第26話 5W1Hは、やはり理にかなっていたのか・・・
何故そうなった?
いきなりの問い掛けに何を言っているのか話の辻褄が合わない。・・・5W1Hは、やはり理にかなっていたのか・・・
商人ならば是非、体得しておいて欲しかったが今は置いとく。
『俺が貴族ですか?』
とりあえず意味が分らないので聞いとく。
『はい。貴族またはそれに準ずる御家の方ではないのですか?』
『まさかっ!違いますよ!いきなり何でそんな話になるんですか?』
『そうなんですか?いえ、香辛料・・・特に胡椒の存在は一般人には秘匿とされている事でして・・・。これを知っているのは生産者と一部の商人、そして貴族階級の方達だけなのです。』
(ええー?胡椒ってそんなに秘匿性の高いものなの!?・・・いや、まさか俺の知っているモノと違うのか?)
『すみません、俺の知っているものと違うのかも知れません。俺が知っているのはこれぐらいの実で食べると辛みを感じるものなんですが・・・。』
そういって人差し指と親指をつまむ様に見せ、大きさを分る様に説明する。
『それです。』
はい!ジト目、頂きましたー。・・・男にされても何も萌えんわー。
(まあ分かってた。香辛料の胡椒でどこに違いが出るのかと・・・。では、)
『えっと・・・。何で秘匿とされているんですかね?』
分らないものは素直に聞くのが一番。
『そうですね・・・。ここまでお話してしまいましたし、他言無用でお願いしたいのですが・・・。』
と続けられて説明されたのは、まあ言われてみればそれもそうかといった内容だった。
曰く、昔の地球と同じくその希少性により需要が供給を上回っている様で他者への流出を防ぐ為、生産者の囲い込みと商社の認可制、そして市井への緘口令の徹底をしているとの事。はい、つまり王家主導の独占事業です。ありがとうございました。
もう会った事も無いけど王家敵だわー。確定だわー。滅べばいいわー。
現実逃避から戻り、
『そういう事ですか・・・。つまり一般的には知られていない筈なのに知っていたので、貴族の可能性に至ったと・・・。』
『ええ。私も噂でしか聞いた事がありませんが、生産者も隔離に近い状態のようで、
おいそれとその土地から出る事が出来ないみたいなんです。代わりにかなりの厚遇を受けられるようですが・・・。』
(まあこの見た目で商人も無いだろうし、消去法でいけばそうなるわな。)
そこでふと、ある事に気付く。
『ガブスさん。今の話・・・。』
完全に空気だった人を思い出し、様子を伺うと、
『ああ、初めて聞いたよ。』
(やっぱりパンピーには知られてないのか・・・。!?んっ!?もしかして・・・)
『モーラさん。ちなみにこの事を口外すると・・・。』
『はい、極刑です。』
どこか諦めた様な雰囲気で苦笑いを溢し、モーラさんが答える。
(やっちまったー!迂闊だった。もしこの村からその話が漏れたと分かれば出入りしている商人のモーラさんは一番に疑われるだろうし、何よりガブスさんは何も知らなかったのに要らんもんを背負わせてしまった・・・。)
自分の所為で親しい人や少なからず関わり合った人に危険を及ぼしてしまう様な事態になり自責の念に駆られる。
『俺が余計な事を聞いたばかりにすみません。』
謝って済む問題ではないが、他にお詫びのしようも無い。誠心誠意謝っていると、
『いえ、私も迂闊でした。もう少しお聞きしてから確認すれば良かったのですが・・・。』
モーラさんも申し訳なさそうに頭を下げているが、今回は完全に俺が甘かった。
地球でも昔は金と同等の価値があったようだし、それに権力者が目を付けるのは当然だろう。
つまり、俺が“それ”をこの村で口にした時点でアウトだったのだ。
俺とモーラさんが沈んだ面持ちでいるとガブスさんが、
『私は何も聞いていないし、モーラもマサルも何も話してない。今日は買い取りをお願いした、それだけだよ。』
さすが年長者。堂に入る風体に大人の余裕を感じてしまう。
正直、一番の被害者はガブスさんだと思うので彼がそう言ってくれるのなら少し気が楽になるのは本音のところだ。
モーラさんも同じことを思ったのか先程より幾分か顔色も良くなった気がする。
思わぬ事故のような出来事に少し落ち着きを取り戻して、話しも終わりと、引き上げる事にしたのだが、
『モーラさん、色々とありがとうございました。』
『いえ、こちらこそ良い素材をありがとうございます。また手に余る様でしたら是非お売り下さい。』
挨拶も終え帰路に差し掛かったところで、ガブスさんが話し掛けてきた。
『マサル・・・ところでコショウって何だ?』
・・・良く分んないまま、話に乗っちゃう事ってあるよねー・・・。
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