第47話 ドヤ顔イラつくわー・・・

『マサルさんの冒険者ランクは“F級”となります。』



 ノエルさんから説明された内容を纏めるとこんな感じ。



 F級 ウッド   若葉マーク

 E級 アイアン  新人類

 D級 ブロンズ  ぼちぼち

 C級 シルバー  ベテラン

 B級 ゴールド  スゴい

 A級 プラチナ  超スゴい

 S級 ミスリル  ・・・なんもいえねぇ



 ランクが上がると冒険者証の材質も変わっていくらしい。

 ちらっと裏を見ると、銀色に輝くプレートを胸元から出し見せつけてくるオッサン。


 あれがプラチナなのだろう。そして定番のミスリルもあると・・・。

 ・・・ドヤ顔イラつくわー・・・。



『依頼にはそれぞれ推奨ランクが設定されていますので、ご自身のランクが達していない依頼は受ける事が出来ません。

 ランクは依頼の種類、失敗や達成の回数、ギルドへの貢献度など複合の条件により見直されます。


 マサルさんの場合は採取限定のため、依頼としては採取以外の受注は基本出来ませんが、町中での依頼・・・つまり討伐や戦闘に関わる依頼でなければその限りではありません。

 これらの依頼が達成出来れば討伐や戦闘を含む依頼を達成していなくても、ある程度までの昇格は可能です。

 ただ逆を言えば、討伐や戦闘が想定される採取依頼は受ける事が出来ません。

 便宜上この様な名称となっていますが、戦闘能力が証明されていない冒険者への特別枠だと認識下さい。


 それと依頼の失敗には罰則が科せられます。金銭面では報酬額の半額を違約金として支払う事と、ギルドとしても失敗の蓄積を見過ごす事は出来ませんので、回数が重なる様でしたらランクの降格及びギルドからの除名処分もありえますので、受注の際は慎重な判断をお願い致します。』



『・・・なるほど、分かりました。』



(どうやら思っていたほど楽ではないらしい。戦闘行為が想定されるとなると足兎も、森の奥への採取も規制が掛かるのだろう・・・。)



『受注が出来ないという事は、買い取りも断られるという事ですか?』



『いえ、お持ち込み頂いた素材は受注如何に関係無く、買い取りは可能ですよ。』



(それなら良かった。依頼を受け無くとも自分の裁量での採取や狩猟は可能という事か・・・まあ全て自己責任というやつだな。)



 村での延長だと思えば、身元を保証してくれる人が変わっただけで、やる事は変わらないと思い多少気持ちも楽になる。・・・もうイケメンの力を借りる事が出来ないのはイタいが・・・。



『ではこれが依頼報酬です。回復草が10本×5束で銀貨5枚。

 魔草が10本×5束で銀貨7枚と大銅貨5枚。

 合わせて大銀貨1枚と銀貨が2枚と大銅貨5枚になります。ご確認下さい。』



(試験で採って来た素材も買い取ってくれるのか。

 この額って事は・・・回復草が1本 大銅貨1枚、魔草が1本 大銅貨1枚と銅貨5枚って事か・・・ん?)



『すみません。買い取り価格はこれぐらいが普通なんですか?』



『流通量にもよりますが、大半は採って来た素材の状態に左右されますね。今回は早く適切な採取と保管方法が為されていた為に高額となっています。特に薬草は鮮度を重視するものと乾燥させて使うものとあったりするので一概には言えませんが、今回の薬草の場合、鮮度を重視する部類だった為それが顕著になっているかと思われます。』



『鮮度ってそんなに早く落ちるものなんですか?』



『そうですね・・・概算の話としてですが、今回の魔草でいえば採取した瞬間から魔素が抜けていってしまうので、葉だけで採取した場合だと半日で半額、1日だと買い取り不可。マサルさんの様に根から採取した場合でも1日で半額、それぞれ時間経過と共に査定価格が落ちる事になります。』



(あー。それでモーラさんに買い取って貰った薬草はあんなに安くなってしまったのか・・・。

 キャベルからエレナまで馬車で1日の距離だったしな・・・。)



 村からの出立の際、手持ちの山菜や薬草の類はガブスさんから受取を固辞されてしまったので、モーラさんに買い取って貰ったのだが、最初にガブスさんから言われていた通り、かなり安い買い取り額だったのだが、合点がいった。



『・・・確かに、ありがとうございます。』



『いえ、こちらこそ状態のいい素材の納品をありがとうございます。これからも無理のない範囲で頑張って下さいね。』



 そう笑顔でノエルさんに応援され、思ったより高い買い取り額と合わさり、幸先の良い冒険者稼業のスタートを満喫していると、



『説明と手続きは終わったな?なら訓練場に行くぞ!』



 と、半ば存在を忘れかけていたドールさんに後ろから肩を掴まれ声を掛けられた。



『えっ!?く、訓練場?何で訓練場に行くんですか?』



『そりゃお前の戦闘技術をまだ確認して無いからな。』



『いやー、戦闘技術は“採取限定”には関係無いんですよね!?』



『冒険者たるもの、いつ魔物と遭遇したり、戦闘に巻き込まれたりするか分からんからな!

 戦闘技術があって困る事は無かろう?』



『そ、それはそうですが・・・。』



『ではいくぞ!』



 “元”とはいえ流石A級。所謂スリーパーホールドの形に片腕を回されただけでロックも掛けられていないのに解けない・・・。




 ・・・どれだけ足掻いても取れないので、もうそのまま諦めて引きずられる様に連れられて行く・・・。




 ―――♪ ドナ ドナ ドーナー ドーナー ♪―――

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