第70話 イジワルをし過ぎたかもしれない

 一夜明け今はギルドへと向かう最中。


 ノエルさんへのお詫びも喜んでもらい、無事平和を手に入れる事が出来た。

 解体員のジャルタさんや鍛冶師のヴィルドさん、宿屋のランバルさんと、誰を欠いても今回のミッションは成功しなかっただろう。


 今度何かお礼でもしなければと思う今日この頃。



(ジャルタさんは何か丸ごとの素材を提供すれば良さそうだし、ランバルさんは料理に関して俺が教えられるものを教えてあげれば喜びそう。ヴィルドさんは・・・あの人・・・いや、あのドワーフは何で喜ぶのだろう・・・まあ、おいおい考えていくか。)




 昨日と言えば、食事も終わりそろそろお開きといったところで、少し・・・




 ~・~・~・~・~




『どれもおいしい料理ばかりで驚いちゃいました。』



『喜んで貰えたのなら何よりです。では、暗くなって来ましたしそろそろ・・・。』



『・・・はっ!そ、そうですね!そろそろ・・・。(ゴクッ)』



『女性一人の夜道は危ないですし、お送りしますよ。』



『え?お、おく・・・あ!そ、そうですよね!ゆ、夕食ですもんね!』



『大丈夫ですか?顔が赤い様ですが熱でもあるんじゃ?』



『だ、大丈夫です、なんでもありません。か、帰りも一人で帰れますから!』




 ノエルさんはそう言うとバタバタと慌てて帰って行った。

 ・・・少し、イジワルをし過ぎたかもしれない・・・。




 ~・~・~・~・~




 昨夜の可愛らしいノエルさんの反応を思い出し、自分の中の新たな“S”を意識してしまう。・・・自分でも朝っぱらから何を考えているのかと、少し苦笑いが出てしまう・・・。




 そんな事を考えて進んでいると、あっと言う間にギルドへと到着した。中へと入り今日も冒険者で賑わうフロワを抜け、依頼掲示板を見る。昨夜ノエルさんと話している中で、俺の冒険者ランクについての話題になった。


 一番下のランクであるF級の俺は、戦闘と採取は牙猪と回復草や魔草の採取で実力が認められている様だが、これとは別に“奉仕”という部分でまだランクが上げられないらしい。


 この“奉仕”とは採取や討伐の様に“町の外”へ出てする依頼では無く、主に町民から出される“町の中”での依頼。所謂“お手伝い系”の事である。

 地域密着型を目指す冒険者ギルドとしては必要な事なのだろう。

 ・・・どこぞのアド○ック天国のようだ・・・




 依頼板を見て行くと一つ、やけに色の違うものがあった。掛けられてから日が経っているのか少し色が抜けてしまったような感じ。


 気になり手に取ってみると、まさに狙っていた“町の中”の依頼だった。




(長い事依頼も受けられていなかった様だし、これも何かの縁か・・・。)




 そう思いこの依頼を受ける事にした。依頼板を手に受付へと並ぶ。程なくして自分の番が来ていつも通り名前が呼ばれる。




『お、おはようございます、マサルさん。』



『おはようございます、ノエルさん。

 今日は昨日おっしゃっていた町中の依頼を受けてみようかと思いまして。』




 そういって先程の木札をノエルさんに出すと、




『こ、これを受けて頂けるんですか!?』



『え?はい、何かあるんですか?』



『実はこちらの依頼は出されてからかなり経つんですが、中々受けて頂けずギルドとしても困っていた所なんです。』



(ああ“塩漬け”ってやつか。報酬が安くて慈善事業の色が強いってやつかな?

 ・・・まあ、ノエルさんも困ってそうだしいいか・・・。)



『そうだったんですね。』



『本当に受けて頂けるんですか?』



『はい、大丈夫です。手続きをお願いします。』




 了承の意を示し、冒険者証を出してこの依頼を受ける事にするのだった。

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