第66話 伏せてもアウトじゃ・・・?
ギルドの建屋より出て外から回り、買い取りカウンターへと向かう。
冒険者達も今から採取や討伐へ向かう為か、ここには姿が見えなかった。なので、
『おう!来たか、待ってたぜ!』
こちらが声を掛けるより先に、ジャルタさんの方が早かった。
『おはようございます。査定が終わったと聞いて来ました。』
『査定どころか解体まで全部終わってるぞ。』
そう言ってジャルタさんが落とした視線の先に、解体された“モノ”が並べられていた。
皮や肉はもちろん、骨に特徴的な牙、それに一部内臓の様なものもあった。
自分でも解体は出来る様になったが、流石にこんなに大きなものは捌いた事がないので圧巻である。・・・ここで不快より感心が先立つあたり、俺もこの世界に染まってきた証拠なのかもしれない・・・。
『すごい量ですね・・・。』
『まあな、久々に良い勉強会が出来たんでこっちも助かったぜ。』
『勉強会ですか?』
『ああ、一頭丸さらの解体なんてのはそんなに頻繁にある訳じゃねえからな。俺も何時までも居てやれる訳じゃないから、後進の育成ってヤツさ。』
そう言うジャルタさんの視線の先には、別で作業をしている若い解体員達の姿があった。
・・・ここで、ふと思う・・・。
『その勉強会って、外部の人間は参加出来ないんですかね?』
『あん?どういう事だ?』
『俺も村にいた時は自分で解体をしていたんですが、まだ経験が浅くて捌いた種類も多く無いんです。だから勉強会があるなら俺も参加させて貰えませんか?もっといろんな種類を覚えておきたくて・・・。』
『そう言う事か。そうだな・・・俺たちが勉強会で解体するのは、あくまで冒険者が持ち込んで来る“商品”だからな・・・。何かあった時の事を考えると、そこに外部の者を入れるのは流石にマズい・・・。』
芳しくない返事を察し気落ちしてしまうが、
そこでジャルタさんは『だが・・・』と続けて、
『・・・お前さんが冒険者として持ち込んだものなら、問題ないだろうな。
そしたら俺たちも勉強出来て、お前さんも参加出来て、普段は流れない素材が町へ出て・・・まさに三方よしだな!』
と、笑いながら妙案を出してくれた。
正直、あの重量物を運ぶのは堪えるが技術向上の為には、やむなしかと既に諦めモード。
そんな俺の心中を察してか、話半分で流してくれた。
『まあ、無理にとは言わんさ。それで、本題の買い取りだが・・・皮だけで本当に良かったのか?』
『えっと・・・防具は見ての通りなので急務なんですが、この素材の中だと他にも売らずに取っておいた方が良い物があるんですかね?』
『そうだな・・牙は昨日言った通りだし、“コイツ”もお前さんの年じゃまだ必要無いだろう?後は・・・単純に肉と魔石ぐらいかねえ・・・。』
『す、すみません!肉と魔石も気になるんですけど、その前に言っていた“コイツ”って何の事ですか?』
『ん?“コイツ”か?コイツは睾丸だよ、睾丸。知らねえのか?』
持ち上げて見せてくれるが・・・ああ、成程たしかに言われてみれば・・・。正体が分かり、何とも言えない感情に包まれる。死して尚、晒されるのは男として少し切ない気持になった。
そして揺れる度に何故か“ヒュンッ!”ってなる・・・ナニが?って聞かないで・・・。
・・・連呼され気付いた・・・睾○・・・伏せてもアウトじゃ・・・?
『あー、それはナニに使うんですか?』
『そりゃ精力剤に決まってるだろ。』
・・・うん。そんな気は・・・してた・・・。
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