第166話 パターン

ブレイブ達が遠征から帰ってくると、”カラクリ”と呼ばれる半精霊が新たにブレイブ隊に加わった。


(“カラクリ”は、武技と精霊術が両方使えるうえに、合体したり変形したりできるのか…。トンデモロボが仲間になったな。)


カオスなオブジェに新たな住人も増えて、毎日元気に断末魔をあげている。


(オブジェの住人も増えたな…。増えたと言えば、突然、テレポートモスキートが涙を流して謝罪してきて、四六時中、俺の周りをパトロールと称して飛び回るんだよな…。転移に関する能力や知識が高くて、役に立つから良いんだけどね。)


…ピクッ…


コウスケの周りをパトロールしているテレポートモスキートが何かに反応する。


『精霊王様ッ!目の前に転移反応を感知しただべすッ!何者かがここに転移してくるだべすッ!』


テレポートモスキートは、周囲を警戒しながら転移ポイントを探し始めた。


(”超直感”が鳴らなかったということは、相手に敵意は無いということか…。それとも、脅威ではないか…。いずれにしても、このまま転移させるのは得策ではないな。)


転移ポイントを特定したテレポートモスキートは、転移ポイントの周囲をぐるぐる飛び回った。


「転移ポイントをトラップダンジョンに書き換えることはできる?」


テレポートモスキートは頷くと、目の前にスクリーンを展開した。


『やってみるだべすッ!紅ゴブ師匠直伝の技をみせるだべすッ!』


テレポートモスキートは、展開したスクリーンに複雑な魔法文字を入力していくと、スクリーンの一部が緑色に輝き始めた。


テレポートモスキートが緑色に輝いている部分に触れると、転移ポイントに複雑な魔法陣が展開されていく。


『大成功だべすッ!ラスト様が管理する”竜宮城”の中に送り込んだだべすッ!』


(いつの間に紅ゴブに弟子入りしていたんだ?謎のスクリーンも使えるようになっているし…。…いや、考えたら負けだな。それにしても、“竜宮城”に送り込んだのか…。相手には冥福を祈ろう。)



別の日、コウスケがリビングで寛いでいると、ゴールデンカブトGXのカムイが忍者のように天井から降りてきた。


『コウスケ様、このランクエラーに向かってくる輩共がいるでござる。天使や悪魔やドラゴンなどで構成される千程の空軍のようでござるが、いかがするでござるか?』


(転移で乗り込めないから、軍団を送り込んできたのかな。いつものパターンだな。)


「その程度であれば、ジェノサイドクラッシャーであらかた殲滅した後に、ブレイブ隊の訓練を兼ねた残党討伐をすれば良いかな。ブレイブも、カラクリ達との連携を試したいって言ってたしね。」


『御意にございます。』


カムイは一礼すると天井裏に戻って行った。


(忍者ごっこ楽しそうだな。天井裏を造って正解だったな。)



さらに別の日、コウスケが精霊の間で新しく設置した精霊樹から樹液をもらっていると、カオスなオブジェが激しく発光し始めた。


(霊体の侵入者か!?)


精霊樹のペンダントから勢い良く飛び出したスピネルは、大声をあげた。


『みんなぁぁぁッ!侵入者が現れたわよッ!コウスケの信頼を取り戻すチャンスよッ!絶対逃さないわよぉぉぉッ!とっ捕まえて、オブジェに放り込んでやるんだからッ!』


スピネルの呼び声に精霊達が呼応していく。


『『『『おおぉぉぉッ!』』』』


(信頼を取り戻すって何のこと…?)



さらに別の日、キッチンで料理をしていると、ダミアン(球体)が胸に飛び込んできた。


<マスター。世界中の龍脈を全て支配圏に組み込む事に成功しました。独自システムへの変換率は約50%です。えっへん。>


(龍脈も順調だな。どこの龍脈の管理者も環境破壊お構いなしで源泉を独占している害虫だったし、人間以外にもどんだけキチガイがいるんだよ、この世界は…。)


「ダミアン。ありがとう。引き続き、お願いね。」


ダミアンを撫でていると、ヒスイ(木龍)も胸に飛び込んできた。


《世界の調律も順調です。最近は、コントロールも上手になって、環境に優しい行動をしている動植物に優先的にエネルギーを配分するようにしています。》


(海の復活も順調だし、海の幸の安定供給も目前かもしれないな。)


「ヒスイもありがとう。今晩はヒスイの好きなワカメご飯を作ったから、楽しみにしておいてね。」


ダミアンに加えてヒスイも撫でていると、ダミアンとヒスイが何かを察知した。


<チィッ!マスターとの大切なひとときをッ!…独自システム化していないコロラド大陸の龍脈で何者かが悪足掻きしているようですね。>


《…まったくですね。大切な時間を邪魔したお礼をしないといけませんね。どう料理してあげましょうか。》


<《フフフッ…。少しだけ、失礼しますね。》>


ダミアンとヒスイは、静かに微笑みながらコウスケに挨拶すると、調律部屋に戻っていった。


(…最近、このパターン多いな。)

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