジちゃんにオヤツを貰ったり野菜のお裾分けをされてたりしたもんだ。
「ちなみにルル、近いってどれくらいの距離なんだ?」
「大体、駆竜車で1日くらいニャ」
果たして1日の移動時間は近いのか否か……
場所がわかっていればウェンディに飛んでいって貰えばいい話なのだが、流石に異世界ともなるとそういう訳にもいかない。
森の中にあるダンジョンという事にもなれば上から見て場所を判断するっていうのも難しいだろうし。
「とりあえず、どこかに転移石を置いて一旦家へ戻ろう。明日は一日移動になりそうだしな」
4.
町中だとやはりどうしても目立つので街から少し離れたところに転移石を隠して、二度の転移を経て家まで戻ってきた。
「あれ、今日は早いですね」
リビングでは綾乃と母さんが何やらパソコンで仕事をしていた。
時計を見るとまだ昼の2時過ぎだった。
3時間くらいでダンジョンを突破して、そこから1時間歩いて最初の街へついて、帝都へ転移してから情報を集めたのも1時間くらい。
家を出たのが朝の9時なので、あちらとこちらとで時間の流れが違うとかそういうオチも無いようだ。
「まあな、明日はちょっと長くなりそうだけど……あれ、知佳は?」
「知佳ちゃんなら鳥ちゃんの研究所についていったわよ」
と母さん。
鳥ちゃんって誰だ? と一瞬考えて、すぐに天鳥さんのことだと思い当たる。
そういえば最初の頃にそんな風に呼んでもいいとかなんとか言ってたな。
すっかり忘れていた。
「悠真くん達の方はどうだったんですか?」
「異世界の街まで行ってきて、親父の情報も集めてきた。明日、親父達が向かったっていうダンジョンまで行くよ」
そこから俺が酒場で得た情報や、スノウ達が街で聞いた話を母さんと綾乃にも伝える。
「変わらないわねえ、お父さんも」
あちこちで人助けをしているという話をしている辺りで母さんが苦笑した。
「全くだ」
「でも良かった、元気そうで……本当にまた会えるのね、あの人に」
しみじみと母さんが呟く。
親父があっちでも変わらないというのを聞いてようやく実感が湧いてきたようだ。
「母さんはまだ若いまんまだからな。老けた親父とじゃ釣り合わないかも」
なんだかしんみりしそうだったので適当に茶化しておく。
「お父さんなら歳とっててもきっと素敵よ?」
「俺から振っといてなんだが、今ノロケられても困るな……」
どうせ帰ってきたらもっとノロケるんだろうから。
元々息子目線からでも仲のいい夫婦だったが、帰ってきたらもっと鬱陶しくなってそうだ。
「あたしが会ったのは二年くらい前だけど、ぱっと見は結構若く見えたニャ。30前半くらいに見えたニャ」
いつの間にか綾乃に耳をモフられているルルが思い出したように言う。
良いなあ、俺もルルの耳モフりたい。
「若く見える、ねえ」
若作りでもしているのだろうか。
実年齢はとうに40を超えているはずだが。
俺が12の時点で30過ぎだからな。
単に若く見えているという可能性もあるが……
今どきの40代って結構若く見えるしな。
そもそも知佳のお母さんみたいな特殊な(特殊すぎる)例も存在するし。
母さんも実質30歳ちょいみたいなものだし、その実質的な年齢よりも若くみえるくらいなので親父の見た目も若いままの方が都合は良いのかもしれないな。
そうなった時に外で親父と母さんの事を呼ぶと無駄に複雑な家庭だと思われそうだが。
……まあ複雑であることは間違いないか。
「何度も言うようだけど悠真、怪我だけはしないようにね。お父さんは自分でも帰ってこれるんでしょ?」
「まあ、多分な。けど俺、こう見えても結構強いんだ。心配はいらないって」
「どれだけ強くてもお母さんにとってもお父さんにとっても大切な子だから。それに、スノウちゃん達も無理しちゃ駄目よ? 私にとってはあなた達も娘みたいなものなんだから」
それを聞いたフレアがハッと口元に手を当てる。
「お兄さま、お義母さまの公認を頂けました!」
「公認て。熱い、熱いよ。興奮しすぎだよ、フレアさん?」
俺の手を握ってぶんぶんと上下に振り回すフレア。
そんな様子を見ていたウェンディが微笑むようにして、追い打ちをかけてきた。
「それでは早くお父様にも許可を頂かなければいけませんね」
親父が悪ノリする絵面が思い浮かんで、俺は溜め息をつくのだった。
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