第39話 一抹の不安がよぎる

『適性試験ですか?』



 そう、この“適性試験”が俺が冒険者に成りえる唯一の可能性なのだ。



 ガブスさんやモーラさん、衛士のカルスさんが止めなかった理由。

 ガブスさんに至っては、この案を出した張本人なのだが・・・。


 いくら年齢制限の無い冒険者と言っても、登録させるだけのメリットが無ければしてくれないのだ。

 それは入町税などの“冒険者”への優遇を見ても分かる様に、誰でも登録されては施政者としても困る訳で、その為“ギルド”への優遇も計らう代わりに登録者の選別をギルド側で行う事で、冒険者の質の低下防止と脱税の抜け道をカバーしている様だ。


 まあいくらでもやり様はありそうだが、そのため形式上、年齢制限は無しとは言っても、他と変わらず14~15歳以下は通常、登録は受け付けて貰えないらしい。


 因みに、一定の年齢以上で登録は可能だが、やはり適性や力量が無ければ依頼が達成出来ないので、そういう者達は数度のペナルティの後、ギルドを退会させられ自然と淘汰されていく、という仕組みになっているみたい。



 戻って、



 その年齢により登録を拒否される場合、例外として“適性の証明”が出来たら登録して貰えて、その“証明”が“適性試験”というものに繋がるらしい。



『分りました。でも今日はもう試験は出来ませんので明日・・・朝の鐘が鳴る頃にまたお越し下さい。それと、受験料として銀貨1枚が必要になりますので、こちらもお忘れなくお願い致します。』



『分りました。宜しくお願いします。』



(仕事モードの女の子・・・さっきの姿とのギャップがまた良いんだよなー。

 試験も受けられそうだし、、可愛い娘にも会えたし、幸先良いんじゃな・・・あっ!)



『すみません。一つ訊きたい事が・・・』



『はい、なんでしょうか?』



『・・・どこかオススメの宿ってあります?』




 ・・・初の野宿が町の中になりそうな事に、一抹の不安がよぎるのであった・・・。

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