第43話 脳筋かと思ったら中々鋭いじゃねーか・・・

 しばらくすると、受付嬢が一人の男性を伴って戻って来た。



『マサルさん、お待たせしました。こちらが今回の試験官をして頂くドールさんです。』



『ドールだ。』



『はじめまして、マサルです。宜しくお願いします。』



 そういって紹介されたのは、40代くらいのナイスミドルな男性で、質の良さそうな軽鎧を身に着け、隙間から見える筋肉とその年を感じさせない引き締まった身体はまるでアスリートの様だった。

 目元の小じわと不精髭、地毛なのかロマンスグレーの髪をオールバックに流した姿は、ひと昔前に流行ったチョイ悪オヤジを連想させた。



『採取の試験だったか。誰かに教えて貰ってたのか?』



『はい、キャベルという村で狩人として教わってました。』



『キャベルっていうと、マシールんトコの坊主か?』



『イエールさんを知っているんですか?』



『ああ、まあな。昔、冒険者だった時に村へ行った事があって、そん時 狩りに付いて行ったんだがアイツの弓の腕前と素材の見付ける正確さには驚いた覚えがある。

 息子の方はまだ小さかったが、アイツの息子ならそれなりの狩人になってそうだな。』



『そうですね、イエールさんも弓の腕前は相当だと思います。』



『そうか。で、その弟子が使用武器にも弓を書いてはいるが“狩猟”じゃなく“採取”で申請してるのは?』



『え、えっと・・・一応、狩人として合格は貰えたんですが、弓の方はまだ発展途上と言いますか・・・。』



(おぉふ。冒険者でその風貌から脳筋かと思ったら中々鋭いじゃねーか・・・。)


 少しシドロモドロしながら答えると、



『・・・そうか。まあ見れば分るか。』



 と、話を切った。

 すると、様子を伺っていた受付嬢が後を引き継ぎ、



『では、顔合わせも済んだ事ですし、試験の概要を説明させて頂きます。』



 そう言って話された内容は、まとめるとこんな感じ。



 これからドールさんを伴って薬草の採取をしてくる、というもの。

 試験官からの助力を一切受けず、指定された素材を採取して来れればいいらしい。


 そして依頼された薬草が“回復草”と“魔草”というものなのだが、これは特に冒険者が多くお世話になっている物で、回復草は体力、魔草は魔力を回復させる薬の原料となるもので、これらを5束づつ採取して来ればいいとの事。



『以上が試験の内容となりますが、宜しいですか? 』



『はい、分かりました。あと質問があるんですが良いですか?』



『はいなんでしょう?』



『実は、昨日この町へ来たばかりで採取の道具もまだ揃えられてないんですが、先に準備をして来ても良いですか?』



『それは構いませんよ。寧ろ受けた依頼に対して、適切な準備が出来るかも判断致しますので、その準備にも試験官が同行致します。』




『ああ、なるほど。ではすみませんが、道具屋の場所を教えて貰っても・・・』




 こうして美人受付嬢を差し置いて、偉丈夫とのデートが先に決まったのだった。

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