3話 冒険者登録。

悪魔のアリスを倒し、メフィアと契約という名の一線を越えてから約半年の月日が流れた。


「じゃあ、“最後”にやってくる。」


「うん、出来るだけ早くね?」


「あぁ、分かった。」


俺はそう返事をして家を出た。向かうのは俺が最初にいた平地─そう、召喚された場所だ。

平地に着くと、俺は【創造魔法】を使って、“対戦相手”の『ゴーレム』を造る。

出来上がったゴーレムを【神眼】で、鑑定する。


マスター・ゴーレム Lv? 種族:土人間

HP:888888/888888

MP:888888/888888

STR:888888

VIT:888888

AGI:888888

DEX:888888

INT:888888

MND:888888

LUK:888888

属性:土

スキル:土属性LvMAX


「…よし、ヤルか…」


俺はそう言って、【アイテム・ボックス】から【ソード・オクロック】を取り出す。

その直後、マスター・ゴーレムが大きい右手と左手で、俺に攻撃を仕掛けてきた。


ドゴォーンッ!!


その衝撃で地形が破壊される。        

俺は【縮地】を使って避け、そこからマスター・ゴーレムの背後に回り込む。

それに気付いたのか、地面を踏み込んで空中へ飛び上がる。

そのまま、俺を踏み潰すつもりなのだろう。

─だが、遅い!

俺は二刀流スキルで覚えた剣技を放つ。


「─“弑逆謀殺レジサイド・マーダー”」


空中へ飛び上がったマスター・ゴーレムを【縮地】で、跳び、下から上へと、剣を振る。それを、0.01秒で、5回繰り返す。


俺が地面に着地すると同時にバラバラになったマスター・ゴーレムが、落ちてくる。


「ふぅ…」  


俺はその残骸を【火魔法】で跡形もなく燃やす。そして、マスター・ゴーレムが破壊した地形を【創造魔法】で、地形を再生させ元に戻す。


「ホントに軽いな、この剣…」


俺は軽く【カオス・バースト・レクイエム】の型を素振りしてみる。


ヒュ、ヒュン、ヒュヒュン─。


風切り音が辺りに響く。

アリスと戦ったときは、二刀流だったが、いざとなれば【ソード・オクロック】だけでも充分戦える。


「ふぅ………ッ!?や、ヤベぇ…すぐって言ったのに、30分経ってる…まずい、早く戻らないとメフィアに搾精されかねないぞ…」 


腕時計を見た俺は慌てて家に戻った。


* * *


「ハルト、忘れ物はない?」


「…あぁ、ないよ…」


「どうしたの?元気ないみたいだけど?私はこんなに元気なのにっ♪」


(…おまえのせいだよ…)


だが、そんな事を言ってしまえば、『じゃあ、私が元気にしてあげるね♡(意味深)』と言われるだろう。

…そう、戻るとメフィアに搾精されたのだ…。


「そういえばその服で大丈夫なの?」


「そういえば…。“神眼”で視てから決めるわ。」


俺は今着ている、トレーナー・カーディガン・ジーンズを鑑定した。


トレーナー(青) レアリティ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 状態固定。

劣化、衣擦れすることがない。地球人以外は許可がないと装備不可。


カーディガン(灰) レアリティ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 状態固定。 

劣化、衣擦れすることがない。地球人以外は許可がないと装備不可。


ジーンズ(紺) レアリティ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 状態固定。

劣化、衣擦れすることがない。地球人以外は許可がないと装備不可。


(何これ…チート装備だ~!!…よ、よし…視なかったことにしよう。)


「さて、町へ行こう!出発だ~!」


「…ねぇ、その服って…」


「ん?ナニヲイッテイルンダイ?…そんな事より早く行こう!」


「そうね…あっ、この近くだと、『ベルセルク』って町があるけど、ハルトはそこまで私を『お姫様抱っこ』してくれるんだよね?(圧)」


メフィアはにっこりと微笑みながら俺に圧を掛け言ってきた。


「あ、あぁ!もちろんだ…」


俺がそう返事すると満足したように満面の笑みを浮かべた。

俺はメフィアを抱えると“縮地”を使い、ベルセルクへと向かった。


* * *


ベルセルクは、【縮地】を使ったおかげで数分でついた。

…テンプレでは門の前で止められるのが普通なのだろうが、この異世界では止められなかった。…所詮は、妄想なのだ。 


「おぉ…!さすが異世界!」


町に入った俺は思わず歓声を上げていた。

二階建ての建物が並ぶ町並みに、野菜や道具、薬などを売っている露店…!まさしく俺が思い抱いた異世界だ!


