第三章 邪神と過去の因縁。

11話 因縁の場所─魔王城。

先程の場所から約10分。俺達は目の前の有様に絶句していた。


魔王城はそれが元々、“城”であった事を忘れさせるように、砕けたガレキがそこら中に散らばっていた。もはや、、そんな事すら思わせる光景だった。

…その光景を作ったであろう人物が上空から黒い髪をなびかせながら現れる。


「ハルト?ふふ、“今回も”また来たんだね。」


「美珠希…今回は違う。…今回で終わりにする!」


「あれ?…そっか。思い出してるんだ。…それも今までやり直した時の記憶全てを…確かに“この世界なら”もしかしたら運命を変えられるかもね。まぁ、私がさせないけど…」


美珠希はそう言うと手に持っていた赤黒い大剣を俺達に向けた。俺はその剣を【神眼】で鑑定する。


ラグナロク・ヴォイド レアリティ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

攻撃属性:絶対死。禁剣LvError。

邪神が相手を絶望させる為に造り出した剣。人間がこの剣を扱う事は不可能。


絶対死 レアリティ Error。

致命傷になる傷を相手に与える事で、相手はそのままHPが0になり、状態固定になる。

なお、HPが0になりきる前でも回復魔法は効かない。


(なるほど…今まで怒りで鑑定することも忘れてたが…まさかこんな能力だとは…)


俺は改めて美珠希の剣を警戒する。 


「ハルト…」


「お兄様…」


メフィアとエミリアが不安そうな声を俺にかける。


「大丈夫だ。二人は死なせない。」


俺はそう言って二人の頭を撫でる。

『二人は死なせない。』だけどそれは難しい話だ…過去99999回、同じだったように、それが今回変わるなんてそんな都合のいい話はない…。


(やっぱり、誰かが犠牲にならなきゃいけない…美珠希が言っていた『トロッコのジレンマ』が本当なら、の話だが…)


「さぁ、“また”遊ぼう、かっ!」


美珠希はそう言うと、目に見えない程のスピードで俺の後ろにいるメフィア達に斬りかかった。


「ッ!?─“回避剣アボイド・ソード”!」


既のところで俺が攻撃を防ぎ切る。


「くっ…(は、速い…)」


俺はその異常な速さに驚愕し、美珠希のステータスを覗く。


ミズキ・シノハラ Lv??? 種族:超越者

HP:9014867839/9014867839

MP:224519958/224519958

STR:3194344015

VIT:2689283712

AGI:1670198970

DEX:3395347738

INT:3096750921

MND:1742501726

LUK:99999

属性:邪神

スキル:|死体使役《コープス・メイク 邪神 超越者 神眼 大剣術 縮地 アイテム・ボックス 自動HP回復 自動MP回復 状態異常無効 全属性無効 言語理解


(ッ!?俺と同じ【超越者】!?…それと気になるスキルがあるな…)


俺はそのスキルを鑑定する。


死体使役コープス・メイク レアリティ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

死体を使役し操ることが出来る。

※使役された死体には【死配】のスキルが固定される。


邪神 レアリティ Error。

【深淵魔法】・【破壊魔法】・【崩壊魔法】を使うことが出来る。ステータスが自動的に倍になる。


全属性無効 レアリティ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

全ての属性が無効になる。


「…【死体使役コープス・メイク】?まさか…オーク・エンペラーを操ったのは…!」


「うん、私だよ♪」


俺がそう訊くとミズキは声を弾ませながら言った。


「ふざ、けるな…なんでそんな奴になっちまったんだ!!」


俺が叫ぶとミズキは「ふふ」と微笑み、恍惚とした表情で言った。


「別にいいでしょ?だって死んでるんだよ?ソレを動かせる…操れる!もう最高じゃない?」


「ミズキ…お前は狂ってるよ…」


俺はそう言うが構わずミズキは続ける。


「その子達も殺すから、私のスキルで結果的に操れるね♪」


「ふざけるな!」


その言葉に怒り狂った俺は反射的に斬りかかっていた。


ガキンッ!


金属が強くぶつかる音が響く。


「危ないなぁ…何?おかしなこと言った?」


むしろおかしな所だらけだ。ミズキは平然とした顔でそう言った。…やはりコイツはもう狂ってる。もう、いないんだ。あの、動物に対して…いや─優しかった彼女は…


「ミズキ、お前を殺す…!」


「ふふっ、ハルトにやれるならね」


そうお互いに言い、再び剣を構え、対峙する。

俺がミズキを殺す。それが、元、出来ることだ。。

…それが例えどんな形であろうとも─。

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