第7話 チョウさんは今日森には行ってない

 村の入り口に到着し、今はイケメンの会話の終わり待ち。一応、門らしき固定の出入口からしか中には入れないらしい。入り口には人がいて出入りする人の確認をしているようだ。


 ただ気になるのは、イケメンの話し相手――門番ともいえる人が明らかにお爺ちゃんなのだ。お陰で耳が遠いのか説明に時間が掛っている。




『だから調査に行った森で見つけたんだ!』




『チョウさんは今日森には行ってないぞ?』




 ――耳が遠いとか以前の問題だった・・・。




 何度目かの繰り返しに、イケメンの説明の語尾も幾分か強くなっている気がする。

 そこそこ大きい声を出していたせいか、村の中から人が出てきた。


 門番の人よりかは若く、イケメンより落ち着いた雰囲気の初老の男性がやって来て、こちらを端目にイケメンに声をかけた。


『戻ったのかイエール。大きな声を出してどうした?』


 声を掛けられて気がついたのか、慌てた様子で返事をするイケメンことイエールさん


『ガブスさんっ!ただ今戻りました。』


『あぁご苦労様、無事に戻ってなによりだ。それより入り口で止まってどうした?調査の報告ならすぐに聞くから家に直接来てくれればいいぞ?』


『いえ、同行の説明がうまく伝えれず・・・』


 言葉と共に視線をこちらに向けるイエールさんと、それにつられて同じく視線を向ける初老のガブスさん。・・・一連の問答をお爺ちゃんのせいにしないあたりは流石のイケメン振りである。


『っ!?・・・そうか、で彼は?』


『あの光の近くにいました。一人との事で保護してきました。』


『わかった。ここでは何だし、詳しい話は私の家でしよう。』



 ガブスさんが門番の人に2、3言葉を交わすとこちらに向き直り、ついて来るように言って前を歩き出した。


 ・・・さっきまでの時間はなんだったのか・・・いや、おれは見逃さなかった。

 イエールさんが先ほど悶着の説明をした時に、ガブスさんの目が一瞬泳いだのを。

 そしてお爺ちゃんとのやり取りに察しがついたのだろう、そのあとの少し申し訳なさそうな表情になったことを・・・。

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