第1話 断れない話

本物は知らないが、多分フラッシュバンを直視してしまった人間の気持ちが分かった。

白く塗りつぶされた視野。 三半規管がまるで意味を成さない様な感覚喪失。

体感で1分ほどはのたうち回った気がする。 尤も、時速70㎞/hで運転中のトレーラーが1分も制御を離れたらどうなるかはすぐに想像が出来るだろ?


正直、生きた心地がしなかったが、感覚が戻った瞬間肝が冷えた。

何せ「良く分からないけど、ここ何処?」だからな。 目の前に石の壁だからな。普通なら「あ、私死んだ」って思うところだ。

だけど、こうやって考えてる間も、トレーラーは動かないし石壁も近寄ってこない。スピードメーターは何故か0km/hを指している。


「状況を説明しよう」


突然声が響く。バリトンが効いた渋い声。羨ましいな。私の様な潰れたカエルの様な声からしてみれば。


「経緯は省くが、君は現在強制転移魔法により拉致され、この世界へと引きずり込まれた形になっている。本来のターゲットは…… そこらに転がっている小僧小娘生贄どもだ。

ふむ。丁度発動時に真横に居たが為に巻き込まれた形だと、報告にある。

ああ、現在だ。尤も、そんなに長くは停止出来ないんだがな。

この世界の管理神愚か者を何らかの形で処罰するのが我々管理者の目的だが、残念ながら我々が直接介入する事は出来ない」


ふむ、見えて来た。

つまり、これはダメな方のパターンか?


「ご明察。 君には我々からの依頼と言う形で、この世界の管理神愚か者を抑える手助けをして貰いたい。

君の経歴を見させて貰ったが、すべての経験をスキルと言う形で付与。肉体年齢も、あの連中生贄と違和感が無い程度…… ふむ、20歳ぐらいまで巻き戻そう。

おや…… 君はずいぶん奇特な…… そちらの管理神同業も随分酷な事をするな。

中途半端な性もどちらか選択制でどうだ?


成功報酬は別途相談だ。 君のスキルに相談先は組み込んであるので、好きなだけ書くと良い。出来る事、出来ない事は事前に通達しておくがね。


どうだ? 悪い話ではないだろう?」



ああ、随分と旨い話だ。

長年悩んできた事まで全て解決してくれるなんて、どれだけ「」なんだろう。

こう言うのは大抵私も使、アンタもか…… 本当だから、ブラックも泣いて逃げ出す地獄インフェルノのどれか か


「随分酷い言われ様だが、まあ仕方がない。こう言うのは信頼がモノを言う。

正解は、地獄インフェルノとまでは言わないが、それなりにだからだ。


さて、無駄話をしている時間も惜しい。この話、受けるか?」



正直、悩まなかったとは言えないが、この中途半端な身体にも待遇にも、時代にも不満しか無かった。

訳が分からないが、受けなかったらダメな方のパターンで悲惨な目に遭うのは調なんだろう。

ならば受けるしかない。

時間が惜しいと言ってるのは本当なんだろう。 時間停止なんてまさに神の領域なのだから、私にあれこれ改造するのも可能なんだろう


「OK、君が分かり易いようにキャラビルド形式にした。

操作は分かるか? 分かり易いように、この世界の平均値も併記してあるので、参考にしてくれ。

残り時間は……720秒だ。 それまでに決めてくれ。

幸運成功を祈る」


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