第12話 慣れなきゃいけねーな・・・
夕暮れ少し前、ガブスさんと並び村へ帰る途中、こちらへ向かう人影と呼ぶ声が聞こえてきた。
『ガブスさーん!』
イエールさんがこちらに向かい歩いて来ていた。
『今日はもう畑は終わりですか?』
『ああ。マサルが頑張ってくれたお陰で今日中に終われたよ。明日には種まき出来そうだ。』
嬉しそうに話すガブスさんを見て頑張った甲斐があったと、こちらも嬉しくなる。ただ気掛かりなのは、ダルさを感じるこの体が明日には激痛に変わってやしないかという事だけだ。
『そうですか、それは良かった。耕しは大変ですからね、狩りが早めに終わったので手伝いに来たんですけど、終わったのならなによりです。』
『そうか、わざわざすまなかったね。ありがとう。』
『マサルも頑張ったな。疲れただろ?』
こちらに向き直り、その大変さを分かってか意地の悪そうな笑みを浮かべ労いの言葉を掛けてくれるイエールさん。
『はい。でも体を動かすのは楽しかったので大丈夫です。』
俺もつられて確かに感じる疲労感に苦笑いを浮かべてしまう。
『じゃあ今日は頑張ったご褒美に、これでも食って元気だせ!』
そう言って出されたのは、片手に持たれた白い毛の塊・・・ではなくウサギ?
後ろ足を持たれ吊るされた状態のそれは、既に事切れているのか微動だにしない。
反対側でよく見えていなかったが首の部分が赤く染まった白い毛と、たまに落ちる赤い滴に血抜きされたのだと気づく。
(ああ、そうだよな。
慣れなきゃいけねーな・・・。)
地球で普通に生活している人の中で本当に自分の力だけで糧を得ている人はいったいどれだけいるのだろうか。・・・そう思うと同時に声にしていた。
『俺に解体の仕方を教えて下さい!』
いきなりの転生から始まったこの“異世界生活”の中で、日々その場の流れに身を任せてきたが、初めて能動的に動こうと思ったのは、ようやくこの“世界”で生きていくという覚悟を決めた証であった。
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