第44話 ガンガンいこうぜ
受付嬢に道具屋を教えて貰い、早速向かう事にする。
ギルドを出て、割と近くにある店舗は冒険者御用達の様で、こんなに朝早くとも既に店は開いていて、客と見られる冒険者の姿もあった。
店に入り目当ての商品を探す。
回復草と魔草はイエールさんからも教えて貰っており、現物も見た事があるので問題ないとは思うが、採取には道具が必要だった。
それは何もこの二つに限った事では無いが、採取に際し入れ物や纏めるもの、切るものはナイフで賄うとしても、鮮度を維持する為や、そもそも根に効能があるものも存在するので、根から掘り起こすのにスコップの様な物も必要だった。
・・・そういえばスコップvsシャベル論争はテレビ番組でも流行ったものだ・・・因みに今回は園芸用の小さい物の方を探す。
(とりあえず、あの二つなら掘るのにスコップと束ねるのに紐と、あとは小分けの入れ物か・・・。)
魔草は、魔素を含んだ薬草なので他に影響を与えない様に別の入れ物に保管するのがセオリーだった。
(あとは・・・あれは!)
最後に見つけた商品を店主に確認し、他の欲しいものも伝えると揃えてくれた。
『―――以上で、銀貨1枚と大銅貨9枚と銅貨5枚になります。』
『・・・はい、これで。』
いよいよ財布の中が寂しくなってきた事に焦りを感じだす。
ガブスさんに教えて貰ったこの世界の通貨はこんな感じ
銅貨 ⇒ 大銅貨 ⇒ 銀貨 ⇒ 大銀貨 ⇒ 金貨 ⇒ 大金貨 ⇒ 白金貨 ⇒ 大白金貨
と、10枚単位で上がっていくらしい。
ガブスさんも大金貨以上は見た事が無いと言っていたが、今日までの見聞きした物価を換算するに、銅貨から銀貨までが大体 日本円で10円から1000円くらい相当だろうか?
そう考えると、1泊2食付きで2000円は十分安かったのでは無いだろうか?
・・・でもなー・・・毎食あれはなー・・・。
そんな事を考えつつ、会計を済まし道具屋を後にして町の外へと出るため門へと向かう。
門の出入り時に、最初に渡された割符を見せれば6日=1週間は再徴税はされないらしい。
まあ、また町へ入る時には犯罪歴を調べる魔導具を受けなければならないのは決まりなのだが・・・。
問題も無く門も通り薬草の生息地として、これも受付嬢に教えて貰った近くの森へと向かう。
・・・いや、問題はあった・・・後ろに・・・。
10歳の子供が一人で町の外へ出て行く・・・その後を付いて来るオジサン・・・。
現代であれば即、お役所や学校へ連絡が入り、保護者へ注意喚起のメールが一斉送信され、ツートンカラーの車が見回りに現れてしまう様な状況である。
少し落ち着かない気持もありつつ、森へと到着する。
森へ入る前に足元の草を適当に千切り、上へ放り投げる。
これもイエールさんから教わった方法で、村の近くの森であれば余程そんな大物と遭遇する事は無いが、狩人としてそんな自分の力量を超える大物と遭遇しない為にも、また狙う獲物に察知され難くする為にも、風下から森へ入る事は基本だった。
ただ密集した木々の所為で森の外ほどキレイに風上、風下が中では分れていないので、常に風向きに気を配り続ける事が重要だと教えられた。
風は丁度、森からこちらへ吹いている様なのでこのまま入る事にする。
入口近くにて回復草と魔草を思い描き、“探査”を掛ける。すると視界に淡く光が表れたので、そのまま“目”を意識すると難無く目的の素材を見付ける事に成功した。
見つけた薬草を手早く掘り起こし、10本を1束で紐で括ると用意した袋へと仕舞う。
薬草は群生している事が多いが、この時全て採ってしまわない事が重要だと教えられた。
それをサクサクこなし、あっという間に終わらせる。
仕事も終わりと町へ帰ろうとすると、既に俺の中では空気と化していたドールさんが話し掛けてきた。
『も、もう終わったのか?』
『えっ!?は、はい。』
突然、空気に話し掛けられて、キョドる中身がオッサンの俺。
・・・おっさんがオッサン脅かせて誰得だよ・・・。
『・・・もしや何か福音を聞いているのか?・・・いや、こんな子供が?・・・』
口に手を当て、何やら小声でブツブツ言っているが聞き取れない。
・・・フツーに怖いんですけど・・・。
『あの・・・。』
俺がそう声を掛けると、やっと我に帰ったのか『いや、終わったのならいい。』と切られてしまったので、気にはなったものの町へ帰る事にした。
・・・帰りの方がもっと怪しかった・・・。
行きの時より近づき、こちらを観察する様に真後ろを一定の距離で付いて来る様は、某RPGを彷彿とさせた。
・・・ぜひ命令は「ガンガンいこうぜ」にしたい所である・・・。
門を通る時、衛士や通行人の方達の衆目を集めたのは言うまでも無い。
・・・門番に突き出そうかな?・・・。
・・・このおじさん変なんです!・・・
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