第151話 閑話 元精霊王7

…チィッ!キズを再生して、今度こそ勝負をつけてやるッ!…


『くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!首を斬ったくらいでいい気になるなァッ!普通に斬っても僕を倒すことは…出…来…な…い…?あれ?…首…が…元…に…戻…ら…な…い…?』


…あれ?…

…再生できない!?なんで!?…


子どもは、左手中指の指輪に右手を添えて、魔力を込め始めた。


…あ、あれは、あの空間を創り出したときのマジックアイテム!?…


周囲の雰囲気が変わり、朱い柱でできた簡易な門のような建造物と桜の大樹が現れた。


『そ…の…ヘンテコ…空間は…壊した…はず…?』


…ま、まずいッ!今の首の切られた状態で、”ペイン・ダッシャー”は使えないッ!…


桜の大樹から花びらが舞始めた。


桜の花びらは、再び、ゆっくりと周囲を覆い始める。


…た、魂が削られるぅぅぅぅぅぅぅッ!…


『う…わぁぁ…ぁぁ…ぁぁぁッ!嫌だ…ぁぁぁぁ…ぁぁッ!』


桜の花びらが触れるたびに、魂ごと身体が溶かされていく中、スピネルとクロンの声が聞こえた。


『コウスケッ!まだ油断するんじゃないわよッ!この不燃ゴミは処理が大変なんだからッ!残滓だけでも生き延びると、“覚えてろぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!いつか必ず復讐してやるぅぅぅぅッ!”なんて叫んで、逃げちゃうんだからッ!』


『全くもって、そのとおりじゃッ!コイツは、リサイクルもリユースもできない、害悪を撒き散らすだけの危険廃棄燃料じゃ。最後の最後まで気を抜くのではないぞッ!』


…こ、この僕を跡形もなく消滅するつもりかッ!?…


…仕方ない…今回は負けを認めてあげるよ…


…消滅したフリをして残滓をいくつか飛ばせば、1つくらいは無事でいてくれるだろう…


残滓を飛ばす準備をしていると、子どもがこちらに向けて漆黒の死神鎌を横薙ぎに一閃した。


…フフ…いいよ…好きに攻撃するといいよ…


…その分、仕返しするときの楽しみが増えるから…


「闇の力の奔流よ、敵を飲み込め―“ダークメイルシュトローム”―」


溶かされている身体を中心に円形状に闇のオーラが渦巻き始めると、桜の花びらを巻き込みながら、生命力を吸収していく。


…こ、この闇の力は!?生命力があり得ないスピードで吸われている!?…


…うん!?身体が少しずつ重くなっていく…


…ッ!!!こ、これがクロンの言っていた精霊殺しの毒!?…


…首が再生できなかったのもこのせいかぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!…


精霊殺しの毒に侵され斬口は再生できず、桜の花びらにミキサーのように切り刻まれ溶かされ、闇のオーラの渦に生命力を吸収されていく。


『うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』


更に、子どもが左手の”薬指”の指輪に右手を添えると、今の状態そのままで硝子の球体に閉じ込められた。


…か、完全に閉じ込められた…


…これじゃ、どうやっても残滓や分体を飛ばすことができない…


『コウスケッ!ナイスアイディアよッ!透明だから、苦しんでいる姿がみんなによく見えるところが最高ッ!』


…そんなに僕が苦しんでいるところが見たいのかッ!アバズレがッ!…


『フハハ。さらに水槽を二重三重にしてはどうじゃ?下から火で炙るのも良いかもしれんのう。』


…な、なに恐ろしいことを言ってやがる?…


恐ろしい会話に他の精霊達も加わる。


『おっいいね♪風の結界も張って、さらにぜ~ったい逃げられないようにするのも良いね♪』


…こ、これ以上強固にするのはやめろッ!…


『雷の鎖を張り巡らすのもいいでごわすな。』


…イカヅチィィィッ!…


『火で炙るのは大賛成だけど、水でコーティングしてからの方がいいわ。』


…てめぇ、あんだけ痛めつけたのにピンピンしやがってぇぇぇぇぇッ!覚えてろよぉぉぉぉぉぉぉッ!…


『フフ…。ウインディの水でレンズを造って、私の光を反射させましょう…。』


…リリス…


『氷漬けにするのも良い…。』


…僕は嫌だぁぁぁぁッ!…


『ガラスを更に強化できるゾイッ!装飾を施すのも良いなッ!』


…ノォォォォムッ!これ以上脱出を難しくするなぁぁぁぁッ!ジンが助けに来れないだろぉぉぉぉッ!…


『ぜひ、アイツの悪名を後世に残すためにガラスに文字を彫りましょうッ!タイトルは、“天下の大裏切り者”でどう?』


…何を言ってるんだ!?精霊王に逆らった裏切り者はお前らだろがッ!…


『い~や、シンプルに“嫌悪の塊”なんてどうかな?』


…精霊王が嫌悪されるわけないだろがぁぁぁぁッ!…


『そんな、生易しいタイトルではダメよッ!“足の臭いを凝縮したような身も心も汚い精霊もどき”くらい書かないとダメだわッ!』


…よ、精霊もどきだとぉぉぉぉぉぉぉッ!…


『フハハ。そんな立派な名前をつけなくとも良いのじゃッ!一言“ゴミ”で良いッ!』


…精霊王に向かって、ゴミだとぉぉぉぉぉぉぉぉッ!…


“「食王様が華麗に美しく聡明に消滅させた何かの物体」が良いに決まっているッ!”


…お前だけ、なんなんだよぉぉぉぉぉッ!…


…グギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!…

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