「ねぇ、今日からしばらく滞在するんでしょ?それなら冒険者ギルドで冒険者登録したら?」


「おぉ、それもいいな…!だったらメフィアも登録しようぜ!」


「ううん、私はいいよ。」


「そうか…分かった。じゃあ、行こう。」


* * * 


「ここが…なんか他の建物よりも大きいな。」


その三階建ての大きな建物は、扉の横に看板があり、そこに『冒険者ギルド アクロス』と、書いてあるからここが冒険者ギルドで間違いない。

俺は扉を開けて中に入る。


…中はとても静かだった。と言っても、図書館みたいに何の音も声もしないわけじゃない。普通に話している人もいるし、笑ってる人もいる。

俺はそのまま受付にいる、受付嬢の元へ向かう。

途中、変な目でメフィアを見ている野郎どもがいたが、無視する。


「こんにちは、冒険者ギルドアクロスへようこそ。冒険者の登録ですか?」


「はい、そうです。」


「そちらの女性もですか?」


「いえ、俺だけで。」


「では、こちらの紙にお名前と年齢を。」


そう言って受付嬢は紙を渡してくる。


「あっ、代筆は…」


「大丈夫です。」


俺は【言語理解】という超チートスキルを持っているので、この世界の文字の読み書きは完璧だった。

俺は名前と年齢を書き終えると、受付嬢に紙を渡す。


「では、冒険者ガードが出来るまで当ギルドの説明をさせていただきます。」


受付嬢はそう言うと小さなパンフレットを取り出した。


「当ギルドでは、雑用、討伐の他、護衛や探索などの依頼・クエストを受注する事が出来ます。この時の注意ですが、受注して失敗すると違約金が発生し、報酬の2割を支払って頂くことになります。依頼やクエストにはランクがあり、ランクに応じて難易度は変わります。冒険者にもランクがあります。下から順に、E、D、C、B、A、S、SS、SSSです。ハルトさんは初心者なのでEランクからです。…以上ですが何か質問はありますか?」


「いえ、特には…」


「では、こちらを。Eランクの冒険者カードです。初回は無料ですが、無くしたりした場合は再発行にお金が掛かってしまうので気をつけて下さい。」


冒険者カードをもらいそのままアクロスを出る。


「よし、じゃあホテ─じゃなかった…宿屋を探そっか。」


日本での言葉が抜けず、宿屋をホテルと言いかけてしまう。そして、重大な問題に気付く。


「あっ…お金…」


異世界に来てからメフィアとあの家に住んでいた為、お金を持っておらず、それどころかこの世界の金銭関係すら知らないかった。


「そこは大丈夫。私が持ってるから。あ、そこの宿屋にしよっか。」


「…払ってもらっていいのか?」


「うん、ハルトには体で払ってもらうから♡」


メフィアの視線が俺の下半身に集まっていて急速に理解する。


(今夜“も”搾精されるな…体力持つだろうか…?)


その後、宿屋に入り部屋を確保する事に成功する。そしてメフィアから、この世界の金銭について教えてもらった。


この世界では銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚。金貨100枚で白金貨1枚になるそうだ。

日本円にすると、銅貨1枚で何と1000円!銀貨1枚だと10万円、金貨1枚だと1000万円、そして白金貨1枚は…1億!!

…この世界だと、諭吉さんがバンバン飛んでいく世界だった。


これは余談だが、メフィアは種族が違うので妊娠することは無いらしい。…それを分かってか、メフィアは毎晩俺を襲って来る。

男にとっては夢だろう。…しかし、それを毎晩となると…キツい。

宿屋でもメフィアに襲われた。その翌日、宿屋の女将さんから『昨夜はずいぶんとお楽しみだったようだねぇ、若いっていいわぁ。』と、言われ俺が赤面するが、それはまた別のお話。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る