5話 新たな場所へ。
『初めまして僕は─。よろしく。あっ、─君の事、呼び捨てしてもいいかな?』
ふと、懐かしいような…誰の声かも分からないけど、聞こえた。
そして、気付くと俺は叫んでいた。
「ッ!雪奈っ!…なんだ…なんで、雪奈の名前を…」
頭を少し冷やそうと立ち上がろうとする。しかし…
「…あっ、むぅ…すぅ…すぅ…」
メフィアが体に抱きついていた為立ち上がらず、そのままメフィアの体を抱き寄せ、俺は再び眠りについた。
* * *
「ハルト、ここから早く出た方がいいわ。」
朝、目覚めると一番にメフィアはそう告げてきた。
「どういうことだ?」
「昨日、『オーク・エンペラー』を倒したでしょう?それもたった一人で…」
そこまで言われたらバカでも分かるだろう…
「…てことは、王都辺りにでも連れてかれると…」
「うん、そういう事。それで次はどこに行くの?」
俺は考える。どこに行くべきだろうか。
俺が一つの答えにたどり着くのにそう時間はかからなかった。俺が出した答えとは…
「魔界に行こう。」
魔界に行くことだった。理由ならちゃんとある。それは─
「…本気、なの…?」
「あぁ。それに言っただろ?カタキを討つって。だから─「何、言ってるの…?」…え?」
俺の言葉を遮り、メフィアは言った。
「そんなこと…言ってない、よね…?」
「あれ…そうだったっけか…?」
いや、確かに言ったはずだ。
『俺のレベルがもっと上がったらお父さんのカタキ討ち、手伝うよ。』
そう言ったはずなのだ。しかし、メフィアが言ってることと俺が言ってることは矛盾する。
「あぁ、もう何でもいい。とにかくレベルが上がったからカタキ討ちは手伝う。」
「…ありがとう。でもね、無茶はしちゃダメだよ?」
「…あぁ。」
俺達はそのまま宿をチェックアウトし、ベルセルクを立った。
魔界がどこにあるのか分からないので、メフィアにその場所まで案内してもらう。
その間、俺はずっと考えていた。
…何故、召喚されたのか。さっきの自分の発言はなんなのか。そして、何故、“家族や一部の友人”の事を思い出せないのか。
コレに気付いたのは昨日の夜だ。
雪奈の名前を叫んだことを忘れるため、日本での記憶を思い出そうとした。
しかし、何故か、“雪奈以外”の人間の記憶が残っていなかった。…まるで長い時を過ごしたように。
そんなことを延々と考えていると、メフィアが立ち止まった。
…どうやら着いたようだ。
「アレが魔界の入口だよ。」
そう言ってメフィアが指差した方を見る。
そこには“時空の歪み”のようなモノが存在していた。
「…この中に入るのか。」
「うん。さ、行こ?」
俺は頷き、メフィアの手を握り、魔界の入口の中へと入っていった。
─時を同じくして、魔界の入口付近。
遙音とメフィアが魔界の入口へ入るのを密かに見ている者がいた。
「─やっと見つけた。…“お姉様”。………?あの人間は?まぁ、いいや。私とお姉様の“愛”を邪魔するのは誰であろうと排除するだけ。ふふふっ。待っててね?今、会いに行くから。…ね?お姉様♡」
…呟くその少女は、狂気に満ちた笑みを浮かべていた。
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