終章 偽りの名前と偽りの世界。

16話 全ての真実と本当の名前。

目を覚ますとそこは真っ白な空間だった。


「ここは………神界、か…?」


俺は、辺りを見渡す。どこまでも続く白い空間は明らかに神界だった。


「そうか…俺は、死んだのか。…悪くない死に方だったな…」


「─そうじゃのぅ、なかなかに楽しめたぞ。」


突然声が俺の真後ろから降り掛かる。


「っ!?誰─クリスティーナ…?」


「?どうした?そのような驚いた顔をして…」


俺は、呆気にとられていた。クリスティーナに驚いたわけじゃない。に違和感を覚えたからだ。


「…本当にクリスティーナか…?喋り方が前と違うような気がするが…」


「ん?あぁ、そういうことか…まぁ、妾はからな。」


「…は?」


何を言ってるんだ…?クリスティーナじゃない?それはどういう…


「確かにクリスティーナじゃが、少し、違う。…妾の名は、。創造神とも呼ばれている。」


クリスティーナの言ったことが理解できなかった。そして雪奈の言葉が鮮明に蘇る。


『そして“創造神・ラプチェ・オーディン”に気をつけろ。いいな?じゃぁ─』


「っ!…ラプチェ・オーディン…お前が…?」


「…自分のステータスを見てみろ。」


「…?“ステータスオープン”………っ!?」


俺は、ステータスを開き、驚愕する。


ユウキ・ハルサキ Lv1 種族:人間

HP:250/250

MP:0/0

STR:35

VIT:25

AGI:69

DEX:57

INT:308

MND:65480

LUK:1

属性:不死

スキル:視認学習 不死 言語理解


「ハルサキ、ユウキ…そうだ…俺の名前だ…思い出した…!」


俺は、すべてを思い出す。

そうだ、あの世界は…あの物語は、俺が


「ようやく思い出したか。…どうじゃった?妾が再現した世界は。」


「お前が、再現した…?…っ!そうか…だから雪奈が、あんなことを言ったのか…アイツは気付いてたのか…」


『…お前、“春咲勇気はるさきゆうき”って名前に心当たりはあるか?というか覚えてるか?』


俺は、雪奈の言ったことを思い出す。あの時、俺に聞いたのはあの時点で俺の記憶を思い出させようとしたって事か………………っ!いや、そもそもあの小説に出てくるの雪奈はのはずだ…実際には。だったらなぜ…


「おい、あの時、何で雪奈を呼んだ!」 


「おかしなことを言うのう。妾は呼んでおらん。あの小僧が。」 


「…は?」


勝手に来た…?雪奈が…? 


「普通は入る事が出来ないのに驚いたよ。それに加え、妾の力を一時の間封印したんだからの。」


「…待て、雪奈は?ちゃんと生きてるのか?」


俺は不安になり、ラプチェに訊く。


「知るわけがないだろう?一度戦ったが、小僧は『なんか、もう飽きた』とか言ってどこかに消え去った。」 


「はは…やっぱアイツはアイツだな…。…ところでその喋り方なんとかならないか?少し話しづらい…」

 

俺がそう言うとラプチェは、少し考えるような素振りを見せ、口を開いた。


「これで、大丈夫?」


「っ……あぁ、大丈夫だ。」


俺は、その喋り方に息を呑む。それはメフィアの喋り方に似ていた。というより、それそのものだった。


「さて、なんで、貴方をあの世界に記憶を消して入れたか。あれはただ単に。」


「…は?暇、つぶしだと…?」


「ええ。」


「そんなことの為に俺は99999年もやり直し続けたのか!」


「そうよ?でも気にならない?なんで面識もないはずの神が下等生物の人間にそんなことをしたのか。」


「…?」


ラプチェの話は理解できなかった。なぜ?暇つぶしってさっき言ってたんじゃないのか…?


「違うよ。」


しかし、ラプチェはオレの心を見据えたように否定した。違う、と。


「私は貴方、ユウキに一目惚れしたのよ。」


「一目惚れ?こんな陰キャブサイクにか?」


「貴方がどう思ってるかはどうであれ、私が一目惚れしたのは事実よ。…だったら思わない?好きな人は自分の所に置いておきたいって。」


「っ!まさか…それで俺を現実世界から…」


「その通り。」


俺は、その事実に絶句する。


「本当はつもりだったんだけど…さすが、ちゃんと99999年やり抜いた。すごいよ。でも…私の物にする為に悪いけど心を折らせてもらうね♪安心して?ユウキは、私が【不死属性】を与えたから、死なないよ。まぁ、痛みはあるけど…」


その直後、俺は宙に浮いていた。ラプチェに殴られたのだ。殴られただけで、この威力…ヤバいな…

そう思った直後、自由落下運動が始まり、俺は、地面に叩きつけられた。


「カハッ…」


俺は、一瞬息ができなくなり、うずくまる。

だが、ラプチェがそれを見逃すはずがなく…


「あら、うずくまってるなんて蹴ってほしいと言ってるのと一緒よ?」


俺はとてつもない勢いで蹴られる。


「ぐっ………はぁ…はぁ…」


(まじかよ…この攻撃がまだ続くのか…)


俺は、始まった残虐行為に耐えるしかなかった。

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