第11話 嘘です、捨てないでー
村に来てから数日、ガブスさんに連れられ畑にきた。
質素ではあるが毎日食事も出してくれていたのに、特に仕事をする素振りも見えなかったので、どうやって糧を得ているのかと思っていたが、畑があった。
村の外にあるこの畑は、元々あった村の中の畑が足りなくなった為、新たに開拓した場所なんだとか。いまは作物も無くちょうど休耕期だったらしい。
時期といえばこの世界でも季節があり、日付の概念もちゃんとあってこんな感じ。
12か月/年
30日/月
6日/週
・・・つまり、360日/年でほぼ地球と同じだった。
一週間も曜日分けされていて、魔法の属性に習い
光→火→水→地→風→闇 となり、これを繰り返す。
時間も同じ24時間制だったので覚えやすかったが、時を刻む魔導具は高価らしく町規模以上の行政機関で管理された物か、個人では金持ちの部類しか持っていないため、この村には無いそうだ。
そして今は4月の作付け時期だったと。
ガブスさんと一緒に畑を耕す。鍬や鋤を使い一生懸命耕す。一心不乱に耕す。無我夢中で耕す。ガブスさんちょっと引く・・・。
いやいや、流石にタダ飯喰らいは気が引けますもの。自分の食い扶持くらいは働かなければ悪いでしょ・・・嘘です、捨てないでー。
何のバックボーンも無い居候は気を使うのですよ。確かにちょっと取り憑かれたみたいだったけど・・・。
元々体を動かすのは嫌いでは無かったし、農業もこんな本格的にやった事がないので面白かったというのもある。それに鍬を振るう度、振り方や力の掛け方を工夫しながらやっていたら夢中になってしまったのだ。おかげで何となくコツみたいなのが分かってきた。
ガブスさんもあまりの のめり込み具合に心配になったのか、
『あまり無理するなよ。体を壊したら元も子もないぞ。』
『はい。分りました。』
つい夢中になって少し苦笑い。
会ったばかりの人といきなり一緒に生活とか、最初はどうなるかと思ったけど割と良い関係を築けていると思う。・・・まだ数日だけど・・・。
『マサルが頑張ってくれたお陰で、今日中に終わりそうだよ!』
そんな事を笑顔で言われて嬉しくない訳がない。我ながら単純だとは思うが、気分が良いのだから良いではないか。
そんな事を思いつつ、充実感に満ちた額の汗を袖で拭う。
(それにしてもこの服、汗全然吸わないわー。)
自身が着る服を見てしみじみ思う。
元から着ていた喪服はやはりサイズ的、デザイン的に生活するのに支障が出てしまい、どうしたものかと悩んでいたら、ガブスさんが丁度いいサイズの服があると貸してくれたのだ。
(貸してくれたのは良いけど、ガブスさん何でこのサイズの服なんて持ってんだろ?)
明らかに子供用サイズの服や草履は些か気にはなるものの、流石にそこまで込み入った話しを聞くのも憚られるので、その場ではそのまま流したのだ
『よし!耕しも終わったし帰って飯にするか!』
予定より早めに終われた事に少しご機嫌なガブスさんに付いて村へ帰るのだった。
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