第152話 閑話 ジン

…あのユビタスが殺られた!?…


精霊王ユビタスの誘いで、ランクエラーというダンジョンに潜入したが、状況が進むにつれてドンドン悪化していき、ついにユビタスが怪しげな装置の中で消滅した。


…や、やっぱり、ここはおかしい…


…ダンジョンコア探索に目的を切り替えたが、一刻も早く撤退しなくては…


…幸い「音囮」スキルで流した副音声にも気づかれていないみたいだし、今が退き時だな…


…しかも、考え方によっては、よかったのかもしれない。ユビタスが死んだ今、研究所などのヤツの財産は全部俺っちのものにできるから…


…そうと決まれば、早速帰るとするか…


そう考えていると、脳内にアナウンスが流れた。


≪ユニークスキル「マリオネット」を行使されました。≫


≪現在「憑依」している”テレポートモスキート”の肉体的支配権が奪われました。≫


…い、いつの間に!?…


…クゥッ!操作系のユニークスキル持ちがいやがるのかッ!…


…でも、どうやって操作条件をクリアしたんだ?…


…くそッ!…考えても仕方ない。こっちは失うものが無いんだし、まずは気楽に操られたフリしておちょくってみるか…


支配を奪われて命令されるがままに姿を現すと、例の子どもに質問を投げかけられた。


「知性はあるの?」


…よし…肉体の支配権は取られたが、精神の支配は問題ない…半精霊の身体が幸いしたか…ここは、嘘の情報でかき乱しておくとするか…


『もっちろん、あるべやッ!わは魔王“パラス”様の眷属の天才テレポートモスキート“ブラック・サンダー・クロニクル・ローリング・サンダー・プラス・ダブル・サンダー”だすぅッ!わは、文字通り、命をかけて“パラス”様にダンジョンコアを届けるために精霊王様と協力して、このダンジョンに乗り込んだんだすぅッ!“パラス”様と精霊王は、とっても仲良しなんだすぅッ!』


…偽名を使うのは成功したが、テレポートモスキートの自我を制御しきれず精霊王と協力関係であることを言っちまった…


子どもは表情一つ変えることなく、質問を続ける。


「それで、ダンジョンコアは見つかったの?」


…テレポートモスキートの感知能力で近くに気配は感じたんだけど、見つけられなかったんだよなぁ…


…うん?でも、子どもの隣にいる男を中心にダンジョンコアの臭いが…うん?聖剣の臭いも…


『見つからなかっただすぅッ!このダンジョンおかしいだすぅッ!“スペアコア”なんてモノはあるのに、肝心のダンジョンコアは無いだすぅッ!…うん?…おめの隣にいるイケメンからダンジョンコアの臭いがすっどッ!まさか、おめがダンジョンコアけ?うん?聖剣の臭いもすっどッ!おめ、一体なにもんだ?おいぃッ!』


…ちょっッ!勝手に喋るんじゃねぇッ!蚊がッ!…


『フハハ。面白いヤツじゃ。のう、サンダー。あのオブジェの中に“パラス”とやらを転移させることは可能かのう?』


…できるけどしねぇよ…


『楽勝で出来るだすぅッ!あと、サンダーじゃないだすぅッ!”ブラック・サンダー・クロニクル・ローリング・サンダー・プラス・ダブル・サンダー・ダッシュ・エクスプレス・コンドロイチン・サステナブル・うまむすめ”だすぅッ!ちゃんと名前を呼ばないと言うこときかないだすぅッ!』


…”楽勝でできる”なんて言うんじゃねぇよッ!…


『フハハ。あのゴミの盟友とあれば、あれを使うべきじゃろう。あのオブジェは、あのゴミの蛮行を後世に残すための大切なものじゃ。本来、トラップになど使えないが、あのゴミの盟友となれば別じゃ。皆も納得してくれるじゃろう。コウスケッ!頼むぞッ!』


…やっぱり、ユビタスの仲間って言っちゃいけなかったんだなぁ…


…コイツらの殺意半端じゃねぇ…

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