第一章 異世界エルクレア

1話 出会いの後の奇襲。

「…家、だよな、ここ…」


召喚された場所から奥へ奥へと歩いてきた俺は、二階建ての家を見つける。

その家を見て、俺は最初に、『魔○の家』みたいだと思った。


「入ってみようかな…」 


好奇心旺盛な俺はためらいもなく、扉を開いて中に入った。


「へぇ、中は綺麗だな。誰か住んでるのか─ッ!?」


俺が感想を言っていると、階段の方から1人の少女が現れる。


「………!」 


そして俺は少女の姿を見て言葉を失ってしまう。

その少女は背中に大きな翼を付け、髪は紫色のロングで、その瞳は真紅の美しい吸血鬼の美少女だった。


「…まさか…追っ手…?なら容赦しない!」


少女はそう言うと、手をかざす。そこになにやら禍々しい邪悪な球体が現れる。


(まずい…!)


そう直感的に感じ、迷いもなく、【アイテム・ボックス】から、【リベリオン・ヴァルキュリア】を取り出す。その直後、俺に邪悪な球体(仮?)が当たる。その間、約0.1秒!


「…ッ、危ねぇ…なぁ、人の話ぐらい聞こうぜ?何もしてないのに襲うのはなぁ…」


「なっ…えっ…!?」


俺は無傷だった。【リベリオン・ヴァルキュリア】の【反逆神】のおかげでギリギリ間に合ったのだ。…あの時、【ソード・オクロック】を取り出していたら…と思うとゾッとする。そして俺は少女を鑑定する。


メフィア・スレイル Lv466 種族:吸血鬼

HP:39000/39000

MP:92000/93500

STR:4500

VIT:2900

AGI:76000

DEX:22000

INT:68000

MND:56000

LUK:470

属性:魔王

スキル:魔法創作マジック・メイカー 吸血 魔眼 魔王 再生 言語理解


(レベル466!?…ゲームと違って99がMAXじゃないのか…)

と、思い、少女─メフィアが持つスキルの中に気になるスキルがあったので、鑑定する。


魔法創作マジック・メイカー レアリティ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

自由に魔法を産み出すことが出来る。 


魔王 レアリティ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

勇者と対等の存在。基本属性である、『火』、『水』、『風』、『光』、『闇』を使いこなすことが出来る。


「…魔王?」


俺は呟いて、はっとする。勝手に人のステータスを見たという事実を公言してしまったからだ。


「…人間だよね?さっきはいきなりなんて放ったりしてごめんなさい。」


(んん!?今、【即死魔法】って言った!?それ、放っちゃダメだよ!?)


俺は心の中でめちゃくちゃ叫んでいた。…俺がうっかり呟いた事は気にしていないようで安心する。


「とりあえず、俺は、「ハルトね、“魔眼”で視た。」…あぁ…うん…。」


自己紹介しようとしたら遮られ、少し、ほんの少し、落ち込む…。


「単刀直入に聞くけど、さっきの追っ手って?」


俺が訊くと、メフィアの表情が曇る。どうやら、割と深刻な問題らしい。


「私のステータス、視たんでしょ?なら、私が魔王なの分かるよね?」


俺はこくり、と頷いた。


「実はね、私は元々、魔王城で父上と妹と一緒に暮らしてたんだけど…ある日、“邪神”を名乗る者が現れて…父上を殺して…魔王城は、乗っ取られて…私と妹が、追われる身になっちゃったんだけど…だから、貴方のことを追っ手と勘違いしちゃったの。」


「…………」


メフィアの話を聞いて、俺はメフィアが、可哀想だと思った。


「…なるほどな…なぁ、ずっとここにいるつもりなのか?」


俺はとりあえず訊いてみた。…これからどうするつもりなのか。


「…うん、出来ればね…」


その言葉を聞き、俺は言う。


「だったら、俺と来いよ。…行くとこないんならさ。」


「え…?それ、本気で言ってるの!?私追われているのよ!貴方まで追われる身になるのよ!そこをちゃんと考えて話してる!?」


メフィアは叫ぶ。そりゃそうだろう。自分だけならまだいいかも知れないが、そこに無関係の人間が介入するんだから。でも、メフィアは“邪魔”だから、という理由じゃない。ただ、他の人に“迷惑をかけたくない”からなのだろう。


