第48話 シュッ―――タンッ!
『ここが訓練場だ。』
そう言ってドールさんに、らt・・・連れられて来たのはギルドの裏にある広場だった。
俺たち以外にも人が居て、各々木で出来た剣や盾を使い、素振りや模擬戦の様な事をしていた。
『マサルの武器は弓だったな。』
そう声を掛けながら何やら準備を進めるドールさん。
『そうですけど、何をするんですか?』
『先ずはその腕前だな。的を用意したからあれを狙ってみてくれ。』
訓練場の端は元から弓の試射スペースだったのか、視線の先には離れた位置に壁があり手前に的の様なものが設置されて、射線には人が入れない様に簡単だが柵の様なもので仕切りもされていた
『悪いが剣や盾、槍なんかは練習用のがあるんだが、弓矢は自前のを使う事になってるんだ。』
ドールさんが少し申し訳なさそうに説明してくれた。
(弓は自分に合った物じゃなきゃ練習にならんし、矢は消耗品だからな・・・)
『分りました、あれですね。』
終わるまで解放される雰囲気がまるで無いので、さっさと済ませる事にする。
(そんなにじっくり見て貰う程、大したモノじゃないのに・・・)
などと思いつつ狙いを定め矢を放つ。
もちろん腕力強化と視覚強化を使う事を忘れない。
シュッ―――タンッ!
矢は見事 的に当たった。すると、
『・・・矢はまだあるか?あるなら続けて射ってくれ。』
『?・・・はい。』
腑に落ちないながらも、言われるがまま射つづける。
矢ももう終わると思ったその時、ドールさんが、
『・・・もういいぞ。お前、弓以外何かやっていたか?』
『え?いいえ、武器は弓しか使った事ありません。』
『武器以外でも何かやっていなかったか?』
『?・・・しいて言えば村では畑仕事を手伝っていましたけど・・・。』
『畑仕事か・・・。』
『何かあるんですか?』
『あー。俺は弓を使わないから実際には分からないが、冒険者時代の仲間やら親しい奴ら、今だと若手の奴ら何かから見聞きしているのと少し違うわけだ・・・。
今だいたい10本ぐらい射ったと思うが、10歳の子供が連続してこんなに精度良く射れるものなのか・・・と思ってな。』
ドールさんの視線の先には的があり、最初の方こそ中心から外れていたが後半になるにつれ精度が上がっていき、最後の方は中心付近を射た矢が刺さっていた。
『それに・・・。』
と言いつつ、俺の元へ来たドールさんは俺の手から弓を取り、弦を引いて、
『・・・やはりか。子供が使う様な緩い物では無くしっかりとした弓だな・・・。』
(あー。これもしかして・・・?。)
『お前・・・福音を聞いてるだろ・・・しかも多分2回・・・いや、もしかしたら・・・。』
(やっぱバレてたー!)
内心を悟られまいと努めて冷静に、クレバーを心が掛けポーカーフェイスを気取る・・・脇汗止まんねー・・・。
無言を通していると、
『・・・まあ詳しくは聞かんさ。ただ、隠したいのか晒したいのか良く分らん奴だな。』
溜息を吐かれながら呆れた顔で言われてしまった。
『ど、どうしてそう思うんですか?福音は俺みたいな子供で聞いてる人なんて・・・それに2回以上って、普通は有って1回じゃないんですか?』
とりあえず、すっとぼけながらどこでバレたのか聞いてみる。
『お前なあ、どこに初見の森で素材を的確にあんなに早く見つけられる奴が居るんだよ!
それにこの弓。お前の体格のどこにこれを引けるだけの力があるんだ?ん?』
呆れられた挙句に怒られた・・・ちょっと理不尽じゃない?
・・・いつものクセでやってしまったのだ・・・そんな事言ったってしょうが無いじゃないか・・・やっぱマルコメにしないとダメかな?・・・
戻って、
まあ想定内といえば想定内だが、10歳で冒険者を生業にするには多少特異な部分が無ければなれないだろうと思い、牽制の意味を込めて1つくらいは匂わせて試験を有利に進めようと思っていたが、まさか2つ・・・いや、他のスキルについても何かしら感づいている様子に少し焦りを覚える。
『それに福音は1回しか聞こえないなんて事は無い。その証拠に俺は2回聞いているからな。』
(うお!マジか!?複数聞いてる奴が他にもいたよ!・・・ただ、俺とは違って純粋な研鑽の賜物だと思うと・・・。)
人生を掛けて1回が限度と思われているスキルの習得に2回叶っているという事は、単純に見積もっても他の人の2倍以上努力を重ねてきたという事だ。そう思うと尊敬の念さえ芽生えてくる。流石はA級・・・いや“だから”A級なのか・・・。
『だから分るんだよ。そこでだ!
これだけの能力があるなら弓だけでは勿体無い!俺が他の武器の扱い方も教えてやろう!』
・・・え?なんでそうなるん?・・・
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