第159話 同情

『グホ…ッ!た、確かに躱した筈なのにッ!?み、見えない斬撃ッ!?い、いったい、何が起こっているのだ…。』


赤色のからくり武者は、ゆっくりと立ち上がり胴につけられた傷を擦りながら驚嘆の声を漏らした。


『驚いている暇は無いゾッ!周りを見てみロッ!』


朱いオーラを纏った周囲剣が、赤色のからくり武者を包囲していた。


更に、ブレイブの姿が完全に視界から外れており、そのことが赤色のからくり武者を動揺させる。


『い、いったい、何手先まで戦況を読んでいるのだ?』


質問の甲斐なく周囲剣が次々に、赤色のからくり武者を襲う。


…武技―空飛―…

…精霊術―エアロウォーク―…


赤色のからくり武者は、再び空を縦横無尽に駆け回り、周囲剣を次々に回避するが、周囲剣のスピードが上がっていることと、ブレイブの姿を見つけられないことが合わさり、回避する事しか出来ずにいた。


しばらく回避を続けると、しだいに息切れするようになってきたと感じてきた時に、突然背後から衝撃を受けた。


衝撃を受けた瞬間、後ろを振り返ると相手の蹴りが背中に命中しているのが見えた。


…武技―剛脚……


赤色のからくり武者は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。


『フム。強いのだが、武技と精霊術を併用できる強みを活かしきれていないナ。ただ単に同系統の技を組み合わせるだけだト、確かに強力になるが動きが単調になりすぎて機械と戦っているのと何も変わらナイ。単調になると先読みが出来るたメ、いくら早かったり強かったりしても簡単に対処されてしまうゾ。今度ハ、精霊術でスピードを上げツツ、コンボ系の武技を複雑に組み合わせテ、選択肢を広げながら戦況を見極めて最適解を出して戦ってみロッ!』


ブレイブは、鬼気を更に練り上げて、カウンター用の構えをとった。


後ろで見ていたアーチャーとランサーは、赤色のからくり武者に心からの同情の念を送っていた。


『………。(赤色のからくり武者ッ!頑張れぇぇぇぇぇぇぇぇッ!そこで心が折れると、こっちにもとばちりが来るんすよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!ここで君が無様に逃走なんてすると、この後の旦那様の機嫌が最悪になるんすよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!まぁ、排除命令が残っているみたいッスから、逃げたくても逃げられずにただサンドバックになる予感がするんすけどね…。…だから、赤色のからくり武者、頑張れぇぇぇぇッ!)』


『………。(ブレイブ様のあの行動は、素でやっているのだろうか?あれは単純に、相手の戦意を喪失させるための行動で、相手が強さに自信を持っていればいるほど効果がある。訓練でいつもされている私やアーチャー様でさえ、何回に一度は心が折れかけてしまうのだぞ…。だから、赤色のからくり武者よ、頼むからどうか心が折れないでくれッ!)』


そして、もう”2人”、赤色のからくり武者に同情の念を送っている者がいた。


“………。(赤色のからくり武者よッ!お主の気持ち痛いほど分かるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!我輩も大罪武器にも関わらず、『ポキッ』とやってしまったことが何度もあるからなぁぁぁぁぁッ!あぁ、思い出すだけで、あのときの記憶がぁぁぁぁぁッ!)”


『…………。(俺の排除命令は消えてて良かった~。アカには“お前は待機命令が残ってて、身動きできなくて大変だな~。”なんてイジられたけど、今は心の底からお前に同情するよ。なんだよッ!あのオーガッ!規格外すぎるだろッ!普通、同系統の武技と精霊術を併用されたら、予測できても対処なんて不可能だろッ!しかも、”本気で”こちらの最大の力を引き出してから、戦いを楽しもうとしてやがるッ!お、おいッ!まだやる気か!?さっきのがアカの最大の力だから、これ以上搾り出させないでくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。搾り滓になっちまうだろうがぁぁぁぁぁッ!)』

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