「考えてるさ。…それに俺、“異世界人”だから、この世界の事、何も知らないんだわ。だから『一緒に来てくれたら助かる!』みたいな下心も入ってる。」


「ッ!?」


ちゃっかり、自分が異世界人だと公言してしまったが、まぁ、いいだろう。


「…分かった。一緒についてく。…でも、本当に私で大丈夫?」


そう、メフィアは、おずおずと訊いてきた。もちろん俺は─。


「もちろんだ。」


そう、力強く答えた。ようやく一段落した。その時だった。


「─訪れない幸せな未来の話の途中、悪いんだけど、いいかな?」


そう言って、扉を開け放ち、現れたのは、動きやすそうな(安物っぽい)服を着て、まるで悪魔っぽい姿をした女性だった。


「ッ…まさか…追っ手…?」


「ご名答。私はそこの少年に用があったんだけど…まさか、現在魔王の“お嬢様”がいるとはね…思わぬ収穫があったものよ。…じゃあ、さっそく消えてもらうわね─ッ」


そう言った直後、メフィアに向かって邪悪な“何か”を放った。ソレがメフィアに当たる瞬間、俺の体は勝手に動いていた。

【縮地】を使い、メフィアの前に飛び出て、【リベリオン・ヴァルキュリア】を構える。もちろん、【反逆神】で相手が放った魔法を斬る事が出来た。


「ッ!?貴方、一体どうやって…」


その“女”は俺が魔法を止めた…というより斬った方に驚いていた。それと同時に自分の魔法を“止められた”という事実に怒りを覚えたようだった。


「はい?危なそうなのが飛んで来たので、ですが、なにか?」


俺の挑発じみた言葉に女は眉をピクリ、とさせる。


「─ッ!?斬った『だけ』ですって!?何で剣1つでそんな事が出来るのよ!?」


俺の挑発に乗って、女は興奮する。…狙い通りに。だから俺はまた煽る。


「何でそんな事が出来る?さぁな?ただ単にお前の魔法が弱かっただけだろ?だって、って…(笑)ないだろ?(笑)」


「~~~ッ!?」


女は顔を真っ赤にして怒っていた。そこで俺は『女子に言ってはいけないランキングNo,1』を言う。


「…何でそんなに顔、赤いんだ?あっ…ごめんなさい、怒って…ますよね…本当にごめんなさい、“気付いてなくて”…」


「………?」


『一体、何に気付いてないと言うのだろう?』と、思っているようだった。


「今日は“女の子の日”、『生理』だったんだな…ごめんなぁ~、気付かなくて。あれ…?さっきより真っ赤っかになってるけど…そんなに“生理”辛いのか…だったら家に帰った方がいいんじゃないか?…ぷっ(笑)」


俺は思いっきり煽る。女はやはり顔を真っ赤にしていた。そして、女が行動をする前にステータスを視る。


アリス・ベリアム Lv699 種族:悪魔

HP:90654/90654

MP:103424/103644

STR:210500

VIT:305625

AGI:786844

DEX:10500

INT:23600

MND:1000

LUK:100

属性:闇

スキル:能力封印スキルアウト 片手剣 縮地 闇属性LvMAX


(強いな…ラスボスみたいだな、おい。…異世界デビュー戦が、『スライム』とかじゃなくて、何でこんな奴なんだよ!)


と心の中で悪態をつく。が、次の瞬間、『縮地』を使ったのか、とんでもないスピードで、どこから出したかのか分からない剣を俺に向かって突いてくる。…しかし…


「─ッ、よっと…」


「ッ!?…何故、避けられたの…?」


俺は、【縮地】で


「何故?イノシシみたいに“猪突猛進”で来たから、横っ飛びしただけだよ?」


俺はアリスを挑発して、興奮させる。…ケンカの基本だしね。

さて…そろそろまずくなって来たな…俺は焦り始める。アリスはまた【縮地】で剣を突いてくるだろう。また横に飛べばいいんだけど、それが出来るのなら。

アリスもバカじゃないだろうし、俺の行動を学習しただろう。

となると…俺がとる行動はただ一つ──。“アイテム・ボックス”から【ソード・オクロック】を取り出す。そして、縮地で飛んできたアリスの剣を、2つの剣をクロスさせ、ガードする。


