15話 過去の後悔との決着。
「…誰かが犠牲にならなきゃいけないなら…俺が犠牲になる!」
俺はミズキに近づいて言った。
「っ、なんで…なんで何回も!…その子達を庇うのよ…」
ミズキは声を張り上げて言った。…なぜ?決まってる。
「そんなの決まってる。俺は、メフィアとエミリアが好きだからだ。それは、何度繰り返しても変わらない。」
「…だからって…」
「それにな…好きなのはお前もだ。…美珠希。」
「っ!それって…」
「あぁ、想う気持ちはまだ残ってる。…それに美珠希、お前は…ッ!?ぐ…」
「っ!は、遥音…」
体へ激痛が走る。俺の命ももう終わりってことか…
「はぁ…はぁ…俺は、【心眼】でお前が何、考えてんのか視たことがっ…ある…。」
「っ…。」
ミズキは息を呑んだ。
「お前は…俺に諦めさせたあとで…俺と“やり直そう”って考えたんだよな…?」
「………………」
無言は肯定を意味する。…図星だ。
「そうだよ。また日本にいた時みたいに、恋人になりたかったから…遥音を私の物にする為にはこうするしかなかった。」
ミズキの言葉が俺の胸に突き刺さる。…そうか、まだ俺のことをそんな風に思っていたのか…でも…
「でも…もうそれもお終い。」
ミズキはそう言うと、その場から飛んで上空に浮遊した。
「遥音…死んで、また会えたのが嬉しかったよ。…今度は本当に
そう言って、ミズキは自分の額に指を向けた。…自殺するつもりだろう。でも─
“俺は、
そう思った瞬間、俺の体は先程と同じように勝手に動いていた。【瞬間移動】を使い、一瞬でミズキの目の前に移動する。そして…
ミズキの手を握った。
「っ、どうして…」
戸惑うミズキに言う。
「…やっと…触れられた…掴んだぞ。今度は絶対に離さない!」
俺は更にミズキのもう片方の手を掴み、自殺出来ないようにする。その瞬間、ミズキの瞳から涙が溢れる。
「…あの時、お前が死んだとき。俺は、後悔したんだ。あのおじさんの手を振りほどいてミズキの手を掴めば
俺は、あの日の事を思い返す。
あと少しで触れそうな手。だけど届かなかった…『触れそうな』だけで触れることさえ出来なかった。
だからこそ、繰り返しちゃいけない。今、掴まなきゃ手遅れになる。一人で
「─俺も一緒に死ぬ。─“結界・全魔法・物理無効”っ!」
俺とミズキの周囲に結界を張る。これでメフィア達に被害は出ない。
「どう、して…」
「言っただろ?…お前の事が好きだって。」
「っ…!」
俺は、微笑み、メフィア達に向き直る。
「ハルト…」
「お兄様…」
メフィアとエミリアは涙を浮かべていた。俺は、安心させるように言う。
「メフィア、エミリア…なんて顔してんだ。…泣くなよ。俺まで悲しくなるからさ…」
その時、脳裏にある一声が蘇る。
『…泣くなよな。こっちまでもらい泣きそうだからさ。』
雪奈の言葉だった。
…アイツとももう会えないな…これで死ぬんだから。
「俺は…もうダメだ。体を見りゃわかるだろ?何もかもダメになる前に…意識だって朦朧としているんだ。…記憶だって少しずつなくなってきてる。だから二人の事を覚えているうちに、忘れないうちに…!俺は…いや、俺達は死ぬ。」
気付くと自分の頬に涙が伝っていた。…もらい泣き、か…
メフィアとエミリアを見ると、俺と同じように、頬に涙が伝ってた。
「…じゃあな。別れは笑顔でしなきゃダメだぜ。」
そう言って俺はにっこりと笑う。そして─
「美珠希、やるぞ?」
「うん…!」
ミズキの頬にも涙が伝っていた。俺は最後に、
「大好きだ。美珠希。」
「うん…私も…!私も遥音が好き!」
俺達は笑いあい、そして─
唇を重ねる。そして、
「─“
【大規模破壊魔法】を唱えた。その直後、
バゴォーンッ!!!!
と聞こえるはずのない爆発音が響き、俺の意識は暗転した─
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