4話 緊急クエスト。
『緊急クエスト発生!緊急クエスト発生!冒険者の皆様は、大至急町の外へお集まり下さい!繰り返します…』
「ッ!?何だ!?」
俺は外から聞こえてきた無線(?)の声で目を覚ます。
「…ん、どしたの…?」
メフィアも目を覚ましたのか、俺に聞いてくる。
「…緊急クエストが発生したみたいだな…ふぅ…行きますか。」
俺とメフィアは着替えると、急いで町の外へ向かった。
「…嘘だろ?この町の冒険者ってこれだけ?少なくね?」
外に出た俺はその人数の少なさに驚いていた。
自分を含む冒険者は合計で10人だった。
「よく集まってくれた。今から緊急クエストの内容を説明する。」
一番先頭に立つスキンヘッドの男は野太い声を放ち、集まっている冒険者達に声を掛ける。
…恐らくこの男がギルドマスターなのだろう。
「すでに知ってる者もいるだろうが、俺は『アクロス』のギルドマスターのカルロスだ。よろしく頼む。」
やはりギルマスか。…というか、カルロス?
…やべぇ、名前聞いたら、NI○SANのカルロス・○ーンを思い出すのは俺だけかな…?
「さて、緊急クエストの内容だが、“災厄級のオーク・エンペラー”の討伐だ。」
『災厄級』、『オーク・エンペラー』という単語が出た途端、周りの冒険者達が騒ぎ始める。
「…なんか、名前からしてヤバそうだな。」
「かつて邪神が召喚した最強の配下…それが災厄級。」
俺の呟きにメフィアが答える。と、同時にカルロスが後方を指差す。
その方向には、赤黒い血のような肌を持った巨体の化け物はそこにいた。
その化け物はゆっくりと、だが、確実にこちらに向かって来ていた。
『無理だ!勝てる訳ねぇ!』、『死にたくねぇよ!』と周りの冒険者が再び騒ぎ出す。それを見かねて俺はカルロスの所へ歩き出す。
「俺、戦って来てももいいですか?」
「「「「「「は?」」」」」
俺の言葉でギルマスを含める周囲の冒険者が声を上げる。
「おい、お前ランクはいくつだよ?」
ギルマスの近くにいた男が訊いてくる。
「昨日登録したばかりだからEランクだ。」
俺のランクを聞いたその男は鼻で笑った。…なんかイラついてきたな…
「そっちは?」
俺も訊いてみることにした。鼻で笑うくらいなんだからさぞ俺よりもランクが高いのだろう。
「俺?お前よりも3ランク上のBランクだ!Eランクの“ザコ”がでしゃばんじゃねぇよ。」
カチンッ。俺の堪忍袋の尾が切れる。
「ザコかどうかは分かりませんよ?」
「あぁ?昨日登録したばっかなんだからザコに決まってんだろ?」
「それは偏見ですよね?あ、ということは貴方は“僕”より強いんですよね?」
「当たり前だろ!」
「…じゃあ、戦うのは諦めますよ。では、どうぞ。」
「あ?なにがだ?」
「いや、強いんですよね?だから、僕の代わりにどうぞ。」
「何で俺が…」
「“強いんですよね?”」
「ッ…チッ…そんなに死にたいんなら行ってこいよ」
「あれぇ?急にどうしたんですか?『ザコは、でしゃばんな』って言ってましたよね?それなのにどうして急に?強いんですよね?貴方はザコじゃないんでしょ?だからでしゃばることにはなりませんよ?」
「……………」
男は完全に黙ってしまった。ふぅ…これぐらいでいいだろう。
「じゃあ、行ってきます。あーあと最後に1つ。─口だけのお前こそでしゃばんな。」
俺はそれだけ言うと【ソード・オクロック】を取り出し、【縮地】を使い、化け物へ、急接近する。そのまま、化け物の首を狙い、剣を真横に振りかぶる。しかし…
「─ッ!?」
化け物は自身の持っていたこんぼうで俺の剣をはじいた。俺は距離を取り、化け物を鑑定する。
#
??? Lv866 種族:オーク・エンペラー
HP:65000/65000
MP:23000/23000
STR:600000
VIT:600000
AGI:90000
DEX:45000
INT:23000
MND:65000
LUK:460
属性:火・闇
スキル:根術 火属性LvMAX 闇属性LvMAX 死配:固定。
#
(名前が表示されない…!?どういうことだ?)
と考えている内に、オーク・エンペラーが攻撃を仕掛けてくる。
「ッ、アリスよりは弱いが…攻撃がっ、危険っ、だなっ!」
俺は謎の実況をしながら、こんぼうを受け流し、攻撃する。
─ブンッ!
しかし、受け流したはずのこんぼうをありえない方向から俺に向かって振りかぶってくる。
「チッ…」
ソレをはじいて後ろに下がる。そして違和感に気づく。
「………?」
(なんで、何も言わないんだ?)
『邪神が召喚した最強の配下』とメフィアは言っていた。だとしたら、自我は持ってるはず。
俺はもう一度、ステータスを再鑑定する。そして気になるスキルを見つけた。
#
死配:固定。
死体を操るために必要なスキル。術者と繋がってる死体もこのスキルを取得する。
#
(…なるほど、そういうことか。だったら…俺が取る行動は…)
俺は再び【ソード・オクロック】を構えると、【アイテム・ボックス】から【リベリオン・ヴァルキュリア】を取り出し、空いてる左手に持ち構える。
そして、【縮地】でオーク・エンペラーに急接近し、飛び上がり、二刀流スキルで取得した技を放つ。
「…辛かったよな、今楽にしてやる─“クロス・バースト”」
両腕を交差させ、ものすごい勢いで剣を振る。次の瞬間にオーク・エンペラーの首が吹っ飛ぶ。
「………………」
俺は離れた首と体を一カ所に集め、【火魔法】を使い跡形もなく燃やす。
「…どうか、安らかに眠ってくれ。お前の体を操った奴は俺が倒す。」
そう言うと、どこからか『…ありがとう…』そう聞こえた気がした。
そして、静かに冒険者達がいるところへ戻った。
「…お前、本当にEランクなのか…?」
ギルマスが顔を強ばらせながら訊いてくる。
「あぁ、そうだ。…
「あ、あぁ、そうか。分かった、忠告感謝する。」
その会話の後、ギルマスや冒険者達が町へと戻っていく。
俺も帰ろうと歩を進めると─
「─ハルト?大丈夫?」
メフィアが声をかけてきた。
「あぁ、ごめん…大丈夫だ。疲れたし帰ろうぜ。」
「疲れてるのね…じゃあ、私がハルトを気持ちよ─こほん。…元気にしてあげるね♡」
「おい、今『気持ちよくするね』って言いかけただろ…!」
「えぇ~?違うよ?」
「…じゃあ、なんて言おうとしてたんだよ?」
「『気持ちよくしてあ・げ・る♡』って言おうとしてたんだよ♪」
「どっちも一緒だ!」
昼の広原に俺の声が木霊していた。
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