「ッ、二刀流!?…厄介ね…」


そう言いながらもアリスはペースを崩さず、攻撃速度を更に上げる。


「─ッ、はぁッ!」


「くっ─」


俺はデタラメな攻撃でアリスをはじき飛ばす。

こんなデタラメな攻撃でも、690もレベルが上のアリスをはじき飛ばす事が出来るんだから、【二刀流】スキルはすごい。…ただ…剣が、重い…。…!そういえば…


「─ッ!“スカイ・フラワー”・“闇魔法”・“クリムゾン・アロー”」


「─ッ!?─チッ」


俺は急いで、左手に持っていた【ソード・オクロック】を右手の【リベリオン・ヴァルキュリア】に持ち替え、【ソード・オクロック】に“剣技”を2つ登録する。

そして次の瞬間、アリスの剣による連撃と、空から襲いかかる魔法による無数の矢が俺に向かって来ていた。…さっそく、登録した技を使う。


「─ッ“回避剣アボイド・ソード”」 


俺はそう短く叫ぶ。

その直後、俺は見事なステップを踏みながら、2本の剣でアリスの連撃も、矢も防ぎきる。

…何故、防ぎきる事が出来たのか。それは【回避剣アボイド・ソード】のおかげだった。


回避剣アボイド・ソード(0)

敵の攻撃を剣を使ってステップを踏みながら、全てはじく技。

魔法でも物理の場合は使える。※放射魔法は不可。


「─ッ!?な、何をしたの!?」


「ちょっとした技を使っただけさ。…さて、これで終わりにする─」


俺はそう言うと、【ソード・オクロック】に登録したもう1つの剣技を鑑定し、念の為、【アイテム・ボックス】から“アレ”を取り出し、腰のポケットに忍ばせる。


カオス・バースト・レクイエム(15)

一撃、一撃の破壊力が凄まじい。この技を使う時、剣レベルが1~1000の剣は、途中でひびが入り、砕ける。だが、相手への大ダメージは約束される。

# 


「─“カオス・バースト・レクイエム”!」


「なっ!?」


踏み込んで、2本の剣を構え、飛んできた俺にアリスは目を見開く。

完全な不意打ちだったからだ。俺は、右、左、ななめ、など8方位から、様々な角度から斬りつける。アリスは必死に剣でガードしようとするが、その剣は俺の剣撃に耐えきれず砕けてしまう。

先程まで感じていた剣の重みは今はなくなり、逆に軽くさえ感じた。

これが【ソード・オクロック『の恩恵なのだろう。


「─お、りゃあッ!」


“30”連撃を終え、【リベリオン・ヴァルキュリア】に限界までためていた魔力を斬撃として放つ。

何故、15連撃が30連撃になったのか。理由は簡単。二刀流で使ったからである。


「ぐ…はっ!?…」


アリスは【カオス・バースト・レクイエム】により割と深刻なダメージを負っていた。


「…ッ、“外の世界”…から来ただけあって、やっぱり…ッ強いわね…」


「ッ!…知ってたのか?」


俺はその言葉に少し、いや、かなり油断して反応してしまう。…アリスには、形成逆転にもなる、スキルを持っている事も忘れて…


「─ッ“能力封印スキルアウト”」


アリスがそう叫ぶと、俺は謎の脱力感に襲われる。何だ、と思い、自分のステータスを視る。


カグラ・ハルト Lv1 種族:人間

HP:60/450(ー450)

MP:250/680(ー680)

STR:980(ー980)

VIT:430(ー430)

AGI:330(ー330)

DEX:520(ー520)

INT:780(ー780)

MND:850(ー850)

LUK:ー99999:Errer

属性:矛盾パラドックス:封。

スキル:能力創造スキルクリエイター:封。 矛盾パラドックス:封。 神眼:封。 二刀流:封。 縮地:封。 アイテム・ボックス:封。 成長促進:封。 経験値倍増:封。 言語理解:封。


「…油断してたぜ…」        


俺はアリスを鑑定したとき【能力封印スキルアウト】を鑑定し忘れた事に後悔する。

だが、だいたい能力は分かる。自分のステータスを見る限り、ステータスを初期状態にし、スキルは使えなくする、という能力なのだろう。


「…これで勝ったつもりなのか…?」


「ええ、今の貴方は剣を持っても無意味だもの。」


俺はその言葉を聞き、


「ッ!?一体、何を…」


「やっぱり、“保険”って用意しとくもんだよなぁ。」

俺は先程腰のポケットに入れた、『銃』を取り出す。


「なぁ、アリス。この世に“絶対”は無いんだよ。『絶対』を過信しすぎたな。お前の負けだよ、アリス。」


俺は銃を構えると思いっきり銃の引き金を引く。バンッ!


「─あぐッ!?」


アリスの額に銃弾は命中し、アリスは絶命する。 


「あぁ…さすがにもう無理…」


俺も限界だったようで、そのまま倒れる。


「ッ!ハルト!大丈夫!?ハル─」


心配そうなメフィアの声が聞こえる中、俺は意識を失った─。


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