第46話 意外と“ちゃっちい”なあ・・・
いきなりの展開に戸惑っていると、ノエルさんが色々教えてくれた。
『いきなりでビックリしますよね?すみません。“試験官”とドールさんを紹介しつつ、実は適性認定にはギルドの適正認定官の承認も必要なんです。』
そういって説明してくれたのは、まあどれも納得出来るものだった。
ギルドとしても冒険者の数は増やしたいが、お上の意向により登録には暗黙で年齢制限が掛けられているし、かといって無理をして年端もいかない子供を無暗に死地へ送る様なマネも出来ないので、そういう意味でも割と厳し目な試験を用意して、ふるいに掛けているのだそうだ。
何せ魔物や、ヘタをすれば野生動物相手ですら人死が起り易い、自身の攻撃力を試験の合格基準に加味しない“採取”の適性試験は、その中でも群を抜いて難しいらしい。
どれ程かといえば、ここ10年は合格者が出ていないといえば分かり易いかもしれない。
そんな“採取”の適性試験で一番重要視されるのが、危険に対する事前予防と対処処置である。
ギルドで依頼を受ける時と、受けた後、事前情報にてどこにリスクがあり、どうすればそのリスクを低減出来るか。
またはその事前策を講じた上で尚、危険が迫った場合にどう対処するか、その為の準備が出来ているかなど、要は「段取り8分」が実地出来ているか?という事だった。
(イエールさんの教えはここでも通用するんだな。まあ元から慣れていたのもあるが、まさかブルーワーカー時代の“
『町から近いあの森では、そこまで不測の事態が起きる可能性は高くは無いと思いますが、事前に採取素材の情報を聞く人は居ても、マサルさんの様にそこに生息する動物、魔物、危険情報などもしっかり調べる方は少ないんですよ。もちろんある程度 経験を積まれたり、一流と呼ばれる冒険者の方達の様になれば当り前の事なんですけど・・・。』
と、ノエルさんは困った様な顔をしながら教えてくれた。するとドールさんも、
『冒険者になろうってヤツは、少なからず腕っ節に自信があるヤツか、他に取り柄の無い家督を継げない“2番目”以降が多いからな。お前みたいにしっかり“教育”を受けたヤツはそもそも冒険者になろうとはしないんだよ。
・・・まあ冒険者は互いに詮索しないのが暗黙のルールだから訊きはしないがな。』
そうは言いながらもこちらの様子を伺うように見てくる。
・・・おっさんがジト目で見んじゃねーよ・・・
『で、では俺は冒険者になれるって事で良いんですか?』
『はい。適性試験の事もご存知だったのでご承知かと思いますが、ギルドから受注出来る依頼に制限を受けるものの、冒険者として登録可能です。』
(良かったー。これでとりあえず仕事にはありつけたか・・・。)
『ではこのまま登録手続きに入らさせて頂きますが宜しかったですか?』
『はい、お願いします。』
必要事項は試験の申し込みの際に書いたもので賄えるそうなので、そのまま登録出来るらしい。
しばらくすると、奥に処理に行っていたノエルさんが戻って来た。
『お待たせしました。これがマサルさんの冒険者証です。』
そう言って渡されたのは、所謂ドッグタグの様なものだった。
革紐のストラップ部分の先にトッププレートに当たるタグは木で出来ており、表面には名前と“採取限定”の文字が刻まれていた。
(意外と“ちゃっちい”なあ・・・。これなら自作してもバレねーんじゃ・・・。)
などと考えていると、それを見透かしたかの様に、
『その冒険者証はただの木の板で出来ている訳では無く、ギルドの登録用魔導具で管理されたものになっていますので、くれぐれも無くさない様にお願いします。
依頼受注の際はこの冒険者証を提出して頂き、魔導具に掛け依頼の内容や受注状況、達成条件などを登録します。依頼達成時には証明となるものと合わせて再度提出して頂き完了の登録をして終了となります。
これにより、過去の失敗や達成履歴等も蓄積されていきます。
魔導具は各地のギルドにも置かれ、相互に連携されていますので、受注したギルドにて必ずしも完了報告をしなければならない、という事はありません。
ここまでは宜しかったですか?』
『は、はい。』
捲くし立てられながらも、とりあえず複製が不可能という事は分かった。
そして尚も、
『では、続いてギルド内の冒険者ランクについて説明させて頂きます―――。』
ノエルさんの怒涛の攻めに圧倒されながらも、別の感情がフツフツと湧きあがる・・・。
・・・んー、キライじゃない!・・・
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