第167話 女神との邂逅
コウスケは、日課である“ブレイブとの戦闘訓練”、“紅ゴブとの共同研究”、“モグ太郎やモンタとの農作物収穫”、“ヒスイやドリアン達への五穀豊穣スキルを使ったヒーリング施術”、“ダミアンやダミ吉達とのダンジョン防衛会議”、“ユニ達との新作スイーツ試食会”、“精霊達とのお茶会”等を終えて、リビングで一息ついていた。
(最近、周りはちょっと慌ただしいけど、俺はかなり平和に生活ができている。みんなが自分の裁量で動ける範囲が広がってきたからかな。このままみんなが一人立ちしていけば、ヒトと関わらないで静かに過ごせるかもな。そのために、俺自身も一人で何でもできるようにしておかないと。)
「ふぅ~。理想の暮らしまであと一歩かな…。」
コウスケが呟くと、視界が白く染まり一瞬浮遊した感覚に陥った。
…
”…クフフッ!…そんな生活は未来永劫くることはありませんよ…”
声がする方向を見ると、なにもない真っ白な空間に見覚えのある女が立っていた。
(この世界にくるときに、ユニークスキルをくれた女神…。肉体から切り離されて意識だけを呼び寄せられたのか…。それとも、夢枕のようなものか…。)
「お久しぶりです。何かご用ですか?」
コウスケが挨拶をすると、女神はニッコリ微笑む。
『あなたが強くなりすぎて、神々ゲームがつまらなくなってきたのです。手駒を使って始末したかったのですが、全て失敗してしまったので、こうやってお呼びした次第です。』
(最近の襲撃は、コイツの仕業か。)
「この場で、俺を始末するということですか?」
コウスケの質問に、女神は首を横に振る。
『いえいえ。神は、直接現世に関与できる範囲が限られていますので、この場はあなたのスキルとステータスをリセットさせていただきます。』
(やはり、”既存”のスキルやステータスは、神によって管理されているのか…。そして、今の俺は肉体の無い思念体だけの存在ってところか。しかも、この空間…スキルや魔法は管理者権限で使用不可になっているみたいだ。)
『言葉が出ないようですね。それでは、リセットさせてもらいますね。ああ、スキルで生み出したモノもリセットしておきますので、注意してくださいね。クフフ♪すぐに、手駒を差し向けますので、注意のしようがありませんけどね。』
!!!パチンッ!!!
女神が指を鳴らすと、コウスケの身体が一瞬発光した。
『ハイッ!これで、リセット完了しました。さようなら。早く死んでくださいね。』
手を振りながらウインクをする女神にコウスケは、質問を続ける。
「一つの質問をして良いですか?神がこの世界から居なくなると、何か不都合が生じますか?」
女神の顔色が変化し始めた。
『あれ…。なぜ帰らないのですか…。うん?神が居なくなるとですか?もちろん、この世界を導く存在がいなくなるので、皆さんの心の拠り所がなくなってしまいますし、スキル・ステータス・ダンジョン・龍脈のシステムも停止しちゃいますので、色々な面で大混乱するでしょう。』
女神の機嫌がみるみる悪くなっていくが、コウスケはさらに質問を続ける。
「ということは、システムが使えなくなるだけでその他には不都合が生じないということでよいですか?」
不機嫌が最高潮に達した女神の顔が歪んだ。
『なに訳のわからないことをッ!神がいないと、お前の元いた世界のように魔法もスキルも使えない糞みたいな世界になるんだよッ!気持ちワリぃから早く失せろッ!気味の悪いクソガキがッ!』
!!!パチンッ!!!
女神が指を鳴らすが、何も変化がなかった。
(予想通り、神は自然エネルギーを使ったスキルやステータスのシステムを運用しているだけで、ゼロから物質や生命を生み出したり物質や生命に直接干渉したりすることはできない―いわば、精神世界の管理者ってとこか。)
『な、なにが起こっているのよッ!早く失せなさいッ!』
!!!パチンッ!!!パチンッ!!!パチンッ!!!パチンッ!!!パチンッ!!!…
女神が何度指を鳴らしても変化はなかった。
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