第22話 濡れたパンツキモチワルイヨ・・・
畑用に川から引かれた貯め池にて行水を行う。
あの川と変わらずキレイで冬の冷たさを残すその水にも惑わされる事無く、無心になり服も脱いで一緒に洗う。一通り洗い終わり絞った服は土手に並べ干しておく・・・が、さすがにヌーディストはマズいと下着だけは履き直す。
『よし!何か新しいスキルが手に入ったらしい!』
あえて声に出し気持ちにリセットを掛ける。・・・濡れたパンツキモチワルイヨ・・・
さて、思い返して新しく取得したスキルについて考えてみる。
“腕力強化”と“脚力強化”だったか・・・
さしずめ“目”は“視力強化”かと思ったが、先程の一件でただ遠く見るだけではなく動体視力も上がっているのだとしたら“視覚強化”といった感じだろうか?とすれば“耳”は“聴覚強化”と。
取得出来たタイミング的に各々使った直後だった事を鑑みるに、取得条件としてやはりある程度の経験が必要な事はこの世界に住む人達と変わりない様だが、程度の度合いには大きな開きが在る様に思える。
(やっぱり俺がスキルを取得する上でその経験値が少なく済むのは間違いなさそうだな。何でか分らないのはモヤモヤするが・・・まあそこを気にしたら“最初”からか・・・。)
と根本がこの世界の住人では無いのだからとありのままをとりあえず受け入れていく事にする。
まあ、あるものは上手く使ってナンボだろと思い、服が乾くまで使い方の練習をする事にする。そうは言ってもパンイチで走り回るにも、鍬を振り回す訳にもいかないので結局は狩りでも良く使っている“目”と“耳”の練習になるのだが、さっきの“目”の様に普段の使い方以外で性能を発揮する可能性もあるので色々試す価値はあるように思う。
とりあえず集中し、“目”と“耳”を研ぎ澄ます。
色々ともたらされる情報の中で気になるものがあった。
それは人の話し声。たぶん村人であろう2人組の会話なのだが、ふいに聞こえたその会話の中に自分の名前が出て来たので気になってしまったのだ。盗み聞きのようで・・・ホントに盗み聞きなのだが、少し悪い気はしたが、自身がこの村でどのように思われているのか好奇心に負けてしまい、つい聞き続けてしまった。
『それにしてもマサルだったか?村長んトコで面倒みてる子供。』
『ああ。最初は記憶が無いって話しだったからどうなるもんかと思ったが・・・。』
『ホントにな!畑も狩りも一生懸命だし、いい子じゃねーか。』
『まったくだ。ウチのガキにも見習わせたいもんだ。』
『ははっ!ちげ-ねぇや!』
『しかし、村長も少し元気になって来たんじゃないか?』
『ああ。あんなに楽しそうな様子は久しく見てなかったな・・・。』
『あれからどんだけ経つんだっけか?』
『もうずいぶん経つさ。だが村長の中ではずっと止まったままだったんだろうな。』
『確かに、ダラスが死んでからあんなに笑う事は無かったからな・・・。』
『一人息子だったからな、なおさら堪えたに違いねぇ。』
『奥さんもダラス産んで直ぐだったしな・・・殊更可愛かった筈さ。』
『ちょうどマサルと同じくらいの時か・・・魔物に・・・なんてのは良くある話だが・・・。』
『余計に重なって見えちまうのかもしれねーな・・・』
・・・やっぱりあまり聞いて良い話しでは無かったようだ。
(盗み聞きするんじゃ無かったな・・・。まあ何でこんな怪しげな子供を引き取ったのかとか、何で子ども服を持ってたのかとか色々気にはなっていたが・・・)
自分には子供は居なかったが、肉親の突然の別れの辛さは分るつもりだ。
なんともいえない寂しさと、もどかしさに少し気持ちも沈んでしまう。
(俺が来てから楽しそうだって言ってたし、何も知らない筈の俺が変に気を使うのも違うからな・・・。)
そう思うと、自分が助けて貰った恩返しではないが代わりに何かしてあげられる事はないかと思い、土手に干してあるまだ匂いの取れてない服をみて、もう一度きれいに洗い直すのであった。
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