第31話 こういうのは王道こそが正道なのだ!

 解体作業の合間にもちょこちょこ抜けていたが、どうやら晩御飯の用意をしてくれていたガブスさん。今はみんな家の中へと入り、夕飯の仕上げ待ち。



『あとはこれを焼くだけで終わりだから座って待っていてくれ。』



 そう言われ席を勧められる。言った当人のガブスさんを見れば、丁度これから焼くであろう厚めの肉を用意していた。あれがそうかと、そのまま鑑定をしてみる。




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 名称:イノシシの肉

 説明:食肉。脂が甘く、赤身はしっとりしている。

 

 状態:新鮮。要加熱

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 地球でも噂は聞いた事がある。


 曰く、『脂の旨さは別格』や『甘くとろける』など、評価の高いコメントに事欠かない反面、やはり獣臭さに賛否が出たりする、まさにジビエの王道。


“向こう”では興味はあれどついに食べる機会は得られなかったが、巡り巡ってこんなカタチで食べる事になろうとは・・・。


 ・・・まあさんざん言うても、ウサギはほぼ毎食食べてるんですけど・・・。



(いや、こういうのは王道こそが正道なのだ!)



 そう自分に言い聞かせ、初イノシシに期待を膨らませる。



 肉を焼いている間に、出来上がっていたもう一品を先に出してくれるガブスさん。



『焼きあがるのにもう少し掛かるから、こっちを先に食べててくれるかい。』



 そういって出されたのは、いわゆる汁物。・・・これも出来るのか?と、鑑定してみる。




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 名称:イノシシ肉と野菜のスープ

 説明:味付けは塩のみ。脂が溶け出しコクと旨味が増したスープ。


 状態:熱い

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 ・・・出来たけど、なんか食リポみたいな説明になってきてるし・・・。


 まあいいかと、早速実食。



(・・・まさに説明通り。鑑定先生、っパないッス。ただ、食べる前にハードル置かれるのは、高くても低くてもジャマだわー。集中出来んわー。)



 美味いのに、ホントに美味いのに言葉にしようとすれば、その説明書きと同じ様な事しか思い浮かばない自分の語彙力の無さに、寂しさを感じてしまう・・・。



(次は絶対先に見ない!)



 そう心に決めていると、ガブスさんが、



『お待たせ。焼き上がったよ。』



 そう言って机の上に焼けた肉が盛られた器を置いた。



 食べ易くする為か、先程見た時より幾分か小さく切り分けられた形になっており、その断面からは肉汁が溢れている。肉の外縁部にあたる脂身からは肉の焼けた香ばしさの中に、ほのかに甘い香りも感じる。

火が入り透明感を増したそれは、口に入れた瞬間にトロけそうなプルプル感と、脂でテカテカした輝きに包まれており、それが食欲をより一層に駆り立てた。




 思わず口内によだれが湧きだすのを感じる。




 ガブスさんも席につき満面の笑みで、





『さあ!おあがりよ!』






 ちょっと黙ってて!・・・今はそのタイミングじゃない・・・

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