第154話 閑話 ジン3

『出せぇぇぇぇッ!出せぇぇぇぇッ!な、なんだよッ!憑依していた意識を捕まえるなんて反則だろッ!正々堂々、勝負しやがれッ!』


…考えろ、考えろ、考えろ…


…どこかに必ず出口があるはず…


子どもの隣に居た男が近づいてきて、注意深く観察してくる。


…ムカつく表情しやがってぇッ!…


『なるほどのう。思念体を闇魔法で顕在化することで捕獲を可能にしたか。そして、魔力パターンを解析して吸い込む術式か…。フハハッ!紅ゴブやるのうッ!』


…思念体を闇魔法で顕在化!?…


…思念体の魔法パターンを解析!?…


…なにを言ってるんだ!?…


『オイラの子分だから、あたりめぇよッ!』


『へへ。若旦那の発想を応用したまででやんすよ。』


…芋王とゴブリンが調子のるんじゃねぇよ…


…うん?この男は、もしかして、ユビタスが言ってたクロンとかいう聖剣もどきか?…


…ユビタスの話だと、挑発するとすぐに熱くなる熱血ヤローって話だったな…


『はは~ん。おめぇがあの有名な”忘れられた聖剣”かぁ。“神殺し”とも呼ばれてるよなッ!聖剣の癖に“神殺し”なんてウケるぜッ!ユビタスから聞いたぜぇ、腰抜け勇者に肩入れして自滅した糞聖剣らしいじゃねぇかッ!あと、知ってるか?てめぇがジュゼ王国に封印されていた時の封印術式は、その腰抜け勇者が“魔王封印”のために考えたものらしいぜッ!しかも、その術式は隷属魔法にも応用されて多くの精霊やヒトに苦痛を与え続けてるっていうから傑作だよなッ!なにが“慈愛の勇者”だッ!ただの“隷属魔法の基礎をつくったクズ中のクズ”だぜッ!アハハッ!さらに傑作なのは、ユビタスが裏切った時に心が折れて、ションベン漏らして逃げたってことだなッ!アハハッ!なんで、そんなクズの肩入れしちゃうのかな~?今もそんな不気味なガキの肩入れなんかしやがってさッ!ソイツもいずれ、ションベン漏らして逃走するぜッ!おかぁあちゃ~んな~んつってなッ!』


男は腕組みをしながら、嬉しそうにこちらを覗き込んでくる。


『フハハッ!流石、ゴミの盟友ッ!言うことが違うのうッ!フハハッ!』


…全然、誘いにのってこねぇじゃねぇか…


その後も挑発を続けたが、同じような返答が返ってくるだけだった。


そんなやり取りを続けていると、異変に気づいた精霊達が続々と集まって来た。


『『『なに?この雨雲みたいなの?』』』


『『『ここにはゴミしか入れちゃダメなんだよッ!』』』


…俺っちはゴミかよ…


男が大声で精霊達に話し始めた。。


『精霊たちよッ!紹介しようッ!コイツは、例のゴミと一緒に侵入してきたゴミの盟友じゃッ!ちょっと話をしたが、ゴミの盟友にふさわしい汚れ具合じゃぞッ!』


!!!!!!


…な 、なんだ!?このプレッシャーは?…


表情は穏やかに見えるが精霊達から、異様なプレッシャーが放たれる。


そして、精霊達から口々に恐ろしい言葉を浴びせられる。


『やだなぁ~♪最初に言ってよッ!ゴミの友達なら盛大に歓迎してあげないとッ!あのゴミを簡単に楽にしたから、ちょっと後悔してたんだよね~♪』


『汚物は洗濯しないといけないのッ!』


『あらあら、ゴミのお友達だったんですの?あんな凝縮物とお友達になるなんて、よっぽど馬が合ったんですわね。ゴミとどんなお遊びをしたか、私たちにも教えてくださいませんか?フフ…。』


『おいッ!おめぇは、いつからあのゴミとつるんでるんだ?裏切りのときか?クロンを売り渡したときか?精霊達を売り渡したときか?おかしな研究のために沢山のヒト達を拉致したときか?南方の民を虐殺したときか?…返答によっては地獄よりもキツイ目にあわせてやらねばいかんな。さぁ、答えろッ!ゴミの盟友ッ!』


『その憑依術…。もしかして、おかしな研究で開発したものなんじゃないの?ってことは、少なくとも研究所時代にはゴミと一緒だったってことね。』


『あの研究は精霊もたくさん犠牲になった…。ギルティ決定…。』


『思念体ってことは、闇魔法で痛めつけるのが一番効果的よね。ってことは、私の出番じゃない?』


『スピネルはズルいわ。ゴミにとどめを刺したんだから、他の精霊に譲るべきよ。ちなみに、私は思念体にも干渉できるわよッ!』


『ボク、呪いが得意だよッ!』


『ワシの幻覚で悪夢をみせてやろうッ!』


『『『『『俺(私)もッ!』』』』』


…お、俺っちは一体どうなって…い…く…


…うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…

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