第6話 中間管理職はちょっとおセンチな気分
森の中を一人の時より幾分か早いペースで歩く。
先を行くイケメンは警戒を怠っている訳ではなさそうだが、どこを注意すべきか分かっている様な動きだった。
(さすが慣れが違うなぁ。近くの村って言ってたし、森にも良く入るんだろうか?)
感心しながら自分はそこまで注意せず、ただ後を付いていくだけのスタイル。
いや、無理よ。何に注意していいか分からないのに注意を払うって。結局全方位に気を配りながら進まなきゃならない・・・どこの中間管理職なのかと・・・。
・・・実際、中間管理職だったけども・・・みんな○ねばいいのに・・・。
会社での事を思い出し、ちょっとおセンチな気分になってしまった。
そういえばこんなに気を使って貰っているのに、未だに名前すら聞いていない事に気がつく。
社会人の基本である挨拶と自己紹介を忘れるとはっっ!?
・・・まあ記憶喪失の体で名乗りもないか・・・。呼称が必要になったらその時考えよう!
そんな事を考えながらいると、急に前を歩いていたイケメンが立ち止まり、こちらに振り返りながら声をかけてきた。
『村に着いたぞ。』
森はいつの間にか抜け、背の低い木や草が続く先にたしかに人工的な建築物が目に入った。
イケメンを見た時から何となく――正確には着ているもので予想はしていたが・・・どうやらここでもテンプレらしい。
“村”と呼ばれたそれは遠目にみても文明レベルが高そうには見えなかった。
木を縄の様なもので組んで立てているであろう柵に、その格子の隙間から見える建物は屋根が枯れ草で出来ているように見える。櫓らしき見張り台もあるが、そこまで高いものではなくせいぜい中二階程度のよう。
改めてイケメンを見てみれば、麻のような植物繊維で編まれたであろう肌触りなどという軟弱さを一切廃し、丈夫さのみに極振りしたような服を着て、足元にはこれも植物で編まれたであろう草履を履いている。腰にはナイフが提げられ、手には弓、肩には矢筒が掛けられている。・・・イケメンはコスプレしても尊いということか・・・。
こちらの無言に対し、勘違いをしてくれた様で、
『そんなに緊張しなくてもいい。皆いい人ばかりだ。』
と、こちらを気遣う素振りまでみせてくれる。
・・・嘘と失礼な考えに、さすがに良心の呵責にさいなまれそうになる
『はい。』
助けて貰っておいて文明レベル云々などと偉そうになにを言っているのかとすぐに反省し、そう短く返事をするに留めた。
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