第170話 混沌

(よし。これで、神界と地上とのアクセスができるようになった。あとは、龍脈のように少しずつ独自システムに改変していこう。)


コウスケが戻ろうとしたとき、目の前にゲートが現れた。


(転移門型のゲート!?…まさか、あの神モドキは囮で、本物の神の軍勢がやって来るのか?…そう考えると辻褄が合うな。)


コウスケは右手と左手の手の甲に神気を流すと、魔法文字で描かれた紋章が浮かび上がる。


―混沌魔法―

「カオティック・オーラ」―


混沌のオーラをコントロールしながら、血液のように身体に循環させていく。


(ゲート越しでもプレッシャーを感じる…。かなりの実力者がいるな…。それも大人数…。)


循環させたオーラを練り上げながら臨戦態勢で待ち構えていると、ゲートからユニを乗せた”聖帝龍の白”とモンタと紅ゴブを乗せた”影帝龍の黒”が勢い良く飛び出してきた。


その後から、カラクリ馬に騎乗したブレイブ達が続々と飛び出してくる。


(?????)


白と黒が、混乱しているコウスケに近づき平伏する。


『主様、この度は神界に攻め込むとお聞きしました。何なりとお命じください。』


『魔王様、ついに神界を制圧するのですね。命を懸けてお供いたします。』


(???)


コウスケの肉体(本体)を大切そうに抱き抱えたユニは、白の背中から飛び降りてコウスケ(意識体)に近づくと目の前で跪いた。


「…御体をお持ちしました。…コウスケ様…。次回からは、いくら相手が神であろうと、このような重要な作戦を実行される際は、事前にお教えください。」


(いや。作戦なんて立てて無いし…。…みんな、それぞれ何か勘違いしてるな…。モンタは、”神界の木の実どこだ~”って探してるし…。紅ゴブとテレポートモスキートは、もう巨大宝石を見つけて調べてるし…。)


コウスケはユニに抱き抱えられている肉体に戻ると、カラクリ馬から降りたブレイブ達がコウスケの前に跪いていた。


『コウスケ様。遅くなって申し訳ありまセン。それデ、神と名乗る者共ハ、どちらでしょうカ?強者なのですカ?』


そう言うと、ブレイブはキラキラした表情で周囲を見渡し始めた。


(ブレイブはいつでもブレないな。”今ちょうど帰るとこだった”なんて言ったら、ガッカリするんだろうな…。)



紅ゴブ達が何かと言い争っている声が聞こえた。


『貴様らぁぁぁぁぁッ!神石に何をしておるのだ?うん?なぜ、モンスターがこの神界にいる!?うん?ステータスが読めん!?うん?思考も読めん!?いったい何者だぁぁぁぁぁぁぁッ!』


『あ"んッ!?なんだテメェ?やんのかコラッ!このモンタ親分の一番弟子紅ゴブ様が相手になるぞゴラぁぁぁッ!』


『紅ゴブ師匠ッ!モンタ親分ッ!きっとコイツが噂の神モドキだべすッ!』


『おぅおぅ!おめぇが、なんちゃって神か?なぁなぁ!神界の木の実ってどこにあんのか教えてくんねぇ?神界のなんだから、すげぇもんあんだろ?』


(なんか、介入したくない状況だな…。)


『コウスケ様。アレが神と名乗る者ですカ?そうであれバ、戦闘の許可をッ!』


(…ブレイブならあの状況を打開してくれるかもしれないな。)


コウスケが頷くと、ブレイブが誇らしげに立ち上がりカラクリ馬を呼び寄せる。


『俺の馬ヨッ!来イッ!』


『『“俺の馬”って呼ぶんじゃねぇよッ!』』


『いくゾッ!俺の馬ッ!』


『『だから、人の話を聞けぇぇぇッ!』』


ブレイブはカラクリ馬に騎乗すると、喜び勇んで言い争いの起こっている場に向かって駆け出した。


(…いろんな意味で混沌としてきたな。)

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