第19話 どれがどれだかこんがらがっちゃって・・・
自分の福音についてイエールさんに教えて貰ってから、より効果的かつ効率的な“目”の運用方法も併せて教わっていた。狩猟に関しては、ただ“目”が良くなっただけでバシバシ獲物が取れるほど甘くはないのだが、採取に関しては中々の優秀さを垣間見た。
山菜や薬草、この時期ではまだ無いが果実など発見がそのまま収穫に繋がるものにはすこぶる相性が良いのだ。イエールさんのお父さんも相当に優秀だった様だが、単に狩りだけでなく採取に於いても秀でていたであろう事は想像に難くない。
ただ問題はその“見分け”だけである。果実も野菜と同じく地球と似た様な種類があるとすればまだ良い。大半の果実は色味があり木の葉や草とまだ区別がつくが、山菜やまして薬草などもう違いが分らない。なので優秀さを垣間見ただけに留まっているのだが・・・今はまだその見分けの講習段階。
自生に好む環境からこの時期であれば何がどこで採れるといった経験則まで、参考書の無いであろう世界に於いて一つの財産に成りうる情報を惜しげもなくイエールさんは教えてくれた。
『――と、まあこんな具合に採れる時期が限られたモノから一年中採れるモノまで色々あるわけだ。』
『なるほど・・・。わかりました・・・。』
『あとはまあ、実物を見ながら覚えていくしかねーんだけどな。』
『そうですね・・・。少しづつ覚えていきます・・・。』
もうね、教えてくれるのはありがたいんだけど、ホントにありがたいんだけど、もう覚える事が多すぎてどれがどれだかこんがらがっちゃって・・・。
一応、イエールさんも覚える事の大変さを分かってか、今採取出来るモノを中心に自生環境の特徴を先に教えてくれてから俺にその場所を探させ、実際にその場所へ移動して採取するモノの特徴を教えてもらい、そのヒントを元に俺が探すという一連のプロセスに則った方法で教えてくれていたのだが、一朝一夕に出来る様なものではなさそうだ。
『まあこればっかりは経験だな。採取だけで森に入る事はそうそう無いだろうし、狩りの途中で見つけるには慣れが必要だからな。』
そう言いながらイエールさんも通って来た道なのか、その大変さに苦笑いを溢していた。
その後も“目”を使った狩りの合間に山菜や薬草の採取の練習を続けていたが、イエールさんに相談出来ないので“耳”に関しては自分で色々試していた。それこそイエールさんが言っていた狩りの獲物を探す時には意識して“目”と“耳”を併用していたのだが、
(確か、日当たりのいい場所に生えてるって言ってたっけ。あっ!今草むらを跳ねる音がしたぞ!ん?あそこに見えるのは足跡か?)
と、“目”で見える情報に“耳”で聞こえる情報が合わさり情報過多になりながらも必要な情報だけを抜き取り整理しながら探していると突然、
『スキル:探査を取得しました』
白い世界で聞いた以来の、あの無機質な“声”が聞こえてきたのだった。
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