第153話 閑話 ジン2
「”ブラック・サンダー・クロニクル・ローリング・サンダー・プラス・ダブル・サンダー・エクスプレス・コンドロイチン・サステナブル・うまむすめ”、「命令」だ。あのオブジェの中にパラスを転移させろ。」
…ぷぷ…名前を間違いやがった…
『ブッブッ~。名前を間違っただす~。ちゃんと言うだす~。』
「『………。』」
…無視すんなよ、しらけるじゃねぇか…
「”ブラック・サンダー・クロニクル・ローリング・サンダー・プラス・ダブル・サンダー・ダッシュ・エクスプレス・コンドロイチン・サステナブル・うまむすめ”、「命令」だ。あのオブジェの中にパラスを転移させろ。」
…ばかめッ!“パラス”なんてもんはいねぇから、そもそも命令自体無効なんだよッ!…
『嫌だすぅッ!』
…よしッ!…
子どもは、少し考える素振りを見せると別の方法を模索する提案をする。
「あのオブジェを使えないのは残念だけど、別の方法を考えようか?」
…よしッ!上手く別の方法に誘導できたぞッ!…
…うん?何かが近づいてくる…
シュタッ!
小猿が怒った表情で、子どもの肩の上に飛び乗ると騒ぎだした。
『コウスケッ!騙されるなッ!ソイツは、“パラス”って偽名のヤツに操られてるぜッ!だから「マリオネット」の効果が完全に効いてねぇんだッ!そして、さっきの副音声の犯人はコイツだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!オイラに“芋王”なんて、おかしな名前つけやがってぇぇぇッ!』
…バレたかぁ…
…まぁ、収穫はあったから良しとするか…
…うん?自由に喋れるぞ…
…このタイミングで自我が崩壊したかな…
…まぁいいか…
小猿の頭上をグルグル旋回し、タネ明かしをする。
『バレたか~。あぁ、このモスキートを殺しても俺っちを殺すことはできないから、そこんとこよろしくッ!それでさぁ、相談なんだけど…。』
子どもが話を遮るように言葉を発する。
「止まれ。」
子どもが言葉を発するとテレポートモスキートの動きが止まった。
…あちらも支配のルールが分かってきたか…
…やっぱり、ただの子どもじゃねぇな…
…ここは、テレポートモスキートを破棄して、すぐにでも「憑依」を解いて撤退した方が良いな…
『…チィッ!余計な会話はしないタイプかよッ!不気味なガキだぜッ!これ以上、情報は取れないか…。おいガキッ!せいぜいお山の大将でいろやッ!そのうち、俺っちがぶっ殺してやるからなッ!じゃあなッ!』
「憑依」を解こうした時に奥から声が聞こえた。
『…おいおい、もうちょっとゆっくりしていけよ…』
羽のはえた赤いゴブリンが壁に寄りかかって、格好いいポーズを決めて立っていた。
小猿は、赤いゴブリンの頭の上に飛び乗り、仁王立ちでこちらを指差してきた。
『おめぇッ!ひとんちに土足で上がり込んで、なんの落とし前もしねぇで帰るつもりかよッ!そんなことは、御天道様が許してもこのモンタ一味が許しちゃおかねぇぜッ!』
赤いゴブリンが鬱陶しいガヤを入れてくる。
『そうだッ!そうだッ!』
…芋王とゴブリンが…
『は~はっは~ッ!小動物とゴブリンが何が出来るって言うのさッ!そもそも、俺っちが何処にいるのか知ってんのか?ここから何百kmも離れた場所にいるんだぞッ!…もういいッ!お前らみたいな頭のイカれた連中と話してると頭がおかしくなるッ!じゃあなッ!ば~かッ!』
…じゃあな、芋王ッ!…
『待ちなッ!若旦那に支配権を完全に譲っちまって、本当にいいのかい?そのテレポートモスキートは、おめぇさんの居場所をわかってるんじゃねぇのかい?テレポートモスキートが確保された時点でおめぇは後手に回ったんじゃねぇのかい?』
…気付かれたか…
…上手く乗り切ったと思ったのに…
…まぁいい、居場所が分かってもすぐに大量に軍は送って来れねぇ筈だ…
…少人数であれば、実験体を何体か使えば撃退できる…
『グッ!…チィッ!拠点は放棄するッ!それでイーブンだッ!またなッ!クソぉッ!』
…チィッ!ユビタスの遺産を放棄しねぇといけねぇなんて、くそぉぉぉぉッ!…
「憑依」を解き、完全な思念体となり、本体に戻ろうと出口を目指して意識を集中した時、近くにあった鳥居が神々しく輝き始めたかと思うと、掃除機に吸いとられるように引き寄せられた。
…うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!…
吸い寄せられ鳥居をくぐった瞬間、ガラスの中に閉じ込められていた。
…こ、これは!?ユビタスが閉じ込められた場所!?…
…ま、まさか思念体の俺っちも閉じ込められた!?…
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