第23話 イケメンは やる事もイケメンだぜ・・・

 手伝いもまだ途中だった為、半乾きではあるが着れるぐらいになった服を無理やり着て村へと帰る。

 村に着くと人が集まっている建物が目に入った。


(あれ?あそこは空き家じゃなかったのか?)


 流石に全てとは言わないが、人が住んでいる家かどうか何となくここ数日で分かっていたつもりだったがどうやら違ったらしい。

 帰路のままその建物に近づくと、


『マサル、戻ったのか?』


 ガブスさんもこの集りに居たらしく俺を見つけて声を掛けてきた。


『戻りました。すみません、遅くなりました。』


『いやいいさ。それより水浴びでもしてたのか?』


 まだ乾いていない髪を見てか直ぐにバレたようだ。苦笑いを返し誤魔化しておく。


『それより丁度良かった。近くの町から商人が来たとこなんだ。』


『商人ですか?』


『ああ。村で得られるモノも限られているからね、定期的に来て貰える様にお願いしてるんだ。』


(なるほど、それもそうか。何でもかんでも自給自足や、まして不定期の物流に命を賭けるのは無茶な話だしな。)


 そんな事を考えつつ、用がありそうな雰囲気のガブスさんにお問い合わせ。


『丁度良かったというのは俺に何か関係が?』


『ああ。マサルが採ってきた素材を売ってはどうかと思ってね。』


『?わざわざ確認して貰わなくても売ってもらって良いですが。』


『いや、そういう訳にはいかないさ。あれはマサルが採って来たものだからな。』


(此方としては居候の身の上、少しでも何かの足しになればと思って採って来たものだから、渡した後は食べようが売ろうが好きに使って貰って構わないのに。)


 思わぬ解釈の違いにどうしたものかと悩むも、頑として変わらなそうなガブスさんを見てこちらが折れる。


『どれを買い取って貰えば良いですかね?』


 こちらが折れた事に満足したのかガブスさんは笑顔になり、


『山菜や薬草はそこまで高くはないが採って来たものはあの量ならどれも買い取ってくれるだろう。あとは動物の皮かな?』


『あれは俺ではなくイエールさんが獲ったものなので俺が決める訳には・・・。』


『イエールからは、半分はマサルのものだから好きにしてくれと預かっているよ。』


 止めを刺したのは全部イエールさんなのに・・・イケメンは やる事もイケメンだぜ・・・。

 肉は村のみんなで分けたのでもう残っていないが皮は使い道があるからと取ってあったのだ。

 自分の食糧としてもそうだが、いくら村長が決めた事とはいえ見ず知らずの子供を引き取る事に反感を覚える人も居るかもしれないと思い、所謂、袖の下というヤツである。

 その辺はイエールさんも知ってか知らずか、俺が獲物を発見しそれを足らず余らず絶妙な量で仕留めてくれた。必要な量を獲れた日は早くとも狩りを切り上げ、少なければもう少し・・・という具合に、捕獲量の調整までやっている節があり頭が下がりっぱなしです。はい。

 なので皮も半分とはいえソコソコの量がある筈なのだが、



『皮も村の中で使って貰えるのであればそれで構いませんが。』


『そう言って貰えるのはありがたいんだが、冬毛であれば防寒着として欲しがる者も居るとは思うが、この時期はもう生え変わりでね・・・。』


『そうだったんですか・・・。』



(こればかりはしょうがない。お近づきの印として使えないのであれば他に使い道も思い浮かばないし、元より自分で獲ったモノでも無いしな。)



『では、皮を全て買い取って貰おうかと思います。』


『分かった。では1度家に取りに帰ろうか。後で私から商人を紹介しよう』



 そういって一緒に家に帰るのだった。

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