第45話 おい背後霊!仕事しろよっ!

 ギルドへと戻りカウンターへ向かおうとすると、朝の人混みはウソの様に中はガランとしていた。

 列も無かったので、いつもの受付嬢へと向かい依頼報告をしようとしたら、



『あれ?マサルさん、まだ採取に行かれていなかったんですか?』



 先に声を掛けられたが、ここでいよいよ「やってしまった」感に拍車が掛かる。


 ドールさんの採取後の反応と、その後の対応で何となく感じていたが、既に“裏”に証人がいる為に誤魔化しは効かないので、正直に受付嬢へ告白する。



『えっと・・・採って来ました。』



『え?・・・あっ!もともと持っていたモノは・・・。』



 そう言って俺の裏にいる背後霊のオッサンに目線を移す受付嬢だが、



『いや、元A級冒険者の名に掛けて虚偽は無いと誓う。』



 と、オッサンは言いながら首を横に振っていた。



(っていうか、元A級って凄いんじゃないの!?)


 などと思っていたら、受付嬢が慌てだした。



『えぇっ!?だってまだお昼の鐘はおろか、朝の鐘からもそんなに経っていないですよ!?』



 こういう時、30も中盤を過ぎた精神は揺るがなくていいよねー。

 もう、どうしようも無いものを慌ててもしょうが無いもんねー。


 などと開き直っていると、



『とりあえず!採取したものを見せて頂いて宜しいですか?』



 と、受付嬢がカウンターから身を乗り出し、鼻先スレスレで詰問された。

 ・・・可愛いお顔が目の前に・・・ドキドキ・・・ちょっと!押すなよっ!押すなよっ!ゼッタイ押すなよ?・・・おい背後霊!仕事しろよっ!・・・。



『・・・はい、これです。』



 千載一遇のチャンスを逃し、恨みがましい目を裏へ向けながら採って来た素材を袋ごと渡す。・・・あぁ・・・お顔が遠のいて行く・・・。



『!?これは・・・。』



 受け取った袋を見て何かを感じ、中を見て声を発した受付嬢はそのまま俺の後ろへと視線を飛ばす。



『あぁ。準備から採取、森での立ち回りまで全て見ていた。』



(なに?この二人だけ分かるやり取り・・・。デキてんの?リア充なの?爆ぜるの?)


 先程のハッピー桃色タイムから急転、人生真っ暗灰色タイムへと落とされた気分だった。



『では、問題無いという事で宜しかったですか?』




『ああ。試験官ドールはマサルの採取適性に問題が無い事を証明する。』




『では私、ギルド適性認定官ノエルもマサルさんの採取素材に問題が無い事を証明します。』



 2人共いきなり、そう宣言したかと思うと受付嬢・・・ノエルさんと言ったか。

 が、用意した羊皮紙の様なものにサインをしだした。



『はい。ではこれで、マサルさんの冒険者の採取適性試験は合格となりました。』



 そう笑顔でノエルさんに告白されたのだった。

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